03
ジルフォードの背に乗って数時間ほどで港までの道のりの半分を越えたので今日は川沿いで野宿することになった。
「ここからは徒歩で行くが日が暮れてきたからここで野宿をする。」
シリウスはカバンからテントを出した。
エノアは入るなり驚いたように声をあげ辺りを見回した。
「中が広いです!!」
エノアはテントの外と中を出たり入ったりして繰り返している。
「どうなっているのですか?というか何処からテントをお出しになられたのですか?」
「カバンから。」
シリウスは腰についているカバンを軽く叩いて見せた。
エノアを落ち着かせてテントの中の椅子に座らせた。
「“ロストマジック“って聞いたことあるか?」
「いいえ。聞いたことがありません。」
エノアは首を横に振った。
(魔族の情報が入らなかったようにこっちでも人間の情報が手に入らなかったのか)
「俺の師匠は古代魔法を研究していた。発掘された遺跡などから古代人の生活は今を生きる俺たちより発達していたに違いないと言い遺跡を調べあげた。遺跡から後に“ロストマジック“と呼ばれるものが発見された。師匠が解読したその結果を知るやいなや魔術師達はこぞって“ロストマジック“を使おうとした。だが皆命を落とした。」
「なぜですか?今ここには“ロストマジック“を使ったテントがあるのに?」
エノアは首を傾げた。
「マナの枯渇だ。」
「え…。ですが、詠唱を途中で辞めてしまえばマナは空気中から得られるはずです。」
「それが術式が全て終わるまで生命力を吸いきってでも発動させるみたいなんだ。そのせいで国で禁止になっている奴隷行商人が沢山増えた。死んだ魔術師の中には貴族もいて事の発端の師匠は国から追放された。今も何処かで遺跡でも調べているんだろうけどな。」
俺はお茶の準備をしながら説明した。
「ならこのテントはどうして“ロストマジック“が掛かっているのですか?」
「俺が掛けた。師匠が残した内容からどれだけの魔力があれば成功するのか確認して魔力石として貯めた俺の魔力を一気に使って掛けたんだ。」
「その情報があるのなら奴隷行商人は減るのではないのですか…。」
「俺が気づいたのは魔王討伐の王命がでてからだ。それになんの罪もない師匠を追い出したやつらになぜ教えなくちゃならない?」
ーガチャン!ー
シリウスは手の中のカップを割ってしまった。
「気にしなくていい。よくあることだから。」
シリウスは破片を片付けた。
エノアは気まずそうに目を逸らした。




