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Prologue.2

ミラ自身も不意を突かれ死を覚悟した瞬間だった。

一発の銃弾がホムンクルス二体を同時に貫いた。

時間差で銃弾の砂埃が舞う。

走馬燈こそ見えないが、銃弾を受け制御を失うホムンクルスの動きがゆっくりに見える。

銃弾の威力は強く、ホムンクルスは粉々になった。

歯車や人工筋肉、オイルが四散する。

「なっ」

ターン・・・

遅れて心地よい銃声が駆け抜けていく。

その場にいた人間は何が起きたのかわからず一瞬あっけにとられた。

「ドラグノフ?いや違う・・これはもっと・・・」

そしてミラはにやりと笑った。

状況を悟ったのだ。

「そうかようやくおでましか、ったく遅すぎだ」

「こちらイージス特戦小隊、加勢する」

後方からやってきたのは、パワードスーツを纏ったイージス特戦小隊だった。

全長3メートル程のパワードスーツが悪い足場をものともせずにドスドスと疾走する。

スーツの肩部にイージス社のエンブレムが輝いている。

「ようやく無線が繋がった。A-11へ、よく耐えたな。ここから反撃の時間だ」

そう言って周囲を見回し、悲惨な光景に唇を噛み締めた。

もっと早く来ていればと悔やみたくなる気持ちを必死にこらえ、前を向く。

「失敗は許されない、この命を盾とし希望を守れ!」

そう言って飛び掛かってきたホムンクルスの顔を片手で掴み、そのまま握り潰した。

手足がだらりと垂れ下がり、活動が停止する。

おお、という声と共に特戦小隊が同時に飛び出していく。

敵が放ったミサイルや迫撃砲が大量に押し寄せるが、パワードスーツの肩に付いているレールガンで撃ち落とした。


窮地からの快進撃だ。

パワードスーツを纏ったイージス特戦小隊は立ちふさがるホムンクルスに怯むことなく進撃していった。

ある者はホムンクルスを持ち上げ二つに引き裂く。

またある者は、ホムンクルスの顔を踏みつけ、粉砕した。

「ロク、あの要塞に侵入できるのはお前だけなんだ。ぼさっとしてないで続け!」

ロクはミラの声で我に返った。

一度だけスガの亡骸を振り返り、静かに最後の別れを交わす。

「終わらせてくる」

そう呟くと、地面を力強く蹴りその場を後にした。


このチャンスを掴まなければ次はやってこない。

生還など二の次だと自分に言い聞かせ弾幕の嵐を突き進む。

特戦小隊はロクを守るフォーメーションを展開しているが、ゲートに近づくにつれ一機、また一機と数を減らしていった。

「おおおおおぉぉ!」

装甲が剥がれ、機体が動かなくなり、最後に命の輝きを放って散っていく戦士達。

全方向から敵が波のように押し寄せている。

物量で押しつぶされるのは時間の問題。

重要なのは全滅が先か、ゲートへの到達が先か、である。

捨て身の前進の甲斐あってゲートまで残り200m程まで近づいた所で、とてつもない爆発音と共に地響きが起こった。

先ほどの爆弾とは比較にならないほど大きい。

ロクはバランスを崩しその場に転倒した。

転倒時に頭を打ち意識がぼやける。

ミラが険しい顔で駆け寄ってきた。

「大丈夫か?」

「・・大丈夫・・です」

ミラの支えを借りて何とか起き上がる。

そしてすぐに何が起こったのか知った。


上には青空が広がっているが、空の一部に巨大な亀裂が入っていた。

「ロク、俺たちじゃどうしようもできねぇ、手遅れになる前に走るんだ」

ミラは慌てた様子で移動を促す。

ロクにはあの亀裂の意味がよくわかっていた。

あれが一度出現したらその場にいる者全てに災厄をもたらす。

残り200m、ロクは再び走りした。

「アポストル反応!」

特戦小隊の隊員が叫ぶ。

けたたましい音を立てて亀裂はさらに広がっていく。

そして、そこにいる[何か]の姿がはっきりと見えた。

亀裂の奥から地蔵のような顔が物凄い形相で地上を睨みつけている。

「アポストル目視!タイプ不明!」

地表の風が亀裂に向かって吹き上げていく。

そんな中、ロクとミラはついにゲートに辿り着いた。

ゲートは開いている。

ロクがゲートに飛び込もうとした瞬間、上から何者かに攻撃されとっさに避けた。

攻撃の正体はホムンクルスだった。

他のホムンクルスとは違うタイプのようだ。

仮面が黒い。

ホムンクルスは首をかしげてロクを見ている。

ロクはあとずさりする。

突然、ホムンクルスの死角からパワードスーツを纏った特戦小隊がブレードを振りかざし斬り掛かった。

死角からの一撃。

一瞬で片が付くかと思われた、が結果は違った。

黒い仮面のホムンクルスは攻撃を躱し、パワードスーツの装甲の隙間に手を入れた。

「ぐぇ・・ぇ・・」

声にならない声が漏れる。

ホムンクルスは突っ込んだ手を思い切り引き抜いた。

装甲の隙間から大量の血と臓器が落ちてくる。

亡骸を投げ捨てると、ロクへと手を伸ばした。

一度掴まれるとロクの腕力で振りほどくことはできない。

「久しぶりだなぁ、クソピエロ野郎」

すぐ近くから不意に聞こえた声に、ホムンクルスは動きを止める。

そこにはミラがいた。

ミラの顔は笑っていた。

まるで死神のように笑っていた。

「俺はどこまで行っても戦闘狂だ。なあ、俺と踊ってくれよ」

その手には銃ではなくサバイバルナイフが握られていた。

ナイフを構え、トーントーンと軽やかなステップを踏む。

ロクはミラの背後を駆け抜けゲートを目指した。

ホムンクルスはロクの進路をふさごうとするが、ミラに背中を向けることができない。

そして遂に、ロクはゲートへの侵入に成功した。


「特戦小隊各機へ、防衛対象はゲートへの侵入に成功。これより残敵の掃討に移る・・・」

30機だったイージス特戦小隊は残り数機となっていた。

敵が津波のごとく押し寄せる。

ミラと黒い仮面のホムンクルスは、激しい火花を散らしながら白兵戦を繰り広げていた。


『ぬ"ぅぅうあ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁぁあああぁぁぁぁぁぁ』

亀裂が完全に決壊し、鼓膜が裂けるようなおぞましい叫びと共に、山よりも大きい地蔵が落下を始めた。

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