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異世界奇想曲  作者: 入栖
第零章 序曲 - プロローグ -
8/44

はじめてのしょうにんぎるど


 俺にとって鏡とは真実を写し出すイメージが出来上がっている。それは国民的ゲームの竜探索シリーズ(特に3)や、世界的に有名な童話『白雪姫』に出てくる鏡のせいだと思う。


 でも真実を写し出すと言う設定もなんとなくだが、わかる。

 だって鏡はそこに有るものを、そのまま写し出してくれるんだから。


 エルさんからもらった鏡は、豪華な装飾がされた普通の鏡だった。

 それが写し出すのも、やっぱり真実と現実だった。


「ああ、マジ誰が見ても女だわ、ナルシストじゃねえけど、自分で自分に惚れるレベルの」

 鏡に映ったのは俺の顔、小ぶりな鼻に、少しだけ釣り上った目、シミやしわのない顔。そして光に反射してキラキラと光り輝く美しい銀髪。それもこの髪、肩甲骨あたりまで伸びてるし……普通の男は此処まで髪伸ばさない。

 10人の男がいたら十八回は振り向かれるだろう。俺だって二度見するわ。振り向かない奴はただのゲイだ。


 俺は大きくため息をつく。そして鏡をアイテムボックスにしまった。


 

「それにしてもイカちゃん討伐か。久々に見たけどやっぱイカちゃんだったな」

 クエスト『巨大イカを討伐せよ』に出現するクラーケン。通称『イカちゃん』。レベルは100と結構高めで、ステータスも全体的に高い。能力だけ見ればつよい。ぅゎィヵっょぃ。


 しかし大きな光があればそちらに引き寄せられてしまうと言う、馬鹿としか言いようのない習性があり、それを利用してしまえばノーダメージで勝つ事ができる。

 今回俺と魔法使い二人のレベルが足りないため、仕方なくライト使用したが、本来は火魔法のクリムゾンフレアを使うのが一般的だ。


 ちなみにクリムゾンフレアを使うと、イカちゃんが海からイルカのように大きくとび跳ね、自ら火球に突っ込んでいく姿、通称『スタイリッシュ焼身自殺』が拝める。

 イカちゃん。お前は火や光に命をかけるほどの恨みでもあんのか?


 ステータスはいいくせに、その馬鹿な点がプレイヤーに高評価を受け、人気漫画から名前をぱくって『イカ息子』やら『イカちゃん』とよばれるようになった。


 ちなみに『イカちゃんをクリムゾンフレアで討伐してみた -イカ語リミテッド-』という動画、イカ語『~ゲソ』『~イカ』を使用して解説しながら討伐する動画なのだが、1000万再生を突破している。


「今回の討伐の途中まではよかったけどその後はまずったよなぁ……まさか俺が船酔いするなんて……」


 初めの方は余裕だった。しかしイカちゃんが大きく動くせいで大きな波がおこり、船が振動したことと、ただライトを複数同時起動する単純な作業をしていたせいで酔いがまわってしまった。

 途中からポーションを飲む事も出来ないぐらいに気持ち悪くなり、自分にかけるようにして使うほどまで追い詰められた。


「なんとか討伐まで持ちこたえたけど、もう少し長引いたらまずかったな、リバースしてたわ」

 皆が喜んでいる中、俺は一切喜んでいる暇はなかった。とりあえず楽な体制を取りたかった。俺は即自室に戻り、布団をかぶって吐き気を堪えていた。

 海で吐けばよかったんじゃ? とも思ったけど、それは無理だ。あんなに喜んでいる人たちに水を差せない。想像しただけでも空気が死ぬ事が解る。


 皆:ぉおおおーやったぞー!

 俺:ゲボゲボゲボ

 世界:(耐えがたい沈黙)


 しばらく吐き気が治らなかったため、夕食を断り、一人でベットとトイレを往復していた。まあ次の日には良くなっていたが。エルさん達には心配かけちゃったな。でもね、ただの船酔いだからそんな泣きそうな顔しなくていいんですよ?


