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山の中の縹時雨  作者: takonano
第二章 この身が振るうは一対の。
19/38

集落にて

今回は短めです。


「あの小娘、派手にやってくれたらしいな。」

「えーえーたまったもんじゃありやせんよ。こちとら大事な販売ルートを壊されちまったんでげすから。」

「いずれ、あいつもろともきっちり報復させてもらわねぇとな。」


そんな会話がなされていることを、時雨たちはまだ知らない。





***




カンカンカンカン!カンカンカンカン!


二人の寝室に、金属に金属が打ち付けられるような音が鳴り響く!


カンカンカンカン!カンカンカンカン!


「ぬぁ、何事だー!!」

「朝です。」

「ひぃ!」


音の発生源は時雨だった。

その手に構えられているのは中華鍋とスープレードル(おたま)

時雨はいつもの空色カーディガンと黒のホットパンツ姿ではなく、藍色のエプロンに春模様のチュニック、デニム素材のホットパンツにニーハイ姿であった。


「いつまで寝てるんです……朝ごはん、冷めちゃいますよ。」


ちょっと口を尖らせてそう言い残していった時雨に、来来は朝から何とも言えないドキドキを感じていた。

これは寝起きで血圧が急激に上げられたせいか、はたまた時雨のエプロン姿に対するときめきか。


「ちょっと、いいじゃん?」


だが、まだ安心はできない。

この世の女の子は三種類に分類されるという伝説がある。


一つ、うまい飯を和洋問わず作れるお母さん系女子。

一つ、可もなく不可もない中堅女子。

一つ、メシマズヒロイン(以下略)。


これからのミアの命運は今この、寝室の扉の先で決まる。

昨日と一昨日は外食と来来の手作りで終わっていたのだが、今日は時雨に先回りされていたのだ。

怖くて聞けなかったのだ、なんたって本物の殺気使いの女子高生だから。

もし仮にメシマズだとしても、絶対うまいといわないと殺されちゃう。


来来はため息をこぼすと、意を決して寝室のドアを開いた……!






***





「う、うう……」

「なんで泣いてるんです?まずいならまずいと言わないと。」

「ううう……」

「正直者でない駄犬に与えるご飯はありません、ぼっしゅ……」

「美味しくて泣いてるんですぅー!!そんな殺生なこといわないのぉー!」


来来は涙していた。

時雨の飯は、ちゃんと、うまかった。


そもそもけっこうまじめな性格をしている時雨がその生い立ちで食生活をだらしなくしているわけがない。

いやまあ、結構な偏見だけれども。

聞くところによると、時雨は向こうの世界ではほとんど一人暮らしだったそうだ。

下手にメシマズであったとして、アニメやゲームの世界のように土やトカゲを入れようとしなくて本当に良かった。

場合によっては洗剤とか漂白剤とか入ってるんじゃないかって気が気じゃなかった。



つと、不穏な考えが頭をよぎる。

結構な頻度で犬扱いしてくる時雨のことだ、もしやご飯も犬仕様なのでは?と。


そう思うと、今食べている肉と野菜の炒め物も

もしや……。

い、今なんだか顎が外れそうな固いものを噛んだ気がする!!


「ね、ねぇこうはいくん?」

「なんです。」

「これ、骨入ってたりする?」

「入ってますけども。」


「ひ、ヒィッ!!?」


なんともすっとんきょうな声を出して全力でトイレへ駆け込んだ来来を、尻目に時雨はこてんと首をかしげる。


「先輩は骨で出汁をとらないタイプ……あ、噛んだんでしょうか、骨。」


この若干のすれ違いを解消するのに、ざっと2週間はかかったという。

次回から再び任務へ!


またのご来店お待ちしております。

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