神話・伝説に見られる物語のアーキタイプ ~英雄の旅~
読み専として面白い小説が読みたいと思っていました。面白い小説とはどんなものか? ストーリー作りについてちょっと気になって調べてみました。
ストーリーの流れの作り方には、さまざまな手法があるようですが、王道と言われる手法・物語構造について簡単にですがまとめてみます。
比較神話学の第一人者として知られているジョゼフ・キャンベルは、世界中の神話の中に共通のパターンがあることを見出します。
ジョゼフは著書のなかでその共通のパターンを「英雄の旅(ヒーローズ・ジャーニー)」と名づけました。
(1)主人公は別の非日常世界への旅に出、(2)イニシエーションを経て、(3)元の世界に帰還する、という共通の構造を持っているということです。
その構造をすこし詳しく見てみましょう。
構成は8ステップに分けられます(12ステップ説もあります)。
1.Calling(天命を知る)
物語の始まり。主人公は何かのきっかけで、旅への使命・天命(自分の生きる意味や役割)と出会い・知ることになります。
2.Commitment(旅を始める)
主人公は旅へと導かれますが、使命(天命)を受け入れられず旅立ちについて葛藤します。しかし、最終的には旅立ちを決意します。
3.Threshold(境界線を超える)
旅立ちを決意した主人公は、日常と非日常の境界で最初の試練にぶつかります。そして試練を乗り越えて行きます。
4.Guardians(メンターと出会う)
非日常の新しい世界に旅立った主人公は、そこで新しい経験を積みます。(人生の)師や頼もしい仲間と出会い成長を遂げます。
5.Demon(悪魔とぶつかる)
旅を続ける主人公は遂に最大の試練にぶつかります。絶体絶命の危機に陥ることも多くあります。敵(怪物・悪魔など)や強力なライバルが試練として立ちはだかることが多いです。
6.Transformation(変化・変容する)
最大の試練を克服した主人公は、英雄へと成長します。
7.Complete the task(課題を完了する)
主人公はこれまでの旅路を振り返り、その意味に気づきます。旅の中で得た様々な経験から結論(その旅・物語のテーマ)を導き出します。
8.Return home(故郷へ帰る)
旅は終わりました。主人公は元いた世界・日常へと帰還し、物語は幕を閉じます。
ジョージ・ルーカスが『スター・ウォーズ』にジョゼフの神話論の構造を取り入れたというエピソードは有名だそうですね。
そのほか『ロード・オブ・ザ・リング』の構造もこの形だと思います。
『普通の人であった主人公が、旅立ち、困難を乗り越えることで最後には英雄へと成長する』
主人公に感情移入しやすくて読者は勇気や感動をもらうことができる、まさに王道なストーリーです。
ハリウッド映画の多くにもこの手法・構造が取り入れられているのも納得です。
ものすごく端折って簡単にまとめましたが、物語の基本構造やストーリー作りの一助になればうれしいです。