 

 俺はふうっと息を吐くと、ステータスを開いた。


ステータス

 名前:カグヤ

 性別:男

 LV:1

 種族:ハーフエルフ

 職業:シーフ(熟練度-2)

 称号:転移者

 スキル:

 異世界言語LV-M

 身体強化LV-18

 索敵LV-10

 隠密LV-10

 魔力強化LV-90

 魔力回復量増加LV-160

 火魔法LV-15

 風魔法LV-15

 土魔法LV-15

 水魔法LV-40

 神聖魔法LV-60

 精霊魔術LV-1


 イカちゃんとの戦闘では攻撃はしていないし、エルさん達とグループを組んでいたわけでもないのでレベルは上がっていない。まぁレベルが上がっていたらスキルレベル上げずらくなるから、別にいらん。

 スキルの方は魔法系は魔力が余ってるときにちょくちょく使っていたから、結構上がっているが、身体強化とかはあまり上がっていない。


 身体強化、索敵、隠密は船と町中じゃ早々あげられないしな。妥当な数字だろう。いや……ゲームと同じなら隠密は町中でも上がるか。まぁ後でやってみよう。

 まぁスキルは基本的にレベル1000まであがるから、どれもこれもまだまだ時間が必要か。


 なぜかシーフの熟練度が上がっていた事は驚いたが、多分身体強化、索敵、隠密が上がっているからそのせいだろう。レベル上昇か、身体強化と隠密と索敵スキルレベル向上で一緒に上がっていくしな。さっさと熟練度を30まで上げてハイシーフに転職してしまおう。


 ステータス内で魔力回復量増加がやたら高いのは多分、中級MP回復量上昇ポーションを使ったおかげだろう。MPが自然回復すればするほど、上がっていくステータスだから。


 魔法を使う→中級MP回復量上昇ポーションで自然回復量を増やす→いっぱいMP回復→得る経験値UP

みたいな感じに。


 まあ、こんなことある程度ゲームを進めたプレイヤーなら皆やることだろう。それもあってか中級MP回復量上昇ポーションは高需要で露天に出まくってたんだし。それも結構な安値で。

 上級MP回復量上昇ポーションだけはそれなりに高いから、本当に上がりにくくなる後半、魔力回復量増加がLV-700まで上がったら使うつもりだが。まぁ昔の俺は大量に仕入れてたみたいだから、めっちゃ余るだろうけど。


 


 俺はベッドに横になる。このベッドもやっぱり硬い。そして出された料理はあっち、イナバで食べた料理ほど美味しくは無い。

 まぁ明日にはアマウズメを出てミカヅチに向かうのだから今日辛抱するだけで良いのだが。

 俺は布団をかぶると目を瞑る。明日は食品を買い込んでミカヅチまで行こう。

 そういえばタクシーのような送迎の馬車とかあるのかな? あるなら利用しようかな。お金はまだかなりあるし……。


+----+----+----+----+----+----+----+----+----+


「おいおい、お前さん冒険者だろ? 普通『護衛します』じゃねーのか?」

「いえ、私まだ戦闘出来ませんし……護衛は欲しいくらいです。それとなるべく早く楽にミカヅチに向かいたかったもので……どこかの馬車に乗せてもらえないかと」

「まぁ、確かにじょうちゃんみたいなのが戦えるとは思えねえな。見かけは完全に貴族だしな」


 ギルドのオッサンは俺の全身を見つめてため息をつく。

 彼の目には白く高価なローブをはおった銀髪蒼目美少女が見えるだろう、それは私です。ちな男です。やっぱギルドカード見るまでは女しか認識されませんよね。


「どうにかなりませんか」

 俺は上目づかいでおっさんを見つめる。おっさんは心もとない髪の頭をガシガシと掻くと言う。

「うーん、じゃぁ商人ギルドに行って、馬車でミカヅチ行く人に直接交渉して来い。そんな遠くねぇし送迎サービスやってとこなんてないだろうしな。残念だがこっちで護衛依頼は出せるが、馬車は出せねぇぞ」

「はい、無理言ってすいませんでした。ありがとうございます」


 俺が馬に乗れるんだったら馬に乗るのもアリなんだがな。乗りこなすまでいつまでかかるやら……。

 俺はくるりと身をひるがえし、ギルドを出て行く。そしてある事を思い出しギルドの中に入った。

「ん、どうした?」

 俺は頬をポリポリ掻きながらおっさんに言う。

「すいません、商人ギルドってどこですか?」


 いい加減学習しろよ俺。



 商人ギルドは冒険者ギルドからそう離れていないところ、歩いて数分の所にあった。俺は綺麗な冒険者ギルドのような建物に入る。


「やっぱ市役所にしか見えねーぞ……」


 俺は総合受付と書かれた紙が貼られているテーブルの前に行く。そこには若くスリムな女性が受付をしていた。また黒い髪からひょっこり覗く二つの角が、彼女を鬼族だと教えてくれる。


