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山の中の縹時雨  作者: takonano
第二章 この身が振るうは一対の。
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集落にて

やぁっと異世界っぽくなっていけます。


時雨と来来の部屋は、以前訪れたモモたちの部屋の隣部屋だった。

この木造30年のアパートは、この里のペアの人々が難なく競るようにいつでも設備が整えてあるらしい。

ちなみに言えばモモたちの部屋があるのはモモが狙撃手ということもあって一番高い三階に位置している。

ちゃっかり角部屋である。




遠くに、厳かな鐘の音が聞こえる。

ごぉん、ごぉん、ごぉん、ごおぉん。

なんやかんやと騒いでいたことに疲れて、時雨は自室で来来と昼食をとっていたことであった。

暁の鐘よりは軽めの音だったので、また別の鐘があるのだろうかとしぐれは首を捻った。


「あー、くったくった。じゃ、後輩君いこうか。」

「どこにです、そんな唐突に。食器の片付けもまだだというのに。」

「いいや、これは急ぎの用だ。すぐに武器をしたくしてくれ。」


来来に命令されるのもなんだかおもしろくないが、里に詳しいのは彼なので仕方なしに従う。

腰に一対の時雨の剣を下げ、半色(はしたいろ)瓶覗色(かめのぞきいろ)―――――――――――――鮮やかな薄紫と薄水色の陶器のようなきらめきを満足そうに見つめて、時雨はブーツに足を収める。


「おし、じゃあいくか。」


来来自身も愛用の緋翔剣――――――――――緋色(あけ)の羽模様が螺旋状に入った白亜の剣――――――――――背に装着する。


いつになく真剣なまなざしの来来に、時雨はどこか胸がざわついたのだった。




玄関を出ると”戦国”も同じく出立するようだった。

あづの右腕には世の運命(ヴェルトシックザール)を装備したモモをちょこんと座らせていた。

重くないんだろうかとついつい思ってしまう。


時雨たちも同じタイミングで出てきたことにモモが気付くと、見守るような目でほほ笑んだ。


「案外早かったわね。」


モモがそんなことを時雨に言うが、さっぱり言っている意味が分からない。


「あらあら、頼りにならない先輩はなぁんにも教えてくれていないのね。」

「駄犬ですので。」

「なるほど?」

「納得するなよあづ!」

「とりあえず移動しながら話しましょうか。」




里の西側へと町を抜けていくと、定食屋の店主も福屋のおっちゃんも、夫婦そろってみな一心不乱に西へと向かっていた。


いまなら多分、空き巣も入りやすいんだろうな、と変に考えてしまう。


「さて、こうして皆がハーメルンよろしく西へむかっている理由だけども。」

「あぁ、はい。」

「あの鐘は全員集合の為の合図。」

「二回だけだと安否確認、四回だと任務、六回だと死者が出たっていう証だ。」


来来の「死者」という言葉に思わず時雨は眉をひそめた。

そこに加えてあづも口をはさむ。


「俺たちは罪人を狩る側であるとともにかられる側でもあるってことだよ。」

「あづ!来来!私が説明するつもりだったのに!」

「ごめんなモモ、よしよし。」


とんとん、と背を撫でるとモモはぐ、と押し黙った。

時雨は本当に何歳というのが正しいのだろうかと思考がそれてしまう。


「さ、この広場よ。」


そこは、不思議な薄いシャボンの膜で覆われた開けた砂場だった。


中央にはさっきの音源だろう、暁の鐘よりはこじんまりとした釣鐘があった。

聞くところによると、”天翔ける鐘(スカイベル)”というらしい。

むりに英語で読むところが妙にこっぱずかしいと時雨は口を噤んだ。


その、天翔ける鐘の石垣の上には腕組みをして広場の人々を見下ろす組長の姿があった。


「野郎ども!ひとまず点呼だ!隊列を組め!」


全員が一斉に動き出す中、時雨は来来の腕を遠慮がちに引いた。


「あの、隊列ってどの列に並べば。」

「よし、ついてきたまえ後輩君。」


ずい、っと来来に手を引き返される。




人ごみを抜けてはぁ、と息をつき、周りを見渡すと組長の目下、つまり里の隊列の最前列に来ていた。


「ちょ、せんぱ」

「なぁ組長!俺らはどうしたらいい。」


組長は方眉を上げてこちらを見すえる。

だが、来来勝気に笑ったまま視線をそらさない。


組長はふ、っと笑ったかと思うと顎で自分の隣をっした。


「おし、後輩君!ついてきたまえー。」


時雨の口調は安定して丁寧語(慇懃無礼?)なのに対して来来は全然一定しない。


おちゃらけあんぽんたんな印象をもってもらえているとOKです。




またのご来店お待ちしております。

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