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2話 −クエスト−

_______少しでもカッコいい依頼を受けたい。

受付脇にあるギルドボートで依頼を見繕っていた。


こうして依頼内容が公開されているのは例え自分が受けていない物でも頭に情報が入っていると何か別の依頼で近くに行った際に、異常に気が付いて報告してくれたりアクシデントを回避できる場合があるかららしいが、上京したてのアッシュには見聞きした事の無いモンスターの名前や地名ばかりで全然分からない。


「困ったなぁ…何か知っているモンスターとか無いかな…。」

流石に採取系は何だか違うなと思いながら討伐系で良いのが無いかと探していると見覚えのある名前が目に飛び込んできた。


「ジャイアントラットの討伐と調査?」

都会にも鼠は出るのかと感心していると真後ろから鼠の鳴き声が聞こえた。

「ヂュー!」

「ふひゃぁ!?」

唐突な出来事に思わず情けない声を出しながら飛び退くとそこには先程の受付嬢がお腹を抱えて笑っていた____。


「すみません、あまりにも悩んでいたから、つい。」

彼女なりに緊張を解そうとしてくれたのだろうか…?


そう言いつつも一通り爆笑した後に目元の涙を拭いながら、左手はお腹の前に、右手は口元から離さず時折思い出したかのようにふふ…ふふっ…と笑っている。何とも恥ずかしい状況でどうして良いかわからず頬を掻いてしまう。


「この依頼、()()()()()()()()()()()()()()()()なんです…。だからギルドから定期的に出される依頼なんですけどその分基本報酬が少ないんですよね。あまりオススメはしませんよ。」


どうやらジャイアントラットが市街に出てきそうな下水道の入口、普段は施錠されている柵が壊されていないかの調査らしい。ジャイアントラットが市街に出てきておらず調査だけでも依頼完了となるが、討伐がないと貰える報酬はお小遣い程度と言う事だ。


こう言った討伐兼調査といった複合依頼もあるのかと感心したがふとある一文が目に留まる。

「ジャイアントラット以外を討伐若しくは発見で追加報酬?」

街中で………?


この街はぐるりと壁で囲まれている。精々7、8メートル程なので絶対に侵入できないという訳ではないが魔物の侵入を防ぐには十分だし、一致間隔で見張りも立っているはずだ。


「はい、未だジャイアントラット以外の報告がされたケースはありませんが、何があるのか分からないのがこの世界ですから。でも初依頼に態々こんな地味なの選ばなくても良いと思いますよ。」


どうやら受付嬢さんは他の依頼を薦めたいらしい。確かに門出となる依頼としては地味過ぎる感じがするが……だが、問題があるのだ____仲間がいないのだ。


基本的に張り出されている依頼は一般人には手が終えない危険な物が多い、つまり初心者向けと言いつつやはり腕っ節に自信がある冒険者向けであり、そして冒険者は総じてパーティを組むのが定石。

だが悲しいかな俺に知り合いも居るはずもなくここで声をかける度胸もないのだ…。


まずは危険の少ない依頼を受けつつ、ギルドボードでパーティー募集をかけておくのが良いだろう。

きっと数日もすれば似たような境遇の人と組めるはずだ。ずっとぼっちは…流石に…ない、と思う。

それに村の手伝いでやっていたジャイアントラット退治でお金が貰えるならと前向きに考えこの依頼を受ける事にした。


受付嬢さんの眉が八の字に垂れ、何処か困ったような笑顔を浮かべているが、実は初心者向けではないのだろうか?それともこんな地味なのを受けるビビリな初心者冒険者の前途を心配視されているのだろうか…。

いやいや、はじめは誰だってこうに違いない。伝説の勇者だって始まりはスライム狩りからだったと聞いた事がある。


魔王退治もヒノキの棒から始まるのだ。地味なスタートがなんなのさ!

そう自分を鼓舞した。

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