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異世界奇想曲  作者: 入栖
第壱章 ××××(章タイトルは章終了後に書きなおします)
33/44

獣化の影響


 おい、カグヤ、カグヤ!

 俺は肩をゆすられ、視界に光が戻る。

「お、エルか。どうした? そろそろ夕食か? なんか今日疲れちゃってな……食べたらすぐ寝るよ。それとささっき俺の体が女体化する夢を見てな……ははっ笑えるだろ?」

「き、気をしっかり持て、ここは家じゃないぞ?」


 彼女に肩をゆすられ、ぶんぶんと頭がシェイクされる。そしてこの胸に付いた果実もプルプル震える。それと頭の上についた耳が風を受けているのがよくわかった。

 そうだここは現実である。頭の上に付いた耳も、このもふもふの尻尾も、この二つの巨峰も現実である。


「そ、そうだよ、現実逃避している場合じゃない……!」

 普通に考えればこうなってしまった最大の原因は? そんなのどう考えても獣化だ。獣化以外に考えられない。だったらどうすればいい? なぁに簡単だ獣化をとけばいいんだ。

「じゅ、獣化を解除しよう」

 俺は心の中で解除を念じる。


 それはすぐに効果となって俺の体に現れた。少しづつ体中から魔力と、力が抜けていく。

 よし……! これなら多分獣化が解除されてるぞ。


 そしてそのまま力が抜けて行き、こんどは胸が小さくなって…………いくかと思ったがそんなことはなかった。


 たしかに力は抜けた。だが相変わらず耳と尻尾は狐で、俺の胸には巨峰が存在していた。


「っておい! なんでだぁぁぁぁあああー!」

 ありえねぇ、ありえねぇよ! 待て待てどうしてどうしてだ。

 俺は頭を抱え地面に座り込む。ああ、何故、なぜ、なじぇぇ……。


「たたた、た、大変! どうしようエル、ツバメ! カグヤがカグヤが、魂抜けちゃってるぅぅ!」

 すると颯爽とツバメが俺の前に立った。そして腕を掲げる。


「魂か。ここは拙者に任せろ……はぁぁぁ、悪・霊・退・散!」

 そう言ってツバメは手で十字を切り、俺のほっぺを叩く。

「おい、ツバメ、カグヤの魂は悪霊じゃない! こんな所でボケるなっ!」


「ははははあ、はぁ、はぁ、よじれるぞ、腹がよじれるぞ……ぷふっまた登ってきおった……あは、あははははは……」


 しかしツバメの攻撃は俺にちゃんと効果をもたらしていた。

「いや、助かったぜツバメ、ちょっと意識が飛んでいたようだ、が……おかげで戻ってこれた」

 そう、叩かれた痛みで飛びかけていた意識が戻ってきた。まだすこし痛いけど。


「ふふん、拙者の凄さが分かったか!」

 いつもなら多分ぼろくそにツッコミを入れていただろうけど、今日は意識が戻ってきたから結果オーライだ。今日だけだからな。


 とそこで俺はある事を思い出した。 

「そうだ、ら○まはお湯掛ければ一瞬で男に戻ったな……。だとすると。そうだ、お湯か……お湯かければ元に戻るんじゃね?」

 そうだよ、あのマンガではそれで戻ったじゃないか。なら俺だって元に戻れるじゃないか。


 俺は立ち上がると腕を上げる。そして魔法を唱えようとした瞬間、後ろから羽交い締めにされた。そして今度はエリーゼが前に立つ。

「ちょ、待ちなさい! カグヤ、あんたなんで魔法使おうとしてんのよ! 何言ってるかよくわからないけど、お湯掛かけたって元には戻らないわよ!」


 羽交い締めにしてきたのはエルだった。

「そうだぞ、カグヤ。どうどう、落ち着くんだ。お前は混乱している!」


 エルに言われて俺はハッと我にかえる。

「そ、そうだよな……こんなことで男に戻るわけないよな……」

 じゃあどうすればいいんだ? じゃぁどうすればいいんだよぉ。

 抑えつけられて数十秒が経過し俺は体から力がぬける。どうやら少し落ち着いてきたようだ。


「ふぅ……すまん皆、俺はどうやらかなり動揺していたようだ……。少し落ち着いたから離してくれ……」

 そう言うとエルが恐る恐る腕を離す。俺は頭を抱えてその場にしゃがみこんだ。

 さて、どうすればいいんだ? 考えるんだ。


「なーに、大丈夫じゃ。安心せい!」

 と俺が悩んでいると、不意にツバメが俺に声をかけてくる。その声はとても優しくてまるで励ますような……

「カグヤ殿は下着、そう胸当てをどうすべきか悩んでおったのじゃろ、大丈夫じゃ、拙者が良い物を選んでやろう! なあにその時つけ方も教えてやろうぞ!」


「って、ん゛な事は心配してねぇよ! コレを引っ込ませる方法を考えてたんだよ!」

 クソが……! 一瞬でも励ましてくれるかと思った俺がバカだった。

「はーっははっはは、げほぉげほぉ、はははははああ、ごほぉぉごほぉぉ。わ、わらわを笑い殺す気か、グホォ」


 とそこで俺はある事に気が付いた。原因は獣化、それは玉藻前の加護によってもたらされた。なら……玉藻前に頼めば元に戻してくれるんじゃないか?

