第13話 勇者との再会
19時ごろにまた投稿します
「プギィイ!!」
「まだ村人は無事です! 急ぎましょう!」
「わかってる」
蒼霧で目の前のオークの首をはねると奴らの棲み処に走りこむ。棲み処の名が示す通り木と藁で作ったような掘っ立て小屋がいくつかあるだけだ。その横には同じく木で出来た囲いがあり攫われた村人たちが数珠つなぎで縛られている。
「た、助けて!!」
「ブギィィィ!」
俺たちの姿を見て思わず叫んだ村人が小屋から出てきたオークに殴られると残りの村人たちは一斉に縮こまった。今殴られた奴もあのくらいじゃ死なないだろう。手早く済ませるか。
「まずは村人の近くにいるやつだ。合わせろ」
「はい」
走りながら俺は手をアンは杖を向けると同時に呪文を呟く。
「「《 豆粒ほどの大きな火》」」
もはやお馴染みとなった火の玉が飛んでいき俺たちの先にいた二匹のオークは全身を炎に包まれた。そいつらが悲鳴を上げる直前、瞬発で近づいた俺は首を両断した。やっぱり蒼霧はよく切れる。もはや相棒と言って差支えがないほど馴染んでいる。
「まだ来ますよ」
「さっさと倒して戻るぞ。ユウアン亭に旨い肉が入ったらしい」
「それは逃せませんね」
数分後騒ぎに気付いて小屋から出てきたオークは一匹残らず死体となった。オークはホブゴブリンより体格も頭もいいがもう相手にならんな。今ならオーガにだって1人でも勝てるだろう。
「それにしてもまだ魔導を学んで1週間ですよね? その速さで上手くなられると私の立つ瀬がないんですが」
「技の精度はまだまだお前のほうが上だろ。俺は水球を4つ動かすのがやっとだ」
この訓練はアンもやっているが彼女は7つ同時に動かせる。水球ではなく火球だが。俺がその域に到達するにはまだしばらくかかりそうだ。
「お前ら集まれ。癒しの風」
村人たちは大なり小なりケガを負っている。癒しの風は消費魔力は多いが範囲で回復出来るのが便利だ。回復力も高いしな。
「ケガが治ってく!!」
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
「命の恩人です!!」
口々にお礼を言う村人を宥めると元々彼らがいた村まで護衛してやる。今回の依頼は村を襲い人をさらったオークの討伐と生き残りの村人の救出だ。たまたま生き残りがギルドに駆け込んで来た時にいた俺たちがすぐに駆け付けたからか被害は思ったよりも少なかった。残念ながらゼロではないが。
「さて王都に戻るか。ほら手を出せ」
「……はい」
緊急とのことで俺たちはギルドが貸し出した馬に乗ってやってきていた。一頭しかいなかったので2ケツだが自分で走るよりよっぽど速い。
アンの手を取るとひょいっと馬の背に引っ張り上げてやる。アンは軽いので俺の剛力があれば抱っこして乗せたほうが早いのだが最初にやったら怒られたのだ。自分で言いだした癖にどこか不満げなアンを後ろから抱えるようにして行きよりもゆっくりと帰った。
「依頼完了の報告をしてくるからそこら辺で待ってろ」
「わかりました」
懐から依頼書を出しながら受付まで進む。今日はミリムじゃないのかと思ったら受付嬢は誰かに呼ばれたのか奥に行ってしまった。入れ替わりにミリムがそこに座る。
「お疲れ様ですキョウヤさん!! 馬の乗り心地はどうでしたか?」
「ああ。お陰でかなり早く村につけた。ありがとうな」
「いえいえ! 冒険者のサポートが私の仕事ですから」
馬の手配は彼女がしてくれたのだ。本来なら馬は貴重品なのでゴールドランク以上でなければ借りることは出来ないのだが緊急時という点と俺の実績を盾に上司を説得してくれた。
「あとちょっとでゴールドランクですね! 頑張ってください」
「アンの方はどうだ。そろそろ上がると思うんだが」
「アンさんですね。少々お待ちください。……はい今回の依頼で規定をクリアしましたのでシルバーランクとなります」
「呼んでくるから少し待ってくれ」
最初から一緒に来るんだったな。そう思いアンを探すとギルドに併設してる酒場のほうで4人組と話していた。あいつが俺以外と話すなんて珍しいな。いやあの様子だと絡まれてるのか?
アンのエメラルドグリーンの髪は目立つ。加えてローブと杖という魔法使いの服装から与しやすいと思われるのかナンパというには少々乱暴なお誘いをかけられることが多い。俺がいなくても本人が魔導で追い払うこともしばしばなのであまり気にしていなかったが今回のナンパ野郎は随分しつこいようだ。
「おい。そいつは俺の連れだ。失せろ」
「先に俺たちが彼女と話していたんだぞ!」
冒険者は面子が大事なのでこういう時は舐められないように強気でいくのがいいんだが、その態度が相手のカンに触ったらしい。一番熱心に話しかけていた男が勢いよくこちらに振り向いた。
「四宮君!! 久しぶりだね! 冒険者をやっているとは聞いてたけどまさか会えるなんて」
「……久しぶりだな飯田」
4人組とは飯田、大野、橋本、そして長谷川だった。この世界に来た当日に別れたかつてのクラスメイト。正直こうして会うまで存在を忘れていたから後ろ姿だけでは気づかなかった。
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