 鬼族と聞くと日本人であれば、筋肉ダルマみたいな物を想像してしまうかもしれないが、『Truth World』の世界においてはそうではない。確かに筋肉ダルマ、筋肉センセーション、筋肉デスティニーみたいなやつも居る。でもそれは一部で、パッと見は一般人のように華奢だ。ある種族スキルを使えば話は別だが。


 現に目の前の女性は華奢で、少し垂れ目。そしていつぞやの冒険者ギルドの職員のように営業スマイルを顔に張り付けている。


「こんにちは、今日はどのような御用件で商人ギルドへ?」

「実はミカヅチまで移動する行商人や運搬する方が居れば、ご一緒させていただきたいなと思いまして……」

「そうですか。一応情報を提供されてる方にギルドから確認は取れますが、1日ほどの時間と、手数料がかかりますがよろしいですか?」


「え゛? 結構時間がかかるんですね」

「セキュリティーの関係上、ですね。それに支店があって定期的に移動する方はともかく、突発的に行く方に関しては、基本ギルドに報告しません」


「そうなんですか?」

「そう言った情報がもれたらどうなると思います?……山賊や盗賊に待ち伏せされるんですよ。アマテラス大陸は犯罪は少ないと言われていますが、ゼロではありません」

 確かに誰がどこに行くかの情報があれば、待ち伏せしてしまえばいいもんな。


「失礼、少々よろしいかな、お美しいお嬢さん?」

 そう言って一人の男性が顔を出す。そして俺のそばに寄って来た。

 俺の隣で立ち止ったのはひげを生やしたダンディおじさんだった。

「ああ、クラウスさん」

「やあ、アイちゃんは久しぶりだね。それで……君はミカヅチまで行きたいんだって? ああ、すまない、会話が耳に入ったものでね」


「そうなんですよ。私馬に乗れないもので、馬車に乗せていただければと思いまして」

「荷物で少し手狭になってしまうが、それでも良ければ10000エルで送っても構わないがどうだ?」

 クラウスと呼ばれたダンディは顎に手を当てて俺に問う。


「本当ですか? 是非お願いしたいです。あ、私アイテムボックス持ちなので、信頼してくださるなら私がいくらか荷物お持ちしますよ?」

 クラウスさんは手をぽんと叩き、嬉しそうな表情をした。

「アイテムボックスだと!? 失礼、驚いて声が大きくなってしまった。もしそれなら、ある程度の荷物を持ってくれれば無料で良い、むしろこちらからお願いしたいくらいだ」

「ええ、いいですよ。では、名乗り遅れましたが、私カグヤって言います」


 俺はアイテムボックスからギルドカードを取り出すと彼に渡す。

「本当にアイテムボックス…………って。ん?」

 クラウスさんはギルドカードを見て目を丸くする。そして一度服の袖で目をこすり、再度ギルドカードを見つめる。

「………………君、男だった、のか?」


 驚愕した受付嬢は可愛いね。


「あれ、言ってませんでしたっけ?」


 スイマセン。実は確信犯です。


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 クラウスさんに出会った次の日、俺はいろんな店から食品を買い込んだ。

 そしてクラウスさんと合流しクラウスさんの荷物を預かる。クラウスさんは

「ありがとう、本当に助かるよ。此処まで持ってもらったんだ、ミカヅチに着いたら報酬を払おう」

 と言ってくれた。報酬、嬉しいです。


 その後護衛してくれる冒険者に簡単な挨拶をして意気揚々と馬車に乗り込んだ。


 ふははははは。これで楽してミカヅチまで行けるぞ! お金も稼げるしアイテムボックス様様だな!

 ああ、楽だ。本当に楽だ。ケツが割れそうなほど痛いけど、それだけだしな。

 いやー。もうミカヅチまできたか。これでゴーレム寺院行ってスキル上げ出来るぜ!


 ……なんてのは俺の願望で、現実なんてそうそう上手くいかない。



「おい、どうしてこうなった?」


 

 アマウズメからミカヅチの道中ば。馬車はこわもてのお兄さんに囲まれていた。

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