1話
「――――っっはああああああァァァァーーーーーーッッッッ!」
全身全霊、最後の一撃を放つ。
巨大な六色一閃の斬刃が静かに唸りを上げ、瀕死の『邪怨の主』に死を刻むがごとくその身を穿った。
否、人々の負が凝り固まった『邪怨』には『死』という概念などないので、この表現は的確ではないだろう。これらを滅ぼすには、その根源たる負を取り込む他ないのだ。
そしてそれは、この世界において自分にしかできず、よって必然的に戦いを強いられたのである。
しかし――
「ぐギあぁァアああアあアあアああァァぁぁーーーーーーーーーーッッ!!!!」
――それも今、この瞬間、終わりを迎えた。
『邪怨の主』の断末魔の叫びが、10年という長い長い孤独な戦いの終焉を告げるかのように響き渡る。
粒子となった『邪怨の主』の負が、流動する水のごとく自分の体内へ流れ込んできた。この酷く吐き気がし、虫唾が走るような感覚も、これが最後だ。
……まあ、虫唾が走るのは、常日頃からであったが。
自分は……人間が嫌いだ。憎んでいると言ってもいい。
親に捨てられ、物心ついた頃にはすでに孤独だった。辛くて、寂しくて……死にたいと、幾度おもったことか。
けれど、生を諦めるにはもう、遅すぎたのだ。
神から不死の呪いをかけられ、いずれ来る『邪怨』と戦う道具にされたのである。
……それからはさらに酷かった。
不死を理由に食べ物も与えられず、『邪怨』が現れるたびに放り出され、休息など二の次。
周囲からは化け物と蔑まれ、石を投げられる。
呪いのせいで、死にたくとも死ねない。
解放されるには、人間のために『邪怨』を滅ぼす他なかった――。
「……………………」
はぁぁ……、と長く息を吐き出す。
生まれてからずっと続いていた地獄のような日々が、ようやく終わった。
そうだ。これで……やっと、やっと――
「…………死ねる」
この世への決別代わりに呟き、多くの敵を屠った自身の刃を、己の胸に突き立てた。
そして自らを生から解放するため、力を込め――
(――っ!? な、なんだ!?)
突然、見えない何かに上から引っ張られる感覚。直後に、空宙へと放り出されたような浮遊感。
見渡すと、周囲総てを幾何学的な紋様に囲まれていた。それ以外には何も、地面すら見当たらない。ただただ暗い虚空が広がるのみだ。
(一体なにが起こった! ……いや)
今、何が起きているか。そんなことはもはや、死んでしまえば関係なくなる。気にする必要などないのだ。
そう結論付けたところで、異変が起きた。
(っ、引っ張られる!?)
まるで大きな渦に巻き込まれたかのように、四方八方へ振り回される。
「くっ!」
いくつもの流れが止めどなく押し寄せ、それにより六刃が手から弾かれてしまった。
(っ、”戻れ”!)
念じるも、六刃は反応を返さず。
やがては自分から離れすぎたため、元の三つの剣と三つの刀に還ってしまった。
(なぜだ!? こんなことは今まで……!)
さらに程なくして、今度は自らの意識が薄らいでいく。
それに気づいた直後、完全に意識が途絶えた――。
《――――異世界・ジアースより
NAME:シルヴェリッサが召喚されました》
《――――NAME:シルヴェリッサのステータスをインポートします》
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《――――インポート完了。続いて召喚儀式による特典により
以下のスキルをインストールします》
→ 神の瞳:スペシャルスキル
様々なモノのステータスを視ることができる
→ 神の庫:スペシャルスキル
アイテムを収納、取り出すことができる
(容量無限)
→ 神の手:スペシャルスキル
全ての生産系技能レベルMAX
→ 獲得経験値増加:スペシャルスキル
獲得経験値を増加させる(PTにも有効)
→ 全状態異常完全無効:エクストラスキル
全ての状態異常を完全に無効化する
※ 既に入手済みのため
インストールされません
→ アルティア標準語:言語スキル
世界・アルティアにおける標準言語
→ 言語修得高速化:エクストラスキル
あらゆる言語の修得を早める
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《――――インストール完了。ステータスを表示します》
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NAME:シルヴェリッサ ♀
AGE: 17
Lv: 83
HP: 1283/1283
MP: 1187/1187
STR: 467
DEF: 396
INT: 453
RES: 415
DEX: 430
SPD: 502
LUC: 331
スキル: □神の瞳 □神の庫
□神の手 □獲得経験値増加
□全状態異常完全無効 □言語修得高速化
□剣技能Lv10(MAX)
□刀技能Lv10(MAX)
言語: □アルティア標準語
称号: △六刃使い(凍結中) ■異界の救世姫
■邪怨の主
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