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それぞれの始まりⅡ

ーーー都内の某病院。



「お兄ちゃん!!」

「鋭介!!!」


我は目を開けた。....なんだここは?建物の中か??ぼんやりとした意識の中で周りを確認していく。どうやら寝ていたらしい。

ついさっきまでアトラ世界の森の聖なる光を浴びていたというのに。暗くてじめじめする。こんな場所、早く去りたい。


「お兄ちゃん!....ほんとよかった!!死んじゃったのかと思った........」

「我は一体どうしたというのだ......人間風情に騒がれているとは」


ーーズキン!!

とたんに頭に激痛が走った。次の瞬間。様々な記憶、知識が頭の中に流れ込んでくる。この体の持ち主、木戸鋭介としての記憶が。


「なるほどな。どうやら、我はとんでもないことに巻き込まれているらしい」

「鋭介、どうしちゃったの。なんか、口調が変よ。やっぱり事故で!!!」

「お兄ちゃん、頭おかしくなちゃった!?悲しいよ私。」


ひどい言われようだ。我、ゼクスにとっては普段通りなのだから。そして、元の体の持ち主の記憶を辿ると、この女性2人の名前はすぐに出てきた。1人は妹の千帆、もう1人は母の智子という名前らしい。


すると薄暗い部屋の扉を開け、医者が入ってきた。


「鋭介くんは大丈夫ですよ。軽い傷で済んでます。はっきり言ってね、奇跡ですよ。普通なら即死でおかしくないレベルの衝撃だったはずだ」


我は吸血鬼だからな。その程度では死なん。それか体内の魔力のおかげだろう。


まぁつまり、この体になってもなんらかの魔力や、吸血鬼の特性といったものを引き継いでいるのだろうか。記憶や知識を得られたのもこのおかげか?などと考えていた。


「とはいえね、鋭介くん。君はまだ目覚めたばかりだ。あれほどの事故のあとなんだから、まだ安静にしてなさい。」


「そうよ、鋭介。まだゆっくりと休んでなさいね。とにかくよかった。無事で……。今は仕事中だけど、父さんもほんとに心配してたんだから。じゃあ、母さん、千帆と一緒に帰るね。明日も見舞い行くからね。」


「まぁ目を覚ましたことだし、もろもろの検査を受ければ、退院できるだろうから。安心しなさい」


「了解した。感謝しよう」


やっぱ、お兄ちゃんちょっと変じゃない?などといいながら母、妹にあたる人物は病室をあとにした。


「なぁ『医者』……というのだろうか。貴様に聞きたいことがある。」


木戸鋭介の知識を引き継いでるため、この世界のある程度の常識的なことや物事は理解可能だ。つまり確認程度にすぎない。


「なんだね、木戸くん」


「ここは……『病院』というところか?」


「ふむ、そうだよ。頭もだいぶ打ってるはずだから混乱してるのかな?にしても脳への損傷はほとんどない。むしろ『再生』した、とでもいっていいのか?これほど興味深いことはない。」


「いいから、答えてくれ。」


「ああ、そうだ。ここは東京都内の病院で永井病院という名前だ。私は梶川という医師だ。」


名前などどうでもいいが、『病院』で間違いないということか。木戸鋭介の知識は正しいものだとわかった。充分だ。


「この世界には……『ゴブリン』はいるか?」


「なんだね、いきなり?ファンタジーの読みすぎだよ」


……やはりか。我はどこかの異世界に来てしまったのだ。魔王討伐を早く成し遂げなければ、村人たちに面目がない。早く戻らねば。


などと考えながらどうすべきか悩んでるとふと寝ていた『ベッド』の枕元に縦長の長方形の物体を見つけた。どうやら、『携帯』あるいは『スマートフォン』と呼ばれるものらしい。


「ああ、君。事故の時もその携帯は肌身離さず持っててしっかり守ってたよ。よっぽど大事だったんだね。おかげで傷ひとつなかったよ、その携帯。」


じゃ、私は他の患者さん診察しなきゃいけないから。などといいながら去っていった。


部屋に1人、取り残された我は携帯なるものをいじってみる。記憶を辿っているため、スムーズに操作できる。さっそくホーム画面を開いてみると--多くのアプリがあった。その中で、右下に表示されている『アプリ』に自然と見入ってしまった。


「『グレーブルオンライン』??開いてみようではないか」


さっそくアプリをタップすると……開いた。壮大なBGMとムービーのあと、プレイヤー画面が開かれる。

《エイスケ》というプレイヤー名だ。


いくつかのボタン操作を確認したのち、パーティーボタンをタップした。すると、4枚のカードからなるパーティー編成画面が表示された。リーダーキャラは……ゼクスだ。


「我ではないか!!どういうことだ!?」


鋭介の記憶にあったゼクスは自分のことなのだとこの瞬間理解した。そして他のパーティーメンバーも、アトラ世界で一緒にパーティーを組んでいたメンツだ。偶然などでは決してないと悟った。


「我はこの世界では『ゲーム』と呼ばれるものの中からきたということなのか……?つまり木戸鋭介は我が主?」


勝手に主君扱いした。ともかく、アトラに戻ることは容易ではない、いやもう不可能なのではないか、そう思い始めた。


では、アトラ世界の自分はどうなっているのだろう??そう思いながら、このゲームをプレイしたくなってきた。


「アトラがこのゲームではどう表示されるか気になるしな。」


「クエスト」ボタンを押してみた。当然壮大なマップなどが表示されてーーーーーーーではなかった。


なんか、モニターみたいな、ビデオ通話みたいな画面に切り変わった。なんだと思って、見てみる。


そこに映し出されていたのは、夜のテントの中で寝ている自分自身、つまりゼクスの姿であった。『向こう側』のゼクスが目を覚ます。


「貴様っ!!!!!」

「お前はっ!?!?」


こうして2人は、スマホという画面越しで対面することになった。唯一の《現実》と《異世界》の、2人だけの架け橋としてーーーーー!




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