第26話 家族との惜別
目が覚めると既に宴は終わっており地べたの至る所で村人たちが寝転んでいた。なんで俺まで地面に寝ているのか数秒考えてグレンに殴られて気絶したことを思い出した。そう言えばその前にあいつとグラディオで戦ったな。ステータスオープンと唱えてウインドウを呼び出す。
四宮京也 男 16歳
ジョブ:なし
スキル:ラーニング レベル4
:ライト レベル2
:癒しの風 レベル3
:瞬発 レベル4
:聖剣召喚クラウソラス レベル1
:剛力 レベル6
:剣術 レベル6
:水魔法 レベル6
:炎魔法 レベル5
:風魔法 レベル5
:精気吸収 レベル3
:素手 レベル7
:身体操作 レベル7
:土魔法 レベル2
:纏魔導 レベル2
:鑑定魔法 レベル2
王都を出る前と比べていくつかレベルが上昇している。狙い通り素手はコピー出来ている。身体操作というスキルも追加されているがグレンが尻尾をあれだけ器用に動かせたのはこのスキルのお陰か? そんなことを考えていると本人が現れた。
「がっはっはっは! 昨日はすまなかったな。娘はやらんと一度言ってみたかったんだ」
「一緒に手も出してこなかったら許してやってたよ」
癒しの風を使ってまだ少し痛む頭を治す。このスキルにはかなり世話になっているから飯田には感謝しないとな。
「お前回復魔法まで使えるのか」
「まあな。それより俺たちはずっとこの村にいるつもりはない。近日中に出る予定だ」
「そうか。ならフィーのことはよろしく頼む」
思わずグレンの顔を見返してしまう。確かにフィーは俺と結婚するとか言っているが、いいのか本当に。自分で言うのもなんだがどこの馬の骨ともしれん男だぞ俺は。
「フィーはもう成人だからな。あいつの人生はあいつが決めることだ。それにお前が息子になるのも中々面白い未来だ」
「……あんたをお義父さんって呼ぶのは笑えないな」
アンはどうだろうか。まあ元々は彼女がフィーを助けたいと言ったんだ。それほど邪険にもしないか。そう言えば、結局フィーに協力した理由ってなんなんだろうな。丁度そんなことを考えていたら、グレンの屋敷からアンが出てきた。
「おはようございますキョウヤ、グレンさん」
「おう! 嬢ちゃん二日酔いにはなってないのか」
「はい。別に調子は悪くありません」
村に来た当日もそうだったが、酔いやすいわりに二日酔いにはならんのな。一番酒を楽しめる体質かもしれない。俺に迷惑をかけるのはやめてほしいが。
「あーそのあれだ。フィーが俺たちについて来たいって言ったらどうだアン?」
「……いいのではないでしょうか。彼女がいたら旅も楽しそうです」
「そうだな。賑やかになりそうだ」
クソ、昨日のあれを思い出してアンの顔を直視できん。そのくせアンは声を聞く限りいつも通りだ。もしかして忘れてるのか? モヤモヤした気分を抱きながら頭を掻くと、ニヤニヤと笑っているグレンの顔が視界に入った。昨日のお返しでぶん殴ってやろうか。
「みんな、行ってくるね」
「おう! 達者でな!!」
「いつか戻ってこいよ!」
「キョウヤにアン! フィーをよろしくな!!」
見送りには大勢の村人が集まった。最初のフィーへの態度からは考えられない。本当に単純なやつらだ。そんなフィーと村人たちを、アンが羨ましそうに見ているのが気になった。
「フィー。お前への餞別だ持っていけ。俺が冒険者の時に使っていたクローだ。魔法の力はないがアダマンタイト製だからとにかく頑丈だぞ。そのままじゃ大きいから街に行ったら調整してもらえ」
「うん。ありがとうトトさま」
「いいか男を落としたいときはそいつの三つの袋を握れ。それぞれお袋、胃袋、金玉ぶ――」
「馬鹿なことを教えるな」
グレンをどついて続きを言わせないようにする。フィーなら本気にしかねない。グレンはがっはっはっはといつものように豪快に笑った。この村に滞在したのはたった数日だが、もっと前からこの笑い声を聞いていた気がする。そしてその思いはフィーの方が数百倍大きいだろう。
「本当にいいのか? 次戻ってこれるのはいつになるかわからないぞ」
「うん。村のみんなに認められたのは嬉しいけど、今はキョウヤと一緒にいたいから。キョウヤが村に残ってくれるなら私も残るけど」
「それは無理だな。旅は続けたい。次の目的地も決まっていないが」
グレンに教えてもらったゲッフェルト神聖帝国はかなり遠い。出来れば直接いくのではなく、遠回りになっても他の土地を見てから行きたいところだ。
「キョウヤ私行きたいところがあります」
「どこだ?」
アンはいつになく真剣そうな顔をしていた。今まで特に行きたい場所などを出さなかったのに珍しい。
「場所はこの村とゲッフェルトとの間です。そこにはゴース大森林と呼ばれる森があります。目的地は大森林に住まうエルフたちの里ヒカディ。……私の産まれ故郷です」
「面白い!」
「続きが気になる!」
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