爪切り
パチパチと手の爪を切る。
そういえばよく、きみに「足の爪が長い!!」って注意されたっけ。
「靴下にすぐ、穴が開いちゃうんだから」って言って。
そういえばけっこう、長くなってきた。でも、まだ切りたくはない。
こたつに入ってたら、向こう側からぼくの足をひっぱって。
座椅子に座っていたぼくはずるりとずっこけて。
「強制切除」されるときのくすぐったさは、今も忘れない。
ぼくの爪は鋼鉄で、きみの力では切れなかった。
きみは悲しそうに、「自分でやりなさい」って命令したっけ。
きみのいない時間に伸びていく爪の長さ。
淋しさもこんなふうに、簡単にちょんぎることができればいいのに。
ぼくの足の爪、けっこう長くなってきた。
でも、まだ切りたくはない。