斬り結ぶのは。
ご来店ありがとうございます。
粉塵とともに天井が一瞬にして瓦礫の山と化し、時雨たちの視界を灰色に染めるように吹き上がった。
あまりの埃っぽさに時雨も来来もむせこんでしまう。
だがその崩落の轟音を塗りつぶすかのように、すさまじい銃声が滝のように囂々と辺りを突き刺した。
いや、それだけではない。その銃声にはもちろん銃弾が伴っている。それも、大型銃の薬莢がそこかしこに散らばっている。
銃声を聞いた瞬間時雨は二人を庇うように倒れた。
元居た個室は跡形もなく、また三人が倒れこんでいるVIPルームのロビーもその影響はゼロというわけではなくあと一歩間違えば瓦礫の下敷きになっていたかもしれないというほどの半壊ぶりであった。
しかしほっと息をつく間もなく更なる波乱が三人の身を襲う。
「この毒婦のなりそこないの毒ヘビがぁぁぁあ!!」
それは、怒りに任せて張り裂けそうな声を張り上げた小尾jのような声だった。
「時雨なんて子はいないって言ってるでしょう?ここにいるのはかわいいかわいいバニィちゃんだけだって。」
「そのウサギを出せって言ってるのよ!この蛇、今日こそハチの巣にしてやる!」
「やぁん怖いー。とっとと赤守に堕ちてこればいいのに、ね!」
蛇男のねちっこい声とともに、粉塵を切り裂いてこちらを打ち付けにくる悪魔の蛇、いや、鞭が戦国の二人に襲い来る。
粉塵が払っていった空気の先には 大型銃を抱えるモモを片腕に抱きぐっとタメを作るように構えた安土だった。
安土はそのよく撓る鞭を間一髪のところで身を反らせて回避する。
「しぶといわよね、そのSSちゃんも!」
回避したすぐ先で急カーブをして垂直に安土の頭上に迫る。
鞭などの紐や綱のような形状のものをこのように急に軌道を変更させるのはすさまじく筋力を要求する動きである。
つまりあの蛇男、かなりマッチョなのである。
その鞭が振り下ろされるのも見越したように安土はモモを抱えて走り出す。
鞭は一度ずしんと瓦礫の山をたやすく粉々にし、地面に一閃の亀裂を走らせる。
それをないものであると思わせる素早さで追随する鞭はもはや本物の蛇のような動きである。
生きている素早さなのだ。獲物に恐怖を与えるような、毒を孕んだ獰猛な蛇。
それを振り切らんとして全速力で駆け抜けた安土がたどり蔦野は、半壊したロビーの隅で二人の女の前で剣を構える異質なスーツ姿の来来と少女のコンシェルジュを庇うように蹲る時雨がいた。
「いたぞ、モモ!」
「しぐたん!受け取って!」
どこからかモモが時雨に向けて放り投げたのは、一対の短剣―――――――時雨の剣だった。
「こわ、壊れるじゃないですかぁ!」
時雨は驚いて飛び出し、時雨の剣を地面すれすれでキャッチするも、その眼前には猛毒を身にまとった蛇もとい鞭が迫ったいた。
猫に見つかったネズミが慌てて走り出すように同じ場所で何度か足踏みをしつつも全力で駆け抜けた。
「あらブルーメ、生きてたのねぇ?今の崩落で死んだと思ってたわぁ。」
「勝手に殺さないでくださいシュランゲ!」
「んふ、うまくコンシェルジュIを隠してくれちゃって、挙句権限まで弄り回してくれちゃって。アタシ結構怒ってるのよぉ?けんげんとりかえすの大変だったんダ・カ・ラ♡」
「権限を取りかえ……!?や、先輩ヤバいです!急いでそこから離れて!」
「は!?」
「早く!!」
遅かった。
来来がうかつにも背を向けていたその少女は、この来来自身と互角以上に戦える最強の近セルジュだったのだから。
「ハロー、コンシェルジュIちゃーん?生みの親であるアタシの命令に反抗したのは一時の気の迷いだっていうことで許してあげる。だからその目障りなVIPのお客様を切り刻んでチョーダイね?」
「かしこまりました旦那様。」
「……奥様でしょう?」
「かしこまりました、だんなさま。」
「……最近言語プログラムがおかしいのよねぇ。」
「正常だと思うぜ毒ヘビのおっさん。」
「……どうしてシラゾメの若い子たちって、こうも勘に障るのかしらねぇ。いいわやっちゃってコンシェルジュI。」
「かしこまりました旦那様。」
「……もういいわ。」
いうや否やの一瞬にしてコンシェルジュIはわき腹をこつんと押すとカランという乾いた音とともにその小さく華奢な手にスラリとしたバスターソードが握られていた。
それは間髪入れずに殺気もなく思い切り振りぬかれる。
「っぁっべ!」
ギリギリのところで来来は緋翔剣のつばぜりでそれを受け止め、ギャィィィンと耳障りな剣戟の音で時雨は鳥肌がたった。
「しぐたん、ぼさっとしてないでミアのフォロー!!」
「は、い!」
開戦のゴングを鳴らすように再び鞭が地に亀裂を走らせたのであった。
なぜ戦国の2人が時雨の剣を持っていたのか。それについてはまた別の話で書けたらいいなと思っています。
とりあえずチャンバラの前に鞭で掻き回される戦場。剣戟って難しい。
またのご来店お待ちしております。




