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幕間 勇者の凋落

本日14話と15話の間に幕間を追加していますのでまだの方はそちらからお読みください。



 レ-ティアの頼みで冒険者ギルドと共同のゴブリンキング討伐に参加してみれば驚いたことに四宮がそこにいた。おかしい今回の依頼はゴ-ルド以上からしか参加出来ないはず。まさかあれからたった数日でランクを上げたのか!?



「ギルバ-トから参加するように言われてな」



 ふんただのコネか。ギルドマスタ-から頼まれたなんて言ってるが実際は逆だろう。自分の実力を過信した四宮が孫のアンを通してヴェリテさんにお願いしたに決まってる。冒険者ギルドの依頼に2人ねじ込むくらいあの人には簡単なはずだ。

 

 そうか! アンと一緒にいるのもヴェリテさんの権力を利用するため! 四宮のやつどれだけアンを利用すれば気が済むんだ。けど今それを突き付けても口だけは回る奴だ。のらりくらりと逃げるだけだろう。もっと決定的な証拠を見つけないと。その為にも四宮から目を離さないようにしよう。俺はアンを助けるため人知れずそう決意した。





「ライトザッパ-!!」


 

 俺が聖剣を振ると光の刃が空を飛び、油断している四宮たちを襲おうとしていたゴブリンチャンピオンに当たった。



「大切断!」


「ライトニング!」



 それに続くように抜群のコンビネ-ションで智弘と恵の攻撃がチャンピオンを襲う。一瞬でゴブリンチャンピオンを倒すと俺はアンに声を掛けた。四宮のせいであんなに近くにまで魔物に迫られたんだ。魔法職の彼女からしたら非常に怖い状況だっただろう。



「俺たちが本当にピンチで助けを求めたならともかくさっきのはただの横取りだ。それと俺の呼び方は四宮さん、だろ」


「確かにあの時は負けたがあれは慣れない武器だったからだ。俺の本領は勇者の象徴である聖剣を使ってこそ発揮される。なんなら今試してもいいんだぞ」



 折角助けてやったというのに四宮はまったく感謝しようとしない。それどころがわざと負けてやった前回の決闘を持ち出してくる始末だ。こいつはきっと全力の俺に勝ったと思っているのだろう。勘違いもいいところだ。



「麻衣回復を頼む」



 見ると四宮はもちろんアンまで小さいが傷を負ってる。やはり四宮にこの依頼は無理だったんだ。その証拠に傷を癒す余裕もないじゃないか。小さな傷が後々大きな怪我を引き起こす可能性もあるのだから一回の戦闘ごとに傷を全て治すのは当然だ。特に仲間のことを想うのならば軽視するべきではない。



 もしかしたら四宮は自分の実力も考えずゴブリンキングと戦おうとするかもしれない。いくら四宮と言えどもクラスメイトだ。死にに行くのを黙って見ていられるほど俺は冷たくない。先に俺たちが進んでボスを倒してやろう。


 おそらくそんな俺の思いやりなど考えもしてないであろう四宮たちを置いて奥へと向かった。





「勇者様! 一旦お下がりください!!」


「俺たちはまだ戦える! お前たちが他のゴブリンを抑えろ!!」


「おい!! 無理やりにでも後方へ送れ! 死なれたら俺たちの首が飛ぶぞ!!!」



 クソ放せよこいつら! 俺は勇者だぞ! お前らが周りの雑魚を抑えれば俺があの親玉を倒してやるからさっさと俺を放せ! しかし騎士たちは複数人で俺を羽交い絞めにすると無理やり戦線から引き離していく。最後にチラリと四宮がゴブリンキングに魔法を放っているのが見えた。


 あいつ! さっき俺がゴブリンにやられたなんて嘘を叫んだのはあいつか!! ル-ルを無視して依頼に参加しただけじゃなく俺の足まで引っ張るのか! 折角俺がお前を想って先に進んでやったのに恩を仇で返しやがって!! 

 




「レ-ティア王女聞きましたぞ。勇者殿はどうやら魔力切れでゴブリンに殺されかけたらしいではないですか」


「私も耳にしましたな。なんでも一番大事なゴブリンキングとの戦闘時には既に戦線を離脱していたとか」


「その前はたかがシルバ-の冒険者に負けたそうですね。こんなことを言うのはあれですが……彼は本当に勇者として相応しいのですかな?」


「お忘れかもしれませんが勇者様はつい先日この世界に来たばかり。それ以前は戦いの経験すらないのですよ。それとも自分たちなら僅かな期間で魔王を倒せるとでも?」



 レ-ティアの言葉に先ほどまで喜色満面で長谷川の失敗をあげつらっていた貴族たちの顔が曇る。彼らはレ-ティアとは別の派閥に属する貴族だ。レ-ティアの権力の象徴たる勇者の失敗を責め立てることで勢力を盛り返そうとしているのだ。



「では私は用事があるのでこれで失礼します」



 王女に相応しい見事な所作で頭を下げるとレ-ティアはその場を去った。少々の失点で自分の地位は揺るがない。そう態度で表しているようだった。しかしその唇からは噛み締めすぎて血が滲んでいた。



「それが例の邪剣?」


「はい。周囲で死んだ者の魂を取り込みそれを使用者の力に変えます。魂喰(ソウルイ-タ-)という名前です」


「苦労して手に入れたというのに運搬中に魔物に襲われるなんて運が悪かったわ」



 レ-ティアの私室にてクロウと彼女は1振りの大剣を前にしていた。レ-ティアの用事とは回収された魂喰の確認である。元々は勇者たちのために用意していた武器だ。それが不幸な事故でゴブリンキングの手に渡ってしまった。

 ただでさえ以前長谷川が京也との決闘に負けたせいで立場が弱くなっているのに、魔物の手に強力な武器が渡る一因を作ったとなれば大きくその勢力は減退するだろう。それを避けるためにわざわざ第一騎士団を派遣したのだ。尤も魂喰はクロウに命令して秘密裏に回収できたものの長谷川がそこでまたやらかしたのだが。



「それにしても死体を操るなんて効果があるとはね」


「申し訳ございません。事前の調べではそこまでわからず」


「もういいわ。それよりも具体的にどんな風に操るのか調べておきなさい。特にどういった条件で敵と認識するのかを」



 流石に勇者に持たせるのは危険だが使い道はあるかもしれない。



「それと勇者たちは国外に行かせなさい。魔物の討伐でも武器集めでも理由はなんでもいいわ。またキョウヤと会ってトラブルを起こされないようにね」


「かしこまりました」


「キョウヤをあっさり外に出したのは間違いだったかしら? でも今さらリュウゴを切ることなんて出来ない。なんとかコントロ-ルしないと」



 クロウは頭を下げると布を巻いた魂喰を手に退室した。室内に1人になったレ-ティアは親指の爪を噛んで考え込んだ。一連の失敗で弱くなった自分の立場をどうすれば回復できるかを。長谷川は他者の話を聞かない日頃の態度と2度に渡る大きな失態で城内での評判を大きく落としている。当初は強力な手札だった勇者たちだが今のレ-ティアには捨てたくても捨てられないババに見えるようになっていた。





明日からは第二部を1日1話投稿します。これからも読んでいただけると幸いです。


「面白い!」



「続きが気になる!」



そう思っていただけたら



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