0話「微かな記憶」
色々変なところがあるかと思いますが、楽しんでくれたら幸いです。
あらすじとかありきたりですいません。
とある監獄。
脱獄者はおろか訪問者も滅多にないこの監獄の巨大な門前に、二人の門番が退屈そうに立っていた。
晴れ渡る、雲ひとつない空。
今日もいい天気だなぁと、片方の門番は言った。
もう片方が、そうだなと相づちを打った。
だが、次の瞬間。
空が、急に暗黒になり、雷鳴が轟き始めた。
門番たちが戸惑う中、二人の目の前に、一人の青年が雷光とともに現れた。
青年は、とてつもない殺気を放ち、門番たちを一目で恐怖に陥れた。
「……ここか……」
青年はゆっくりと門番たちに近づいてきた。恐怖で、門番たちは動けない。
「……監獄門番、その門を開けろ。さもなくば、この監獄ごと、消す」
一言一言の殺気が、門番たちの恐怖をさらに加速させた。
門番たちは猛スピードで巨大な門を開け、必死に逃げていった。
恐れもなく青年は監獄へと入っていく。
門前の異常で、警備員や獄吏などが次から次へと集まり、青年に攻撃を仕掛ける。
青年は腰の刀に手を当てて言った。
「……斬るぞ」
殺意がこもりすぎたその三文字が、相手の攻撃を止め、道を開けた。
迷いもなく、青年は監獄の奥へと進んでいく。囚人たちの牢からの声も聞くことなく、下層へ繋がる階段を下りに下り、最下層の一つ上の階で階段を下る足を止めた。青年の目当てのものは、この階にある。
そして、一番奥の牢へとたどり着いた。
ひどく痩せこけた少年が壁に繋がれている。いくつもの拷問を受けた形跡があり、ところどころに切り傷やアザが出来ていた。
「…メイ…!………メイ!!」
青年は牢に顔を当て、少年を呼んだ。
「………!!」
少年も、青年に気づいた。かすれた声で、青年に言った。
「…………ラグ……兄………!!……来て……くれたの………」
「あ……当たり前だ!!無実の罪で囚われる弟を、放っておけるか!!」
「………兄………!」
少年の顔に、かすかな笑顔がこぼれた。
青年は、刀を抜き、牢に向かって構えた。
「待ってろ…!今、助ける…!」
牢の扉を斬り、少年の繋がれた鎖を斬った。
笑顔で泣く弟の寝顔を見て、青年は仕方ないなと微笑みながら弟を背負った。
眠る弟に、青年は言った。
「お前は、この天界にいちゃいけない存在だ。これからお前を冥界へ送る。そこで、幸せに暮らしてくれ…」
これは、少年に残る、微かな、本当に微かな記憶。
ベッドの上で、少年は目を覚ます。