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4話 -悪の企み-

立ち去る彼を目で追いながら先程彼が来たことによって中断されてしまった考え事についてふと思いついてしまった。



私は悪魔だ___。


魔界で永遠と戦いを繰り広げ、ついに終わりが見えたと思えば仲間だったはずの者に訳もわからず追われ、また戦う毎日。

何でこんな目に合うのだろう…。


戦いを終わらせる為に戦ったのに何故私が狙われるの…?

初めからその計画だったのか、騙されていたのか…、それとも何処かで失敗してしまったのか?

考えても何も分からない………。


何も信じられない…。

自分が死ぬまで戦いがいつまでも追いかけてくるという絶望が日々心を蝕んでいく中で、人間界に行けば全てリセットできると思った。

誰も知らない土地で自由にやっていこうと考え無しに現実から逃げるようにやってきた。


最初のうちは人間の街に潜り込む事に苦労 -人間に扮し、山賊のふりをしてお金を強奪し、訳ありでも乗せてくれそうな馬車が通るまで街道で身を潜めていた- こそしたものの、街に無事入り込み翌朝の平和な景色が夢ではない事を理解してからは天にも登るような気分だった。


___悪魔的に天にも登ると言う表現が良いのかどうかはさておき…。


争いもなく魔力も抑えているから不自然な事さえしなければ疑われる心配もない!

人としても生きていけるのでは?そんな自信が胸の中で膨らんでいった。


そう…考えていたのに、想定外のことがあった。

街中には宗教団体に属する悪魔狩りがいた。


警備が強固で悪魔狩りも多そうな魔界との国境付近の街は避ける為に森を抜け、こんな辺鄙な街まできたのに、とんだ無駄骨である。

そして奴らは思いの外鼻が効く。


人混みに紛れているつもりでも何かの視線や後をつけられている感覚があり振り切るのに苦労した。

纏っていた外套も追手を振り切る為に路地で寝ていた適当な酔っ払いに被せ囮に使ってしまった、おかげでまさに文無し、身体一つで放り出されているような状況。

自分で言うのも何だが…可哀想。


何故悪魔狩りに目をつけられる羽目になったのか、わからない!

そもそも何でこんな所にいるんだ!左遷か!?地方に飛ばされたのか?



だが私自身、悪魔狩りに狙われる前に紛れ込む為何も努力をしなかった訳では無い。


働けそうなところを探したりもしたが誰も相手にしてくれず、中には何だが疑うような視線や変人を見るような目も向けられていた気がする…。

しかし、仕方ないのだ。

人間界の常識も、地名も、何もかもわからない!


働きたいの?どこの村から来たのかしら〜?とか聞かれても東の方とか適当にしか答えられないし、中には嘘の地名まで言って、そんなとこねぇよ、とか騙す輩までいる。お前こそ悪魔だよと心の中で呪った。


結局、何処も雇い入れてくれず…1人で行く当てもなく彷徨っていれば上京したての村娘と思ったのか、怪しい男たちに囲まれたりもした…。

ストレスも溜まっていたから思いっきり殴り倒し、道端に山積みにしてやった時はスカッとしたけれど…。


だけれどその後、いつまでもウロウロと腰を落ち着けることができなかったのが悪かったのか悪魔狩りに目をつけられてしまった。


結局頼れるところもなくお金も使い果たし、かと言って何も出来ず人気の無いところに身を隠すしかなかった。

段々空腹と共に考え込む時間も増えていくと何もわからない人間界での孤独、そして悪魔とバレればまた居場所を失う羽目になる恐怖、物心ついた頃から飼い犬として戦いに明け暮れていたから導いてくれる主が居ないという初めての状況。

ここ数日焦りが増すばっかりで、でもどうしたらいいかわからなくて………。


空腹とは裏腹に胃の中に鉛が詰まっていくような感覚が心を蝕んでいた。



しかし!ずっと悩んでいたのにこうも簡単な解決策があったなんて。

そうだ、人間界で主を持てば良い。

なに、契約さえしてしまえばこっちのものなのだ。

悪魔は契約には逆らえないが、悪魔の力を見せつけ逆らえない状況でこっちが有利な契約内容にすれば問題ない。

若しくは気づかれないように騙して契約を結べばいい!…契約の効力は弱くなっちゃうけど…。


そうすれば人間社会に溶け込み、居場所を作れる。

何より冒険者とは旅をする存在、基本的に異邦人なのだ。

その土地の風習が分からなくてもそれが普通だ。

それに怪しまれても次の街に行ってしまえばいいし、都合が悪くなれば街の外へ出た時にこっそり始末してしまえばいい。


何より旅がいい。


世界を見て回る為に冒険をするというのが頭の中で反芻する度、何とも言えない開放感と高揚感が全身に満ちていく___。

既に頭の中には行った事のない土地を見て周り、美味しい物を口いっぱいに頬張る自分がいる___。


そう考えればこの機会を逃す手はない。

残りのサンドウィッチを口に放り込むと小走りに追いかけた。

「ねぇ!駆け出しくん!待って〜!」

ここ数日で最も軽やかにブーツの音が鳴る。

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