第23話 切実な頼み
数か月でも冒険者をやっていると気配や音に敏感になる。誰かが近くに来ただけで勝手に目が覚めたりするのだ。丁度今のように。
「何か用か」
「キョウヤに頼みがある」
目を覚ますと昨日俺を案内してくれた獣人……たしかフィーだったか、が部屋の扉を開けたところだった。
「昨日はだんまりだったのにいきなりなんだ」
「昨日は喋らないようトトさまに言われてた。お前は客人に失礼を働くからって」
「そうか。それで頼みって?」
確かに礼儀正しいと言えるタイプではないことが今の会話だけでわかる。トトさまとはグレンのことだろう。フィーの猫耳と尻尾を見れば察しはつく。もっとも猫ではなくライオンなんだろうが。
「ワイヴァーンを狩りに行くと聞いた。フィーも連れていってほしい!!」
「あれは酒の席の話だ。そもそもなんでだ?」
「その……ワイヴァーンが食べたくて」
俺はじろりとフィーの顔を見た。疑わしい。確かにワイヴァーンの肉は美味いらしいがつい先日食べたという話だ。それになんで族長であるグレンではなく俺に頼むのか。何か別の理由がありそうだ。
「本当にそれだけか? ワイヴァーンの肉が食いたいならグレンに頼めばいいだろう」
「トトさまはお願いしても聞いてくれない。それに……とにかくフィーも一緒に連れていって!!」
言えない事情があるようだが……仮にも族長の娘をホイホイ危険な魔物との戦闘に連れて行くわけには行かない。万が一彼女が死んだら責任など取れないぞ。
「悪いが本当の理由を話さないならダメ――」
「ちょっと待ってください」
驚いて声の方を見るといつから聞いていたのかアンが起きあがっていた。まだ眠気が取れないのかあくびをしながら伸びをすると服の裾が上がり白い肌とヘソが顔を出す。俺はなんとなく顔を背けて再びフィーの方を向いた。
「お前頭痛くないのか?」
「いえ、少しぼぉっとしますが特に痛みは。それよりフィーさん。少し突っ込んだことを聞きますが先ほどの頼みはあなたの容姿が他の人と違うのと関係があるんですか?」
「……うん。フィーがみんなと見た目が違うからみんな仲間外れにする」
「アン説明してくれ」
「獣人は血の濃さと強さを重要視する風潮があります。血が濃いほど獣よりの容姿になるので私たちが普段接するような人たちはあまり持っていない考えですが」
なるほどな。確かにこの村の獣人たちは全員獣が二足歩行になったような見た目をしている。それに対してフィーは殆ど人間だ。ただでさえ浮きそうなのにそこにそんな思想が入るなら仲間外れにもなるか。
「グレンは族長だろう? 何か周りの奴らに言ってくれないのか」
「トトさまには迷惑かけたくない。それにいくらトトさまが言ってもフィーが変わらないとダメ。だからフィーがワイヴァーンを倒せばみんな仲間に入れてくれるはず!」
拳を握りしめて力説するフィー。強さを重視するという獣人たちのもう一つの特徴か。まあ確かにワイヴァーンは強力な魔物だからそれを倒したとなれば見直すかもしれん。協力してやりたいと思わんでもないがなぁ……
「キョウヤ。私彼女を助けてあげたいです」
「本気か? なんでまた」
誰かに自分から関わっていくなんて珍しい。最近は人見知りも大分改善してきたと思うがそれでも違和感がある。
「その、悪いとは思うんですが理由はまだ言えません。でもお願いです。私を外に連れ出してくれたみたいに彼女のことも助けてもらえませんか」
「……別に俺はお前を助けたりはしてないぞ。お前が自分の意志で選んで勝手に助かったんだ」
しかしそれならばフィーも自分の意志で現状打開の一歩を踏んだことになる。アンがこれだけ言うのも珍しいし元々ワイヴァーンの肉には興味があった。困ったことに断る理由がない。
「フィーワイヴァーンの倒し方なら知ってる! きっと役に立つ!!」
「わかったよ。その代わりただ付いてくるんじゃ駄目だからな。しっかり役に立て。そしたら俺からも村の奴らにお前の活躍を喧伝してやる」
「ありがとう!!」
ガバッとフィーが勢いよく抱き着いてくる。アンと違い女性らしく大きく発達した胸部が俺の体に当たり柔らかく形を変えた。ここからでは確認できないがなんとなくアンに睨まれている気がしてフィーの体を引き離す。
「そもそもお前は戦えるのか? 獣人が重視するのって頭の良さじゃなくて肉体的な強さだろ」
少し集中して鑑定魔法を使う。
フィー・ランサム 女 12歳
ジョブ:武闘家
スキル:素手 レベル4
:■■■
現在鑑定はレベル2だ。スキルレベルが上がったお陰で一番上のスキルまで見れるようになった。素手レベル4か。結構高いな。12歳にしては中々……はぁ!?
