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ep1.3

調査は危険と判断され中断された。

周囲に他のアンノウンは確認されなかったが、調査チームは二名を残して撤収していった。

残った二名も収集したデータの送信が完了し次第撤収することとなっている。

無言で淡々とデータの送信作業をしている。

早く撤収したいのだろう。

血だらけの男がやってきたのだから、当然か。

軍人ではない一般人が、この状況で平常を保って仕事を遂行しているだけでも十分度胸があると言える。

平行で日本政府がこのエリアの植民地申請を進めており、完了し次第この場を自衛隊に委譲することとなった。

こんなに早く政府が動くとは、イージス社の影響力の大きさがあってのスピードだ。

それまでこの場を守る戦力はA11部隊だけである。

空気がピリピリしている。

インド軍部隊を壊滅させた過激な集団が近くにいる可能性がある。

当たり前だが、かなりの緊張感を持って警戒を続けていた。

インド軍の兵士の身柄も自衛隊に引き渡すというのがどうにも気に入らないが。

何度かコミュニケーションを図ろうとしたが、片言の英語しか話せないようで有益な情報は引き出せていない。

ただ、時折悪魔でも見たかのように震えだす。

そして自分が歩いてきた方向を異常なほど気に掛けていた。

一体なこの男の身になにがあったのか。

この男の身に何が起きたのか非常に気になるが、会話ができない以上真実を知ることはできない。

身に纏った衣服に血が付着していることから、どこかの先遣隊と戦闘状態になったのだろうか。

この男以外の兵士達はどうなったのだろうか。

「S2からA11へ、そのエリアは正式に日本の植民地として登録された。10分程で自衛隊が到着する」


それからほどなくして自衛隊の小隊が到着した。

ロクとスガはほっと胸を撫でおろしたが、ミラは違った。

鋭い目で自衛隊をにらみつけている。

「どういうことだ・・・」

この部隊の隊長らしき男が近づいてきた。

とても屈強な肉体で爽やかな笑顔を纏っている。

自衛隊の一般的な戦闘服とは違う、特殊部隊のような衣服を纏っていた。

「ご苦労、現時点をもってこの場は我々が引き継ぐ。あなたたちは速やかに撤収して頂きたい」

「名乗りもしねぇか」

ミラは隊長に一瞬目をやり、男の横をすり抜けるように歩き始めた。

足早に進み、とある隊員の前で立ち止まった。

「久しぶりだな、防大主席のクドウさんよぉ。お前がいるってことはこの部隊は特殊作戦群なんだな?」

ロクとスガは特殊作戦群と聞いて驚いた表情でお互い顔を向けた。

「その隊員に発言権はない」

そう言って隊長が振り返る。

その顔に笑顔はない。

一瞬の沈黙の中、二人とも目線を逸らすことはなかった。

「ちっ、ムライ、ダイブオフだ」

「了解」

そして三人はウェイダネットから撤収した。

「態度の悪さは相変わらずだな・・・」

クドウと呼ばれた隊員はそう呟いた。



ロクは目を開いた。

カプセルを自力で開ける。

深呼吸をし、カプセルから降りた。

程なくしてスガ、ミラもカプセルから出てくる。

お疲れ様です。

白衣の男が椅子から立ち上がり、にっこり笑った。

ダイブ中に体の管理をしてくれている医師だ。

ミラは何かぶつぶつと独り言を言いながら部屋の出口へと足を進める。

しかしドアの前で急に何かを思い出したかのように振り返り、リクへと歩み寄った。

「あの女」

リクは見られていたのかと体をこわばらせた。

任務中に何してるんだと怒られる状況が、先行で脳裏をよぎる。

「あまり深入りしすぎるな」

リクの肩に手を置く。

「ただの直感だ」

ミラはそれだけ言い残すと部屋を出て行った。

リクはぽかんとした表情を浮かべる。

何を言っているのかわからず、必死に頭の中を整理しようとするが結局理解できない。

「あの女ってあの美人研究員?」

スガの質問にリクは無言で頷く。

「結局話したのかよ」

リクは無言で頷く。

「手ごたえは?」

リクは無言で頷く。

「連絡先は?」

リクはにやりと笑い無言で頷く。

スガの顔もにやりと笑う。

「このちゃっかり者が!」

「あんな美人に逆ナンされるなんて信じられるか?」

それから二人はしばらくじゃれ合った。

まるで子供のようだ。

「ゴホン!」

医師のわざとらしい咳払いで我に返った。

二人の動きが止まる。

恥ずかしい姿を見られ顔が赤くなっていた。

「ハッ、ハハハ・・」

二人は苦笑いを浮かべながらそそくさと部屋を後にした。


それからロクとスガはオフィスに戻り、デスクでの雑務作業に追われる。

日が暮れ始め、オフィスの中がどんどん薄暗くなっていった。

ピー、ピー、ピー

ロクのそばにあるデバイスがアラームを鳴らす。

「ちっ、薬の時間だ」

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特殊作戦群:

創設2004年、自衛隊初の特殊部隊。

アメリカのデルタフォースのように、国内外問わず偵察・情報戦・直接行動を行う。

選別は非常に厳しく部隊が自信を持って送り出した優秀な人材を次々と脱落させたため、抗議が殺到したという。

また入隊後の訓練も想像を絶するほど過酷なものであり、極限状態でも任務を遂行できるように、人道的とは言えない訓練も行っている。

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