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異世界奇想曲  作者: 入栖
第壱章 ××××(章タイトルは章終了後に書きなおします)
30/44

神都アマテラス

「姉さん可愛いし、おまけするよ」

「わぁ本当ですか! 八百屋のお兄さんありがとうございます!」

 ちょろい。


「お、カグヤちゃんか! 今日も綺麗だね! そうだ、これ持ってきな」

「良いんですかぁ!?」

「なぁに、いつも買ってくれてるだろ? それにな今日はいつもよりいっぱい取れたんだ、もってけ」


 俺にお肉を差し出す、多分中年のおじさん。ドワーフと言う種族のため、年齢が詳しくは分からないけれどおじさんと呼んでいいくらいまでは年がいってる筈。多分そうだろう。

「うわぁぁ! 肉屋のおじさんありがとうございます。また買いに来ますね」


 髪をかきあげながらおじさんを上目づかいで見つめる。笑顔を添えるのがポイントだ。

 すると彼は俺から視線をそらした。その顔はほんのり赤い。

「お、おう! ま、まってるぜ!」

 ちょろい。ちょろっちょろである。


 肉屋のおじさんからいただいたお肉をアイテムボックスにしまい、ふと横を見る。そこにはローブのフードをかぶったエリーゼが、呆れたような視線を俺に向けていた。

「あんた買い物するたびにそれなの?」

「当り前じゃないか、相手が男だったらとりあえず可愛い子ぶる。だっておまけしてくれるんだぞ? 逆に問おう、何故お前はしないのだ」


「いや、しないわよ……」

「それに俺だけじゃなくてツバメもこんな感じだろう。まぁあいつは憐れんで恵んでもらっているように見える時もあるが……」

「否定できないわね……じゃぁ食材も揃ったし帰りましょ。多分エルとツバメも訓練終えてるでしょうし」

「そうだな。それとほれ」


 俺は手を差し出すと、彼女は手に持っていたいくつかの香辛料を渡してくる。俺はそれをアイテムボックスに突っ込むとにぎわい始めた商店街を歩き出した。


+----+----+----+----+----+----+----+----+----+


「あ、おかえりなさいお姉さま!」

 エリーゼの家に帰ると真っ先に走って俺に寄ってきたのは、ビーチェだった。彼女はあのダンジョンから助け出した後、異様になついた。多分、俺が凶戦士バーサーカーをマスターしているからだろう。そう思っておこう。お姉さまと呼ばれているのは気にしたら負けだ。

 

「ビーチェちゃん来てたんだ? アレ、もしかして訓練の時間過ぎてる?」

「いえ、まだです。速くカグヤお姉さまにお会いしたくて……」

「は、はは……」


 現在俺はビーチェにけいこを付けている。それは彼女にお願いされたからだ。さほど手間でも無いし、まぁいいかと思い軽いノリで受けたら、どこぞの女騎士と女侍も混じってきた。いいんだけどさ。


「お姉さま、本日もダンジョンへ行かれるのですか?」

「今日は行く予定は無いよ」

「では、どうされるんですか?」


 期待に満ちた目で見られても困る。どうしろって言うんだ。


「今日は薬の調合だけれど……何かしたいのかな?」

「はい、その、お姉様と一緒にお買いものにいければと……」

 ちら、ちらと見てくるのはビーチェ。だけかと思いきやツバメも。多分彼女も出かけたいのだろう。


 現在ツバメは外出するときは必ず誰かが付く事が義務になっている。前に買い物してくると言って、町から出そうになっていた事があったからだ。


 ちなみにその時はアイス屋さんに行こうとして、森の中に入りそうになったらしい。うん、俺には理解できない。森の中のどこにアイス屋さんが有るのか小一時間問い詰めたかった。んな所に誰も買いにいかねえよ。そんな店あるとしたら赤字まったなし。


 前回のツバメの外出時には、たまたまビーチェ達がいたから何とかなった。だけどいなかったらを考えると最悪を想像していた。迷子になったツバメを探すのは、魔王を探すのよりも難しいんじゃないだろうか。


「いいよ、行きましょう。おいツバメ、もちろん来ても良いけど、お前変なの買うつもりじゃないよな?」

「拙者、無駄使いは控えておろう!」


 そう言うが、ツバメには前科がある。前は渡したお金全部使って茶葉を買おうとしていた。あまりにも必死に食い下がるので後で『仕方ねぇなぁ、少しだけだぞ』と言って俺が購入してあげたことがある。


 ちなみに飲んでみたら本当に美味しくて、後でこっそり予備を買ってアイテムボックスに入れた。これはツバメには言えない。


 その様子を見たエルは口には出さなかったけど『あんなにツバメに言っていたのに』なんて目で俺を見ていた。だっておいしいんだもん。ツバメは方向音痴ではあるけれど味覚は音痴ではない。


