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第27話 急病


 アンの故郷であるエルフの里に行きたい。アンがエルフだというのも初耳だが彼女は王都で生まれ育ったと思っていた。色々気になることはあったが詳しいことは一旦落ち着いてからということになった。




「柔らかい寝床は寝やすいがこうやって焚火を眺めるのもいいもんだ」


「そうですね。なんとなく落ち着きます」



 俺とアンは土魔法で作った台に座ってパチパチと音を鳴らす焚火を囲んでいる。フィーは起きていようとしたが船をこぎ出したので寝かせた。体は大人でもまだ12歳だ。眠くなるのは当然だろう。



「私の髪と耳で気づいていると思いますが私はハーフエルフです」


「ハーフエルフ?」



 エルフと人族かなにかのハーフということか。確かに彼女の耳は普段髪の毛で隠れているが少し尖っている。髪の色も綺麗なエメラルドグリーンだが今まで彼女と同じ色の髪を見たことはなかった。俺のセリフに疑問符が入っていたからかアンがジト目でこちらを見てくる。



「キョウヤは偶に常識が抜けていますね。緑の髪と尖った耳はエルフの証です。尤も私はハーフなのでどちらも中途半端ですが」


「そうか? 綺麗な色だとおもうけどな。特に日の下にいるときは」


「……ありがとうございます。話を戻しますね。エルフは通常森の外に出ない排他的な種族です。私はそんな中で産まれたエルフの母と人の父を持つハーフです」


「フィーと似たような状況だったのか。だからあいつを助けたいって言ったのな」


「はい。私は里の人たちに自分を認めてもらおうなんて考えたこともなかったです。優しい両親がいればそれでいいと思っていました」



 アンは婆さんと暮らしていた。親がどこかに行っているという話も聞かなかったということはもう亡くなっているのだろう。魔物も戦争もある世界だから珍しい話はないのかもしれないが。



「あなたのことです。もう察しているでしょうが私の両親は魔物との戦いで亡くなっています。その後師匠に引き取って頂きました。それ以降はずっと王都暮らしです。二度と故郷に戻るつもりなんてなかったんですが」


「フィーを見て気が変わったか」


「旅に出るときに師匠に言われていたことでもあるんです。それにあそこには両親のお墓もありますから」


「なら大きく成長したお前を見せて両親を驚かせてやれよ」



 確かに12歳のフィーが村の仲間になるためにあれだけ頑張ったんだ。それを見れば影響されるのは必然だろう。

 両親か。今まであまり考えないようにしていたが今頃俺の親はどうしているだろうか。なんせ俺の親だ。変人なのは違いないので案外気にしていないかもしれない。俺を心配して憔悴する様子よりは想像しやすいしな。



「はい。キョウヤのことも紹介したいですし」


「……ならちょっとは格好が付くようにワイヴァーンの鎧を完成させてから行くか」



 俺たちが狩ったワイヴァーンの鱗は全て回収してある。強力な鎧の材料になるらしい。フィーは素早く動く必要があるし、アンも魔力操作の補助効果がある防具のほうがいいということで俺が使わせてもらうことになった。



「さてそろそろ寝るか。眠気で少し体が重い」


「そうですね。おやすみなさい」



 焚火が消えないように枯れ枝を追加して俺たちは眠りについた。




「キョウヤ起きて」


「もう朝食は出来てますよ」


「……ああ」



 翌朝体に感じる重さはより酷いものになっていた。頭がジンジンと痛む。風邪の症状に近いが癒しの風は効くだろうか。試してみよう。そう思いスキルを使ってみるがあまり改善がみられない。気持ち楽になったかなという程度だ。クソ病気には効かないのか? もっとしっかり調べておくんだった。



「大丈夫かキョウヤ?」


「風邪を引いたようだ。出来れば今日は早めにしっかりした寝床で休みたい」


「それなら数時間ほど歩くと小さな村があるはずです。そこまで行きましょう」


 

 少々辛いものはあるが動けないほどではない。ここは今頑張ってでも村に行ってしっかり休んだほうがいいだろう。幸いここら辺はそれほど強力な魔物も出ないようだしな。



「荷物はフィーが持つ」


「すまん。迷惑をかける」


「ん。気にしない」




 俺たちは朝食を食べると村へ向けて歩き出した。歩くにつれて徐々に体調は悪化していく。癒しの風を合間合間に使うが体調は良くなるどころか寧ろ悪くなっている気がする。そしてようやく村にたどり着いたとき俺は力尽きてその場に倒れた。



「キョウヤ! 大丈夫か!?」


「直ぐに医者を呼んでくるのでフィーはキョウヤを見ていてください!」


「分かった!」



 2人のその言葉を最後に俺は意識を失った。





 

 朝から調子が悪そうだったキョウヤが倒れてしまった。彼が平気だと言うからここまで来てしまいましたがしっかりと休んだほうがよかったかもしれません。急いで村の中に入り近くの家の扉を叩く。



「すみません。旅の仲間が病で倒れてしまったのですがお医者様はいますか!?」


「それならストール様ね。村の奥の方に家があるわ。薬草が畑に植えられてるのが目印よ」


「ありがとうございます」



 急いで指さされた方に走ると思ったよりすぐ近くにそれらしき家がありほっと息を吐く。



「すみません! ストールさんはいらっしゃいますか!?」


「はいはい。なんでしょうか」



 ドアを開けて出てきたのは柔和そうな笑みを浮かべた年配のご婦人でした。何故かいつもしかめっ面を浮かべていた師匠を思いだしてしまいましたが今はそれどころではありません。



「旅の仲間が急に倒れてしまいまして。今村の入り口で横になってます。見て頂けませんか」


「それは大変! 直ぐに行きましょう」



 ストールさんはそう言うとそのまま村の入り口に向けて駆け出してしまいました。老人とは思えないほど速くついていくのがやっとです。



「ちょっと見せて頂戴」



 私がようやくキョウヤのもとに戻った時は既にストールさんは診察を始めていました。その横ではフィーが難しそうな顔をしています。こんな小さな村にいるお医者さんなので正直少し心配でしたがその行動には迷いがありません。



「どんな病気かわかりますか?」


「何か変なものを食べたりは?」


「いえ。私たちと同じものしか食べてないはずです。ですよねフィー?」



 しかしフィーは妙な顔をしながらクンクンと臭いを嗅ぐばかりで質問は聞いていないようでした。こんな時に一体何に気を取られているんですか!



「だとしたらおそらく魔力病だね」


「魔力病?」


 

 初めて聞く病名です。珍しい病気だとしたらそれを知っているストールさんがいてくれたのは幸運でした。



「ええ。魔力病は――」


「お前なんで魔物と同じ臭いするの?」



 フィーの言葉に思わずストールさんのほうを見る。彼女から魔物の臭いが? 勘違い……いえフィーは獣人です。この距離で臭いを嗅ぎ間違うとは思えません。ですがストールさんは人族にしか見えないですし。ここまで考えて昔師匠から聞いた話を思い出す。人族と似た外見をした人族と似て非なる存在。それは確か



「ストールさんは……魔族なんですか?」



 魔王の眷属たる魔族という名前でした。

「面白い!」



「続きが気になる!」



そう思っていただけたら



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