表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/45

第14話 決闘

 まさかこんなところで長谷川たちに会うとは。運が悪い。


「西田さっきの言葉はどういう意味だ?」


「そのままの意味だ。今俺とアンはパーティを組んでる。わかったらどいてくれ」



 俺に気づいたアンが小走りで寄ってきて背中に隠れた。そのままグイグイと俺の背中を押しながら小声で呟く。



「この長谷川とかって人全然人の話聞いてくれません。お知り合いならなんとかしてください」


「なんとかって言ってもな」



 そもそもなんでこいつはアンに話しかけてたんだ? 女が2人もいる状態でナンパとは思えんが。



「お前彼女が誰か知ってるのか? あの英雄ヴェリテ・ジーニーさんの孫のアン・ジーニーだぞ」


「だとしたらそれがどうした」


「な!?」



 あの婆さんが英雄ねぇ。魔導を覚えたことであり得ないほど強いというのは肌で感じていたががそこまでとは。


 俺の態度が予想外だったのか鼻白む長谷川。今のうちに誰かこいつを遠くに連れて行ってほしいんだが。飯田は何故かニコニコしているし大野は長谷川がアンに話しかけたせいか詰まらなそうな顔をしている。そして橋本は、



「なあ四宮! お前オーガを1人で倒したって本当かよ!!」


「1人じゃない。アンと2人でだ」


「たった2人で倒したのか!! オーガは強かったか! どんな武器を使ってた?」



 こいつ長谷川とは別路線でうざいな。オーガとの戦闘に興味津々なのか根ほり葉ほり聞いてくる。それとは対照的に長谷川がつまらなそうに吐き捨てた。



「ジョブを持っていない西田がまともな戦力になるはずがない。殆どアンが倒したんだろう」


「そんなことありません! キョウヤはあのオーガと鍔迫り合いをして勝ったんですよ!」


「オーガと!? ほんとか四宮!」


「それにキョウヤさんはあと少しでゴールドランクに上がるんですから」


 アンの話を聞いてますます嬉しそうな顔をする橋本。アンも擁護してくれるのありがたいが話を盛るな。そして背中から出ろ。あとミリムはなんでここにいるんだ。仕事しろ。



「そもそもお前らはなんでここにいるんだ」


「私たちはここのギルドマスターさんにお話があって。今はその人が来るのを待っていたんです。そしたら偶然以前お城で会ったことがあるジーニーさんがいたから話しかけちゃって」


「……何故アンがお前とパーティーを組んでいる」


「確かに不思議だな。以前俺たちが誘った時は断ったのに」


「少し前に師匠とお城に行ったときに偶然会って誘われたんです。勿論断りましたよ」



 俺にしか聞こえない音量でアンが経緯を説明した。しかし強力な魔導士が欲しいという考えはわからなくもないが本人が嫌がっているならそれまでだろう。



「おい西田! 俺と決闘しろ!! 俺が勝ったらアンにはうちのパーティに入ってもらう」 


「はあ?」



 こいつ正気か? 本人の意思も聞かずに勝負に勝ったらパーティーに入れだなんて。勇者になってからますます自分勝手さに磨きがかかってないか。



「えー。そこまでして入ってもらわなくてよくない龍吾? それに魔法使いなら大賢者の私がいるじゃん。本人も乗り気じゃないみたいだし」


「いいや魔王討伐にはヴェリテさんの孫である彼女の力が必要だ。それに西田と一緒にいるのも何か事情があるに違いない」



 その発言に少しイラっとする。こいつ英雄である婆さんの孫なら強いだろうって考えだけでパーティーに誘ってんのか? おまけに協力するのが当然のような態度。あの時殴られたことを思い出した。そういえば借りをまだ返していなかったな。



「なんだ決闘か? いいぞ裏の訓練場を使え」


「お前いつから?」


「決闘だ! からだ。勇者が勝ったらアンちゃんがパーティーに加入するんだろ? じゃあ坊主が勝ったらどうすんだ」



 いつの間にか現れたギルバートが場を仕切りだす。こいつ、まだやるとも言ってないのに。その髭ぶち抜くぞ。



「おい俺はまだやるとは」


「やってやりますよ! キョウヤが負けるはずありません」



 断ろうとしたら本人が決闘を了承してしまった。アンは意外と喧嘩っ早いんだよな。人気メニューの最後の一食とかも絶対に譲らないし。



「わかったやるよ。それじゃあ俺が勝ったら……俺のことは四宮さん、アンのことはジーニーさんと呼んでもらおうか。それと髭面あんたにはこの街で一番高い料理屋で奢ってもらう」