 うん。そうだよ。座布団の上でダンゴムシみたいに転げまわってる、このムカツク狐に聞けばいいんだよ。


 そうして俺は立ち上がると笑い転げた玉藻前が元に戻るのを待った。


+----+----+----+----+----+----+----+----+----+


「なに、ほっとけば数日で元に戻るじゃろ」


 落ち着いた玉藻前に尋ねて、帰ってきた言葉はそれだった。

「数日?」

「ああ。今はただ加護と獣化によってその女性的部分が活性化しているだけであろう? ほっとけば元に戻る。それにしてもまさか性別が変わるとはな……わらわも想定外じゃぞ、くくっ。最高よのう!」


「……気にいっていただけて何よりです。……加護はありがとうございます。獣化は多分、ほとんど使いません。正直使いたくありません」

 女の子ぽいのはまだ良い。だけどな全部が女の子になるのは勘弁だ……。


「うん、それはおぬしの好きにせい。さてそれとだカグヤ。わらわはカグヤが大層気にいったぞ!」

「はぁありがとうございます……」

「それでじゃ、コレをお主にやろう」


 そう言って彼女がは懐から一つの物を取り出す。鋭く尖った黒い棒のようなものだった。その棒の片側には何かの花を模した飾りと小さな鎖が付いていて、その先鎖の先には青い宝石がつけられていた。

「それは……?」


「なに、ただのかんざしぞ。この宝石は主の魔力を強化してくれるじゃろう。そこらへんにある杖なんかの数倍は効果のあるアイテムじゃ、使うがよい」

 簪、か。頭に付けておけばわざわざ手に持たなくても済みそうだ。いつもなら短剣で両手埋まってしまうしな。だが一つ問題がある。

「ありがとうございます。でも俺、簪のつけ方を知らないんですが……」

「まぁ、男ならそうじゃろ。どれ、わらわが教えてやろう、背を向けい」


 俺は背を向け、アイテムボックスから鏡を取り出す。すると俺の背中に玉藻前のたわわに実った果実が触れる。あの、意識をそっちにもってかれて、それどころじゃなくなりそうです。

「本来ならば髪全部を一つにまとめてしまった方が楽ではあるが、お主の後ろ髪は流した方が良いじゃろ、その方が映える」


 彼女はそう言うと俺の左右両側の髪の毛を掴むと、それを後ろに持ってくる。そしてぐりぐりとねじり合わせるとぶすりと刺してそこからさらにねじって……いや複雑すぎだろ。一回じゃ覚えれねぇ無理だ……。


「ほれ、これで完成ぞ」

 彼女は一歩後ろに下がると俺に笑みを浮かべた。

 俺は鏡を見つめる。俺の銀色髪は後ろにお団子の形でまとめられていて、その中心に、この黒い簪が突き刺さっていた。


 すげえな、よく落ちないよな。よくもまぁ一本の棒でこう上手くまとめられるもんだ。


 俺は軽く頭を振っても簪が落ちる気配は無かった。

「ありがとうございます」

 俺は振り返って礼を言う。しかし、伝えなければならないだろう。

「あと、その申しあげにくいんですけども……」


「カグヤよ、おぬしはわらわに敬語を使わなくても良いぞ? 許可する、ほれ、さっさといえ」

「じゃぁ、1回じゃ覚えられなかったんでもう一度教えてもらえれば……」

 と俺が言った瞬間、後ろから声が聞こえた。


「なに、大丈夫じゃぞカグヤ殿、拙者が簪のつけ方を知っておる。玉藻前殿。あとは拙者に任せてくだされ」

「そうか、頼んだぞ鬼の子……ツバメだったかえ、カグヤは本当に簪が映えるからのう。是非付けてもらいたい」

 確かに自分でも似合っていると思う。凄く可愛いです。あれ、もしかして俺ってナルシスト? まぁ本当に可愛いから別にいいや。

 

「ええ、肌身離さずつけていようと思います」

 それに一応武器だからね。


 そう言うと玉藻前は嬉しそうに頷いた。

「うむ……して、おぬしらはこれからどうするのかえ?」


 これからどうする? そんなこともちろん決まっている。加護を貰って新たな俺に変化したんだ。ならば……。


「もちろん、元に戻るまで引きこもります!」


 冒険? ダンジョン? そんなの後回しだ……! 行く奴の気がしれない。


 

 

 それから1日ぐらいして俺の獣耳と尻尾は消えて、見慣れたエルフ耳になったが胸は相変わらず膨らんだままだった。それから2日後ようやく俺は元の姿に戻ることができた。

 とても安堵したことは語るまでもない。嬉しすぎて踊りだしたくらいだ。


 そう言えばだが、ステータスを見たら『玉藻前の加護』ではなく『玉藻前の寵愛』になっていた。どれだけ気に行ったんだよ。俺は愛され過ぎじゃないだろうか?



カグヤは3パターンの形態を取ることができます。

①男の娘カグヤ(通常状態)

②狐耳&狐尻尾の巨乳カグヤ(獣化)

③エルフ耳の巨乳カグヤ(獣化解除1日後~元に戻るまで)


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