「ちょっとアマテラス神殿にもよらせてもらうけどそれでも良いなら行こう。ご飯食べたらね」

「もちろんです! わぁ、お姉さまとお買いもの!」

「うむ! 拙者ほしいものがあったのじゃ」


 無駄遣いするなよと言っているのだが彼女は大丈夫だろうか……。ツバメはコップにお茶を注ぐとそれをビーチェの前に出した。


「あれそう言えばエルは?」

 ツバメはお茶を入れる手を止めることなく俺に返答する。

「エル殿は拙者と訓練終わった後に騎士団の支部へ向かうと言っておったぞ。なんでも休暇を延長するだとかいっておったのう」


 ……おい、どれだけ休めるんだ騎士団。大丈夫か? ホワイト企業すぎて永久就職考えるレベル。給料安定してそうだし。


「そうか……ご飯どうするか言ってたか?」

「すぐ戻ると言っておったし食べるじゃろう」

「じゃぁ作って待ってるか、ビーチェちゃんはご飯食べて来た?」


「あ、ハイ軽く」

「お腹に余裕があるならビーチェちゃんの分も……」


 とエリーゼに視線を向ける。軽く手を上げていたので大丈夫だろう。

「一緒に作ってくれるみたいだけど?」

「はい! 是非お願いします。エリーゼさんの料理、ほっぺたが落ちそうなほど美味しいですもん」

「べ、別に大したことないわよ」


 ビーチェには慣れたエリーゼだけど、真正面から言われるとやっぱり照れるのは相変わらずのようだ。お前照れると結構な確率で手元狂うんだから、しっかり集中してくれ。まだ料理をまだ始めていないから良いものの、料理中は危ないから気をつけろよ。てか手伝いに行こう。

「エリーゼ、今日は俺が手伝うよ、ビーチェちゃん少し待っててね」

「ああ、お姉さまの手料理……!」

 彼女は恍惚としているが大丈夫だろうか? 危ない宗教にでも入信してないだろうな。


+----+----+----+----+----+----+----+----+----+


「この世界に来て何カ月もたったのに初めて武器屋に来たな……」

「? お姉さまどうかされたんですか?」

「ん、何でもないよ」


 俺らは食事を終えて軽くビーチェに稽古を積んだ後、彼女の行きたかったらしい武器屋に来ていた。曰く、私に合った武器を見てくれとのこと。


 ちなみにエルフの町である神都に凶戦士バーサーカーであるビーチェ向きの武器はあまりないのではないかと思っていたが、そうでもないらしい。斧は結構揃っていた。


 思わず『いろいろ売ってるんだな』とポツリとつぶやいたら、横から『森では斧は必需品じゃろ』とツバメに言われた。言われてみれば確かに斧使うよな、木の伐採する時に。なんで気がつかなかったんだろう


 つかエルに指摘されるのなら『そうだな』で済むのに、ツバメに指摘されると絶望に似た衝撃を受けるのはなぜだろう。普段のおこないかな。


「そうですか? ……ではアレはどうですか?」

 彼女が指さしたのは武器屋の壁にぶら下がった一本の斧。三日月の形をした片刃の鋼鉄の斧、クレセントアックスだった。確かに物はよさそうであるが。

 

「うーん、ビーチェちゃんは今時点ではもう少し軽そうなあっちのバトルアックスでいいと思うよ? もしあとレベルが10くらい上がって筋力が付いたら、変えても良いと思うけど今はコレで十分」


 俺は近くにあったバトルアックスを片手で持つと、ビーチェに渡す。ビーチェは受け取ると一瞬ふらついたがすぐに体制を立て直した。


「……お姉さま筋力も凄いんですのね」

「最近レベルアップしたからね」


 そう、俺はダイダラボッチを倒したことでレベルが上がった。それも2つも。おかげで基本ステータスが上昇し、所持スキルによって比例するようにステータスも上昇した。とはいってもツバメに筋力は勝てないし、防御ではエルに勝てない。速さと魔力はメンバー随一ではあるが。


「私も早くお姉さまみたいに強くなりたいです……」

 そう言って斧の柄を握るビーチェを見て俺は小さく笑った。

「ふふっ大丈夫、すぐに強くなれるよ。少し振ってみて」

 そう言うと彼女は武器屋に隣接していた演習場へ行くと武器を振る。俺はその近くまで歩くとビーチェを見つめる。


 もし武器が彼女に合うようだったら、前に斧を借りたお礼に奢ってあげようかな? 俺が結構雑な扱いをしたせいでビーチェの斧が少し痛んでしまったし。もちろん修理費は出したものの俺の心が晴れてない。


 俺がそんな事を考えながらボーっとしていると、ブウン、ブウンと斧をふるう音が聞こえる。

 武器を振っているビーチェを見る限りでは、少し重さに慣れていないようだったが、慣れれば以前の斧よりも戦いやすくなるんじゃないかと思う。

 