 いい加減その馴れ馴れしい呼び方には腹が立っていたんだ。あと髭も責任を取れ。




 裏庭にはいつの間に話を聞きつけたのか結構な人数の野次馬がいた。これだけ見てるやつがいるなら出来る限り手札は晒さないようにするか。剣を構えるとアンとミリムが一番前で俺を応援しているのが視界の端にうつった。



「よーしお互い木剣は持ったな。俺が止めといったら終わりだからな」


「後悔するぞ西田」


「さっさと終わらせるぞ」



 こいつここまで来たらわざと俺の名前間違えてるよな? それとも自分に都合のいいことしか聞こえない耳をしてるのか。



「始め!!」


「オラッ!」



 長谷川が上段に構えた剣を振り下ろす。先ずは小手調べということで中段の構えから鍔迫り合いを行う。位置的には不利だが俺の剛力レベルなら余裕で圧倒出来る、と思いきや意外なことに拮抗する。



「中々やるな勇者も」


「くそ俺が戦いたかったぜ!」



 勝手なことを言っている馬鹿2人を無視して考える。瞬発を使えば競り勝てるだろうが相手も同じようなスキルを持っていないとは限らない。ここは手札を温存するか。



「仕切り直しだ」


「逃げるのか!」



 後ろに跳んで長谷川から離れるが間髪入れずに追いかけてきた。足元に転がっていた石を相手の顔に蹴り飛ばしけん制する。石は想像以上に正確に飛び、慌てた長谷川がたたらを踏む。



「くっ」


「シッ!」



 その隙を逃さず攻め立てる。徐々に劣勢になる長谷川。腕力は同じくらいだが剣の腕は俺の方が上。剛力レベル5の俺と同じというのは流石勇者といったところか。



「ヴァリアンス!!」


「おっと」



 追い詰めらたのか恐らく瞬発と似たようなスキルを使う長谷川。しかし強化の値は瞬発よりも上だな多分。それも勇者専用のスキルか? 



「セイッ!」



 動きは速くなったが技術が向上したわけではないので落ち着いて見れば対処は容易だ。10秒ほど攻撃を捌いていると効果が切れたのか長谷川の動きが身に見えて精彩を欠いた。効果も強く時間も長い代わりに使用後はあからさまなデメリットがあるようだ。瞬発の上位互換とは言えないな。



「ハァハァ。卑怯だぞ逃げ回って」


「お前が考えなしなだけだ」



 そろそろこいつの手札も尽きたようだから決めるか。そう考え近寄った瞬間長谷川が目をカッと見開き剣を上段、いやさらに上の大上段に構える。その瞬間俺は以前オーガから感じた殺気と同質、かつそれ以上のものを感じた。


「アークブラッ」


「《水のおとぎ話(バレットアーツ)》!」



 散々練習していた魔導は俺の狙い通り長谷川の目に命中した。ただの水だ実害はない。しかし無警戒に見開いた目玉に水球が当たれば当然平静ではいられない。これ以上ない大きな隙が生まれた。



「勝負あったな」



 喉元に剣を突き付けられた長谷川を見てギルバートが呟いた。しかし最後の技、放たれていたらヤバかったかもな。あそこまで大きな隙が出来るなら死角から使われない限り平気だろうが。



「クソ!!」



 ゴン! と木剣を地面に叩きつけると長谷川は肩をいからせて出て行った。これで暫くはおとなしくなるといいんだが。というかあいつらギルバートに会いに来たんじゃなかったか? まあどうでもいいか。

 俺たちの戦いに興奮して口々に感想を言い合う野次馬をアンを連れてかき分ける。元々こいつのランクの話だったのを忘れかけていた。



「アン受付でカードの更新をしてこい。シルバーランクに上がったらしいぞ」


「本当ですか? すぐに行ってきます」


「ああ。戻ってきたら盛大に祝うぞ。強力なスポンサーがついているからな」



 こっそりと逃げようとしたギルバートの襟を捕まえて俺はどの店にいくか考えた。一回の食事でこいつを破産させるにはどうすればいいだろうか。

 

 



 

「面白い!」


「続きが気になる!」


そう思っていただけたら


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。


面白ければ星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当にうれしいです。よろしくお願いいたします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 勝ったんなら、一発ぶちかましてやれば良かったのにムカついてたんでしょう?反省しないよこのバカ勇者?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