第11話 ランクアップ
19時頃にまた更新します。
「取り敢えず傷を治すぞ。癒しの風」
聖女のジョブを持つ飯田からコピーしたスキルを使うと以前と同じように周囲に心地よい風が吹く。同時にオーガにやられた俺の腕やアンの体に出来た擦り傷などが治っていく。
「これは回復魔法? オーガと力比べが出来て火魔法と回復魔法まで使えるなんてあなた何者ですか?」
「ただの冒険者だ。それより早く薬草を集めるぞ。他の魔物が来るかもしれん」
癒しの風は体の傷は治してくれるがスタミナまでは戻らないのか体が妙に重い。この場で眠ってしまいたいがそんなことをして無事で済むはずがない。俺たちは急いで目当ての薬草を集めると革袋に入れた。
「ちょっと待ってください。オーガの角は貴重な素材です。折っていきましょう」
「わかった」
解体用のナイフで削ろうとしても逆に刃こぼれしてしまったので腰の剣を使うことでなんとかオーガの角は折ることが出来た。下手したら骨よりも固いんじゃないか? これだけ苦労したのだ。高く売れるだろう。
王都に戻って来た時は流石に疲労困憊だった。魔物に会わないように気を張っていたせいで体力だけでなく精神のほうもだ。尤もアンは俺より酷い状況で最後の方は俺が背負う羽目になった。初めての実戦でオーガと戦ったのだ。無理もないだろう。だからと言って俺の背中で寝るのはやめろ。いい加減叩き落とすぞ。
「鑑定を頼む。あと受けていない討伐依頼対象を倒してしまった場合どうなる」
「キョウヤさんが倒したと証明できれば報酬を受け取ることが出来ます。またホブゴブリンを倒してきたんですか」
「いやオーガだ。これはそいつの魔石とその角だ」
魔石と一緒に角を受付に置くとさっきまで騒がしかったギルド内が静まり返る。ミリムも驚きのためかその大きな耳をピンと立てている。
「おい。こっちは疲れてるんだ。さっさとやってくれ」
「す、すみません。すぐに鑑定させていただきます」
ミリムが角と魔石を持って奥に行くと再びギルド内に喧騒が戻る。しかし先ほどまでとは違い至る所から視線を感じる。
「ギルドについたぞ。起きろ」
「むぅ。あと五分待ってください師匠。……痛い!」
ドスンと俺はその場にアンを落っことした。オーガを転ばせた分の借りはここまで運んでくるので十分返しただろう。ミリムが戻ってくるまで暇だった俺はステータスと心の中でつぶやいた。
四宮京也 男 16歳
ジョブ:なし
スキル:ラーニング レベル3
:ライト レベル1
:癒しの風 レベル1
:瞬発 レベル2
:聖剣召喚クラウソラス レベル1
:剛力 レベル5
:剣術 レベル6
:水魔法 レベル5
:炎魔法 レベル5
:風魔法 レベル5
ラーニングと瞬発のレベルが上がっている。剛力や剣術もかなり使ったはずだが元々のレベルが高いのでまだ上がらないようだ。それとコピーしたスキルを使うことでもラーニングのレベルは上がるようだ。まあそうじゃないと上限までスキルを取った状態でどうやってレベルを上げるんだという話になるから予想はしていたが。
これでコピーできるスキルは5個増えた。可能ならば鑑定士のスキルをコピーしたいところだ。様々なところで役にたつだろう。あとはギルバートや婆さんからも何かコピーしたいところだが少し慎重に行こう。俺が思いもつかないスキルがあるかもしれないから先にどんなスキルがあるのか知っておきたい。
そんなことを考えていると鑑定が終わったのか興奮に顔を赤らめているミリムが奥から走って来た。
「凄いですよキョウヤさん!! 確かに魔石も角もオーガのもので間違いありません。コッパーの冒険者がオーガを倒すなんて快挙です! あ、忘れてましたこちら報酬をどうぞ。薬草採取のクエスト報酬も含めてあります」
「ああ」
そう言ってミリムが渡してきた額は俺が王女からもらった額の2倍100万ゴールドだった。尤もアンと半分ずつで50万ゴールドだが。それでも十分だ。
「またゴールドランクの依頼達成及びキョウヤさんのスキル等を勘案しまして本日よりシルバーランクとなります。おめでとうございます!」
満面の笑みで祝福してくれるミリムだがゴールドランクの依頼を達成したからと言ってゴールドランクにはならないのか。いやコッパー以外は自分のランクの+-1の依頼を受けれるという話だったからそれほど不思議ではないか。
「もっと嬉しそうにしてくださいよ。2日でなんてこのギルドで最速のランクアップですよ!! キョウヤさんの受付をした私も鼻が高いです」
「アンも一緒に倒したんだが彼女は上がらないのか」
「!? 寝てないですよ起きてます!」
一瞬起きたがすぐにまた船をこぎ始めるアン。正直彼女のお陰でオーガを倒せたという事実は否定できない。それに今後パーティを組むのだ。彼女がコッパーのせいで依頼を受けれないのは効率が悪い。
「残念ながら彼女は今回が初依頼ですしスキルレベルも低いので。オーガ討伐はキョウヤさんの貢献が大きかったとギルドは判断したそうです。あ、パーティを組んでいる場合受注制限は上のランクの方が優先されるのでその点はご安心ください」
「そうか」
実際にはアンの実力はスキルレベル以上のものだがそういうことならば仕方がないかもしれない。直ぐにシルバーに上がるだろう。さっきからジロジロとこちら値踏みしてくる奴らが面倒なことを言い出さないうちに俺は結局眠りこけているアンを担ぐと魔導士ギルドに向かった。
「おい婆さん戻ったぞ。早くこの荷物を受け取れ」
「随分とボロボロだねぇ。荷物はそこら辺に置いときな」
お言葉に甘えてアンをソファに放り投げる。驚いたことに結構な勢いで投げたのにも関わらずアンはそのまま眠り続けた。想像以上に疲れているようだ。
「あんたの言う通りあいつと一緒に依頼をこなしてきたぞ。魔導とやらを教えてもらおうか」
「せっかちな男だね。随分疲れているみたいだけど休まなくていいのかい?」
「……このぐらい平気だ」
確かに疲れているがまだ午後3時頃。休むには早すぎる時間だ。それに今日のアンの魔導には大いに助けられた。出来るだけ早く使えるようになりたかったのだ。
「若いねぇ。ちょっと待ってな」
少し奥の部屋に行ったかと思うと婆さんは手に筒のようなものを持って戻って来た。随分小さいが杖かなにかか。
「これはね私が開発した魔導具さ。このボタンを押すと押した人間の魔力量を測定できる。試してみな」
「ここでいいのかっ!?」
ボタンを押した瞬間急に尋常じゃない倦怠感が襲ってくる。癒しの風を使った時に近いがその強さが段違いだ。
「おっと言い忘れてたよ。測定するのに魔力を吸うから魔力が減ってるときに使うと寝てしまうんだった」
「この……クソババァ。……覚えて……ろ」
してやったりと笑うババァの顔を最後に俺は深い眠りについてしまった。
「面白い!」
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