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我が使命の第一歩ーーそれは『合コン』!?

--木戸鋭介との対面を終えたあと。

我は久しぶりに深い眠りについた。


アトラ世界では、時間帯はいつだろうと警戒は怠ってはならなかった。どんなモンスターが襲ってくるかわからない。常に命の危険が伴う。


だが、この世界ではそういった不安が不思議と全く感じられなかった。真に平和な世界はどこかと問われたら迷いなく我がいまいる世界だと答えるであろう。


ベッドなるものは寝心地が最高である。まるでブラックホールのように、1度寝たら出られない、いや、出たくなくなる空間であった。野宿生活のテントの中で、地べたで寝るのとは桁違いだ。


……気づけばあっという間に朝になってた。


「……いまは何時だ。いったい。」


携帯で時刻を見ると、もう朝の11時である。


「まずい!!敵は!?」

我は慌てた。アトラ世界では、モンスターが活発な時間帯であり、我らはすでに行動をしているのが当然であった。


しかし、すぐに気づく。ここは異世界であると。何も襲ってくるものはいない。


「さて、今日はどうするのが最善であるか……」


しばらく考えていると、病室のドアが開き、医者がやってきた。

「さぁ、今日も検査だよ。もしこのまま異常がなければ、今日中には退院できることになりそうだ。」


思ったより、早いな。まぁこれで、目的遂行を始められそうだ。


その後、4時間ほどかけて検査をおこない、異常がなかったため退院となった。


母と妹も見舞いに来ており、退院する時一緒に帰ることとなった。


「ねぇ、本当にうちに帰らなくて大丈夫なの?鋭介。すぐに、寮にもどって明日から大学だなんて。異常がなかったとはいえ、あれだけの事故なのよ。」

「お兄ちゃん、本当に平気〜?」

「大丈夫だ。問題はない。むしろパワーがみなぎってくる感じだ。」

「……あんた、もう1度脳検査だけ受けたら?」

「必要ない」


母と妹は東京くら1時間ほど離れたところに住んでいるらしい。そんなところに1度かえってしまっては、『彼女作り』が遅れてしまう。我は一刻も早く、大学に行きたいのだ。


病院の最寄り駅で母たちと別れると、我は電車に乗り、寮へと向かった。

電車というものに乗るのは初めてであったが、記憶、知識をたどったおかげで問題なくできた。


しかし、すごい便利である。歩くよりずっと早く、遠くに行けた。リオ村にもあったらなぁと強く思った。村では、馬での移動が最も早かった。


我は寮にたどり着いた。


「おっ!鋭介帰ってきたか!お前、事故ったんだって?」

寮の玄関にあがるなり、声をかけてきた男は、近藤という名前で木戸鋭介の寮での唯一の友達である。


とにかくうるさいやつで、うっとうしく感じているが隣の部屋に住んでいるのでいわゆる『表面上の付き合い』という形で接している。


「ところでさー、お前...。あ、まだ確定じゃないから言えないんだけど、面白いことに誘ってやるよ。明日また連絡する」


「なんだ。我はつまらんことなら行かないぞ」


「お前、なんか口調おかしくないか?...ま、明日のお楽しみなー」


「ふん、くだらん。」

我は自室である、寮の205号室に戻った。いたって普通の部屋だった。まあ、あの野宿に比べれば、はるかにいいのは間違いないが。


我は、明日から大学にいくのだ。『彼女』をどうやって手に入れるかーーーーー。これが今の生きる意味。今日はゆっくり休むとしよう。


ーーーー気がついたら朝になっていた。今日は木曜日で今は9時。知識によれば、どうやら『授業』というものにでなければならないらしい。大学では「履修」をした授業だけをうけ、単位を一定数取得するというシステムだ。つまり、自由に過ごせる時間が多いということで一般的には、バイトなり、サークル活動なりに費やす学生が多い。


ところで、木戸鋭介はというと、バイトはしておらず、サークルはSAS団とかいう、おたくのサークルに、たまに顔を出してるくらいのようだ。月に1度くらい。昔は大学デビューとかして、テニスサークルとか入っていたようだが、すぐにやめていた。つまりーーー、人との関わりが少ない。かろうじて授業に出ているような生活であり、限りなくニートなるものに近い生活なのだ。


たしかに、これはまずい。なんとかしなければならない。だが、特にいい案が思い浮かばない。この世界の『常識』によれば、むやみに見知らぬ人に話しかけてはいけないらしい。面倒な世界だな、全く。我は吸血鬼である。できれば、人間の血を吸い尽くしてやりたい気分だ。だが、欲求は我慢する。全ては目的遂行のために。


「まあ、今日は『授業』を受けるだけにするか、えーと、ミクロ経済学と哲学....。なんだ?新手のモンスターなのか?」

こんな感じで我は大学に向かった。

大学は割と広めなキャンパスで冬の時期だからか落ち葉が積もっていた。木々はすっかりかれている。


限界効用だとか、訳のわからない単語を、大教室で聞きながらその日の授業は終わった。実につまらなかった。しかし、これはこの世界が平和であるということの象徴なのだろう。『授業』では、『彼女』に関する情報を得られる訳でもなく収穫はゼロに等しかった。


唯一のイベントといえば、キャンパスを歩いてた黒髪の女性が血が美味しそうな雰囲気を纏っていたので、つい、

「そこの女。我と付き合い、我にその血を捧げてみぬか。」などと、かっこよくいったら、殴り飛ばされたくらいだ。

かなりの勢いで殴られたため、軽い傷を負ったが魔力で瞬時に回復した。だが、周りの視線がどうも痛々しかったことは鮮明に覚えている。



「このまま何も進まないのはまずい...。どうしたものか」

我はため息をつきながら、寮の玄関を開けた。


「木戸!!待ってたぜ!日時と場所が決まったからお前に連絡しようと思ってた」

「なんだ。貴様は今日授業はないのか。」

「今日は全休。授業はなし」

「ほう、で?連絡というのは、くだらんことならかえーーー」

「『合コン』をやるんだよ!お相手は女子大生だそうだ!これは彼女作るチャンーーー」

「彼女だと!?!?なんだ!!そのイベントは!」

「...勢いありすぎ。か、軽いお見合いみたいなものだよ。女子と男子がどう人数であって、楽しくやるーー宴だ。」

「宴か...ほう、そこに行けば彼女を作れるんだな?」

「うまくいけばな....だが、可能性はある、俺はそこに、ロマンを求めているのさ」

「ほうーー、我も是非参加をしたい。」

「場所は渋谷のゲストってファミレスだ、いいな。明後日、17時集合だそうだ。向こうの人数は4人。こっちも俺とお前含めて4人だ。」

我は呆然としていた。これは思ってもみないチャンス到来だ。目的を果たせるかもしれない。これは運命だ。乗るしかない、この神が示したレールに!ふふふ、我の力を試す時がきたようだ。



だがーーー、この時の我はまだ知らなかった。『合コン』の恐ろしさを。そこで木戸鋭介の新たな黒歴史が形成されてしまったなどと、この時はまだ知る由もなかった。



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