「おいフィー。お前何歳だ?」
「12歳!! これからどんどん大きくなる!」
そう言って既に平均以上はありそうな胸を張るフィー。俺は思わずアンの方を見た。
アン・ジーニー 女 16歳
ジョブ:中級魔法師
スキル:火魔法 レベル4
:■■■
アン16歳、フィー12歳。驚異の格差がそこにあった。いやおかしいのはフィーの方なんだが。
「獣人は10歳くらいまで凄い速さで大きくなるんです。これは先祖である獣の影響と言われていて自然の中で外敵に囲まれて生きていくためには非常に合理的なんです。わかりましたか?」
「わかったから杖を放せよ」
ミシミシ言ってるぞ。まあ冗談は置いておいて素手が剣術に相当するならレベル4であれば最低限戦えるだろう。アンは火魔法がレベル2の時点で俺なんかよりよっぽど上手かったしな。
「取り敢えずグレンには許可を取るぞ。流石に娘を勝手に魔物との戦いに連れていけん。付いて行ってやるから自分で言え」
「……うん」
フィーは悩んでいたが俺たちも一緒に行くというところに勇気づけられたのか頷いた。そうと決まればすぐに行くか。聞くとグレンは今朝食を食べているとのこと。腹が満たされてるなら頼みも聞き入れやすくなるだろう。
「トトさま伝えることがある」
「なんだフィー、ってお前らも一緒か」
俺たちを見ると少し嫌そうな顔をするグレン。まあ客の前では喋るなと言っていた娘がその客と一緒に来たらそんな顔をするか。
「フィーこの村の仲間になりたい。だからキョウヤたちとワイヴァーンを倒してくる!」
許可、というより宣言だなこれは。それくらいの意気込みということだろう。普通の親なら許さないだろうが獣人の価値観は結構違うからな。
「それはお前が自分で考えて決めたことか?」
「うん。フィーの見た目は変えられないから。ならフィーが強いことみんなに認めてもらうしかないと思って」
「そうか。ならば何も言わん好きにしろ。ただし!! 当然だが俺は助けんし後ろから見守って危なくなったら割って入るなんてこともしない。死ぬ覚悟をしていけ」
あまりの迫力にフィーが後ずさる。そのまま尻もちをつきそうになるが俺にぶつかって踏みとどまる。
「確かに魔物と戦うなら死ぬ覚悟くらいは必要だな。だが娘が死ぬ覚悟はしなくてもいいぞ」
「デカい口を叩く。流石ヴェリテの弟子と孫だな」
そこまで喋って朝食を食べ終わったグレンは家の外に出て行こうとする。その背中に鑑定魔法を使う。昨日は使い忘れてたからな。
グレン・ランサム 男 60歳
ジョブ:格闘王
スキル:素手 レベル7
:■■■
スキルレベル7! 俺が見た中で最も高い。なんとしてもコピーしたいところだがいきなり襲いかかるわけにもいかん。どこの勇者だそいつは。
「なあ。もし俺がワイヴァーンを狩ってこれたら俺と一回戦ってくれないか?」
「身の程知らずな奴だ。だがヴェリテの弟子の実力は俺も知りたかったところだ。いいだろう」
これでワイヴァーンを狩らないといけない理由が1つ増えたな。さてそうと決まれば早速出発だ。
更新時間は12時と19時どちらがいいとかありますか?みなさんが読みやすい時間に投稿したいとおもっているのですが。
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