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42話




     ◇


 再び『シャロトガ』へと戻ってきたシルヴェリッサは、全員分の宿賃を払ってスイートフロアを借りた。毎度のごとくざわつく周囲を無視し、3階に上がって部屋に入る。


 入浴ができる時間はまだしばらく後らしいので、ジェムコクーンへの魔力付与を試すことにした。ソファに座し、昨日さくじつやったのと同じように両手を胸の前で向かい合わせる。

 これだけでなにをするのか察したようで、ジェムコクーンたちがシルヴェリッサの前で順番に並んだ。


 アーニャたち、カーヤたちもなぜか頬を赤くして見学しにきたが、シルヴェリッサは気にせず魔力を手に集め始める。進化でLvの上限も増えているのは確認済みのため、前回より多めになるよう意識した。


 もう手馴れたもので、瞬く間に魔力が集まると、すぐに1番目のジェムコクーンに与えてやる。やはり小刻みにふるふる、と震えた彼女だったが、今回も無事に済んだらしい。と、


          《――”ジェムコクーン”にMP113を与えました》


          《――”ジェムコクーン”のLvが

                     15~50に上がりました》


          《――上限値を越えるため

                 余った経験値は破棄されます》


          《――”ジェムコクーン”のLvが上限に達しました》


          《――分岐先いずれの条件も満たしていないため

                          進化を保留します》


 どうやらジェムコクーンにも進化の分岐があるようだ。

 しかし現段階では、その分岐先のどの条件も満たせていないらしい。


 それはまた後で考えることにして、残りのジェムコクーンにも魔力を与えていった。昨日と違ってかなりのMPを消費したが、特に問題なく終了する。

 能力値の確認のため、”神の瞳”を発動させた。


===  ===========================  ===


          ○ ジェムコクーン


            Lv: 50/50


            HP: 224/224

            MP: 417/417


            STR:  18

            DEF:  12

            INT: 297

            RES: 284

            SPD: 202

            LUC: 186


          スキル: □採集Lv1 □飛行Lv2

               □無魔術Lv1 □魔力感度Lv2


~~~  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  ~~~


     ○ ジェムコクーン

          |

          |→ ○ ダイヤモンドパピヨン

          |     条件(未達成): スキル『光魔術』の習得

          |     ≫ 光属性

          |       ほぼ全ての光属性攻撃が効かない

          |       『無魔術』『光魔術』を除き

          |       全ての魔術系スキルを失う

          |

          |→ ○ オニキスパピヨン

          |     条件(未達成): スキル『闇魔術』の習得

          |     ≫ 闇属性

          |       ほぼ全ての闇属性攻撃が効かない

          |       『無魔術』『闇魔術』を除き

          |       全ての魔術系スキルを失う

          |

          |→ ○ ルビーパピヨン

          |     条件(未達成): スキル『火魔術』の習得

          |     ≫ 火属性

          |       ほぼ全ての火属性攻撃が効かない

          |       『無魔術』『火魔術』を除き

          |       全ての魔術系スキルを失う

          |

          |→ ○ サファイアパピヨン

          |     条件(未達成): スキル『水魔術』の習得

          |     ≫ 水属性

          |       ほぼ全ての水属性攻撃が効かない

          |       『無魔術』『水魔術』を除き

          |       全ての魔術系スキルを失う

          |

          |→ ○ トパーズパピヨン

          |     条件(未達成): スキル『地魔術』の習得

          |     ≫ 地属性

          |       ほぼ全ての地属性攻撃が効かない

          |       『無魔術』『地魔術』を除き

          |       全ての魔術系スキルを失う

          |

          |→ ○ エメラルドパピヨン

                条件(未達成): スキル『風魔術』の習得

                ≫ 風属性

                  ほぼ全ての風属性攻撃が効かない

                  『無魔術』『風魔術』を除き

                  全ての魔術系スキルを失う


~~~  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  ~~~

===  ===========================  ===


 ”トパーズパピヨン”。

 セルエナにいた際、シェーランド家の依頼で捕まえた魔物だ。

 そのときに見た資料に、確認されている”ジュエリーパピヨン”は現在4種類である、との記述があったのを覚えている。が、どうやら実際にはもう2種類いるらしい。


 だが条件にある各種『魔術』の習得、シルヴェリッサにはその方法が見当もつかなかった。知らぬ間に『無魔術』なるものがスキルに追加されていたが、いつどこでどうやって得たのか、心当たりはない。

 なのでいつも通り、アーニャたちに訊ねることにする。


「……魔術の習得法はわかるか?」

「「「「「しらな~い」」」なのー」」 カーヤたち

「「「「「ご、ごめんなさい……」」」」」 アーニャたち


 とのことだったので、ジェムコクーンの進化はしばらく保留ということになりそうだ。

 「気にするな」という意味を込め、それぞれ代表としてアーニャとカーヤの頭を軽く撫でる。


「ピュイッ、ピュイ!」


 ねだりにきたセルリーンも撫でた後、シルヴェリッサは書棚へ本の物色に向かった。そして、とある一冊の書を見つける。

 黒い表紙の、『呪術大全 ~正しい使用法と解呪法~』という少々厚い書だった。


 いささか物騒な名前だったが、『呪い』に苦しんだ経験の濃いシルヴェリッサである。今後のことも考えると、解呪法などは知っておきたかった。

 ソファに座りなおすと、集まってきた皆を横目に書を開く。


 しばらくはかなり弱めな呪いの記述ばかりだったが、徐々に危険度や難易度の高い内容のものが増えてきた。少し例を挙げると、


   ~毒やしびれなどをもたらす、比較的広く普及している術~

   ~ある程度の力量と規定の手順が必要だが、そのぶん強力な術~

   ~大がかりな儀式およびにえが必要とされている、現在は失われた術~


 という具合のものが、それぞれ解呪法とともに記されていた。

 ほとんどの強力な術の解呪には、特別な道具もしくは素材などが必要らしい。が、そういった呪いを使える者はかなり稀であるようだ。


 さておき、1つ気になる呪いがあった。

 ”忘却の呪い”、である。


(自分の名前以外すべてを忘れさせる、か……)


 とてつもなく厄介な呪いだが、解呪法を調べたところ、特別な道具はいらないようだった。


(呪いにかかった者に魔力を流す……ずいぶん簡単だな)


 シルヴェリッサはそのように感じたが、記述によると普通はそうでもないらしい。そこそこ多量の魔力を必要とするので、名のある実力者が解呪にのぞんでも相当に時間がかかるようだ。



     「「「「「すー……すー……zzz」」」」」

     「「「「「くー……くー……zzz」」」」」



 ふと、そんな寝息が聴こえてくる。

 見やると、アーニャたちカーヤたちが仲良く肩を寄せ合い、眠っていた。


 そろそろ入浴の時間がきてもおかしくない頃だったが、別に今すぐ起こす必要もないだろう。

 ただ身体は冷やさぬようにと、以前に買っておいた布を取り出して各々に掛けてやった。


 ともあれ、明日はくだんの大会当日である。

 気負うわけではないが、油断だけはしないように心決めるシルヴェリッサであった。

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