4話「刀」
「どこでもいい!隠れろ!スィマニ!」
追いついたスィマニに小声で言った。
「えっ…、う、うん!わかった!」
スィマニがその場から離れたことを確認し、俺は男と対峙した。
「…家、どうしてくれるんだ」
男は抱えていた斧を持ち直し、叫んだ。
「ハッハッハッ!!そんなのお前が考えやがれ!!自分のモノは大切にしとけ!!」
直後、男は斧を振り上げ、飛びかかってきた。
「……っ!!」
俺は懐から短剣を取り出した。
冥界において、差別対象とされる人間は、たいてい何かしらの護身用の武器を持っている。だいたいナイフか短剣だが。
「カッ!そんなんで受け止められるとでも思ってんのか!!」
「……ぶった切ってみろよ、この剣を。お前にゃ無理だろうが」
「ハァ?頭でもイカれたか!!そんなに死にたきゃお望み通り真っ二つにしてやるよ!!オラァァァァァァ!!!」
一気に斧が振り下ろされる、その刹那。
「モード、焉月。リミット、カウンター」
俺は力強く呟いた。
俺の声に呼応し、短剣は長い刀へと姿を変えた。
「斬り裂けっ!!焉月っ!!」
刀に当たった斧の衝撃を、刀は一気に凝縮させる。俺が刀を力任せに振り上げると、衝撃は大きな円の形の斬撃となって斧の方へ、男の方へと飛んで行った。
「なっ…!その刀、まさか…!!…っ!!」
男が次の言葉を発しようとしたその瞬間、斬撃は斧を割り、男の元へと届き、胸元をえぐった。
「ガッ…!!ア…アッ…アアアッ!!アアアアアアアアア!!!!!」
大量の血を流し、男は地に伏した。地響きのような衝撃が地面を走った。
「ハァッ…ハァッ…、…この刀、だろ…!お前の狙っていた刀は…!」
うっすらと目を開け、ゆっくりと男は口を開いた。
「ハァ…ハァ…、そうだ…。…だが、……いいのか…?……俺と、喋っていても……」
「……?……どういうことだ…!?」
「さっき言っただろ……、自分のモノは…大切にしとけ、と……」
「!!…まさか!!!」
俺はすぐに今来た道を駆け戻った。
そうだ……!!どうして忘れていた……!!
二つ目の曲がり角、暗い路地裏、そこにはうなだれて壁に寄りかかっているスィマニと、狂気に満ちた、別の大男がいた。