非リアの俺のサクセスストーリー
人生は地獄だぜヒャッハー
くっそお、周りの奴ら、皆、リア充しやがっておいおい。どいつもこいつも乳くりあって死ねよ。ああでも、あの清楚な加奈子ちゃんは唯一の希望、清楚なんだからカレシなんていないよね。と思って校門行ってみてきたら、おいおい、学校一のブサイク山田と仲良く腕組みながら帰っている。山田は学校一のブサイクだが性格がいい。性格がよければ顔なんて関係ないのだ。誰かが、顔より性格なんてのは嘘で最終的は顔だなんて言うけどそれは嘘だ。いくら顔がよくったってコミュ障だったら意味ないんだ。
「山田君、この前の制服プレイ凄かったねえ」
「ああ、めっちゃ気持ちよかった」
「あの、×××がべっとりついた制服を今も来てるなんてこーふんしちゃう。まるで私たちのプレイを見せつけいるみたいじゃない」
ああああああああ、やめてくれ、かなこちゃああああん。俺の憧れの清楚な加奈子ちゃんのイメージを壊さないでくれええええええ! くそ、山田。殺してやる! 俺の加奈子ちゃんをこんなにしやがって。育成成功じゃないか。
「あ、こんど―だ。やっほー。今日も一人なん? 俺たちと一緒に帰ろうぜ」
俺と一緒に帰る? なんで?
「お前、友達いんの? 一人だと寂しくない?」
「近藤君、私たちと友達になりましょ。ねえ、この世界の皆が皆、友達になれば世界は平和になると思う」
ああ? 一人で寂しい? 何こいつ勝手に決めてんだ。俺が一人なのは好き好んでやっていることだ。馴れ合いなんて俺はしない。登下校、一人でするのも教室の隅っこで一人で弁当食べるのも、体育の時間、二人組作ってと言われて最後まで残っているのも全部、俺が好きでやっているんだ。勘違いしないでくれよな。
本当に、こいつら陽キャは俺に憐れみをかける。しかし、その本心はボッチの俺に憐れみをかけることで自身の幸福を実感しているのだ。ああ、君はかわいそうだね。でも、俺たちはこんなに幸せ。それをアピールしているのだ。死ね!
俺はそいつらのことなんか無視して走り去った。
家に帰ると無職の親父が昼間から酒を飲んでいる。ビール缶の転がる床の中を転がっているのだからゴミだと勘違いした。
「ああ、進か。お帰り」
親父はうつろな目で俺を見て、干乾びた声を発した。
「いつもいつも迷惑かけてすまんな」
「うるっせえ。迷惑かけてると知ってんなら働けよ! 昼間っから酒飲んで。恥ずかしいんだよ」
親父は十年前、リストラにあった。バリバリの働き者だった親父は心を粉砕された。いいように会社にこき使われ、いらなくなったら捨てられたのだ。世の中はそんなものだ正直者が損をする。それ以来、親父は酒浸りの生活になった。そんな親父を見かねて母は家出した。母は今、どこかで働いているようで月に一回、仕送りをしてくれる。我が家は母の仕送りでなんとか命を繋いでいるようなものだった。
ああ、嫌だ嫌だ。こんな世界滅びてしまえ。そうだ、自分が死ねば世界が滅びたのと何も変わらない。決めた。死のう。その日、俺は首を吊った。
目覚めた先はどっかの王宮らしきところだった。
「はて、こやつが、召喚士が召喚した最強の軍師というやつかの?」
「左様でござりまする」
最強の軍師? てか、ここどこ? やたらと豪華な部屋だな。金銀財宝でピッカピカだ。死ねなかったのかな。今、昏睡状態で変な夢でも見てるのかな?
「え……と、ここ、どこ?」
「ここは東マーロ帝国の王宮じゃ」
「東マーロ帝国?」
「左様。かつて、東マーロ帝国はこの、エウロッパ大陸全域を支配する大帝国であったが、邪悪なる異教徒どもの度重なる侵攻によって弱体化し、現在はその存続さえも危うくなっている。あと一回、異教徒が攻めてくれば、我が国は滅亡するだろう」
「のお、召喚士が最強の軍師といってお前を呼んだんじゃ。力を貸してくれぬか」
「はあ、わかりました。して、状況は?」
「現在、敵軍は我が国領土内を進軍中だ。あと、数日もすれば王宮に到達するであろう。そこで、我が軍は王宮より十キロ後方の地点で陣を構え、待ち伏せし、決戦を行う。敵軍約十万、我軍は約七万の軍勢を従えている」
「ふうむ、かなり、劣勢のようですね。大丈夫です。私にいい考えがあります」
「ほう、いい考えとな」
「まず、騎兵は急いで、敵の騎兵をせん滅します。歩兵は敵が攻撃してきたら中央は敵の攻撃に耐えつつ後退します。すると、我が軍の陣形はUのになるでしょう。敵の騎兵をせん滅した騎兵は急いで戻り、Uの字の開いているところを塞ぎます。そうすると完全包囲が完成し、敵軍は大パニック。我が軍の勝利です」
「なるほど、素晴らしい考えだ。ぜひ、参考にしよう」
さてさて、こうして戦いが始まった。結果はというと、惨敗。中央は敵の猛攻に耐えられず、穴を開け、その穴に敵がなだれ込み、逆にこっちが包囲されるという体たらく。見事、敵軍の進軍を許してしまったのであった。
「おいおい、あんた、何が最強の軍師だ。とんだ、ポンコツじゃないか。ふざけるな」
俺は皇帝からの叱責を受けた。
「いいか、次は籠城だからな。今度、へまやったら、お前の命はないと思え」
別にいいもん。俺、生きていたってどうしようもないし。
続く
ベイベー