「以前のより少し重いですけど……何とか使いこなせそうです。でもちょっとお金が心もとないので次来たら……」

「そっか、お金があるときで良いと思うよ?」

 『ビーチェちゃんに今買われたら困るし』という言葉を飲み込むと、斧を受け取って一旦元の場所に置いた。すると後ろから声が聞こえる。

 

「カグヤ殿~こっちの短剣はカグヤ殿にピッタリじゃないか?」

 そうを呼ぶのはツバメだった。俺とビーチェは振り返ってツバメの所に行く。彼女が見ているのはダガーだった。

「ダガーか、少し欲しいかも……」


 以前使っていたヘイストダガーと初心者ダガーだが、ヘイストダガーの作りが良かったお陰か、ほとんど摩耗してない。しかし初心者用ダガーは限界だった。

「1本買ってくか」


 俺は適当にとって鑑定をする。どれもこれもゲーム時代の武器に比べたら雲泥の差があるものの、今使っている初心者ダガーよりはマシである。

「武器の事も少し考えないとな、しっかりした短剣だったらヤマトに行くのもありかもしれないな……」


 俺はその中から握りやすそうな1本を手に取ると、店員のエルフのお兄さんに出す。そしてこっそりあの斧も購入し二人と一緒に店を出た。


「次は何処へ行くんじゃ?」

「アマテラス神殿だよ」

「うむ、ではついでに茶菓子を買おうぞ! 最近少なくなってきたんじゃ!」


 そう言うツバメは、意気揚々と明後日の方向へ歩きだそうとする。そんな彼女の腕を俺はがっしり掴んだ。

「なんじゃ? さびしいから腕を組んでくれとな。まったく、仕方ないのう」

 そう言って、やれやれと言った様子で俺の腕を掴んでくるツバメ。

「おい違うにきまって……」

「えっ?」


 と俺が更に追い打ちで色々言おうとしたが、それはやめた。小さく声をあげた人物がいたからだ。それはツバメ、ではなく反対側にいたビーチェである。彼女は俺に両腕を伸ばしていて……。


「ビーチェちゃん……ツバメの戯言は基本気にしなくていいから……」

「なんじゃ、照れなくてよいのに」


 お前はさっさと腕を離せ。ビーチェが羨ましそうな目で見てるんだから。

 しぶしぶ手を離すツバメを見て俺はため息をつく。戦闘では英姿颯爽えいしさっそうで非常に頼りになるのだが、町中では心配が尽きず目を離すと危ない。


 お買い物に来ている10歳くらいの子供が、ツバメより大人に見えるのは気のせいだろうか?


+----+----+----+----+----+----+----+----+----+


「こんなもんかな、ありがとうカンナさん」

 アマテラス神殿の一部屋に転移魔法陣を設置し終えた俺はカンナさんに礼を言う。コレでいつでもここには戻ってこれるようになった。

 

「転移魔法陣、コレでいつでも私に会いに来ていただけるんですね……!」

 本当はアマテラアスに会うために設置したのだが、カンナさんに凄くうれしそうな顔で言われてしまった。冒険が始まったら忙しくなりそうだし、あまり余裕はないと思う、のだが……。

 それを言おうとしてカンナさんの顔を見つめる。


 そこには何も言わない俺に、不安そうに上目使いで攻めてくる黒髪エルフが。抗える事ができるだろうか? いや無理だろう。この状況で抗うと言った奴は俺が殴る。ダンジョン入ってない限り最低でも一週間に一度くらいには来よう。いや毎日来ても良いぐらいだ。黒髪のエルフ破壊力ヤバい。

 

「来れるときには来るようにします。今日は急に押しかけてごめんなさい。大丈夫でしたか?」

「ええ、神都の領主が合いたいと言っていましたが、明日にずらさせたので、全然問題ないです! もちろんアマテラス様の神使しんしであるカグヤ様が優先です」


 へぇ神都の領主ね、なら大丈……ってそれかなり大問題じゃねぇか! 俺ただ魔法陣設置するだけだぞ、別にいつでも良いわ。こんなこと領主より優先させんじゃねぇよ!

「そ、そうですか……ありがとうございます」

「? お礼は必要ありませんよ。それで今日は終わりですか? 良ければ一緒にお茶を……ツバメさん達もそこでお待ちですし」


 手すきになるツバメとビーチェは別室で待機だ。多分今頃超高価な茶が出てきてツバメのテンションが上がってるんじゃないかと思う。

「お茶は良いんですけど、その前に一度アマテラスに会って行っても良いですか? いやそもそも会えるか……?」


「はい、カグヤ様ならもちろん会えるでしょう。ではこちらへ」

 と以前案内してもらった水晶のある部屋に入れてもらうと、少しして以前と同じように俺の体は転移した。



 転移した俺の目の前に現れたのは、リクライニングチェアに座ったアマテラスだった。彼女は空色の飲み物を片手にスナック菓子をつまんでいる。

「おひさ!」


「ノリ軽いな……つか、以前は爆弾投下ありがとう。ものすごく大変だったからな……」

「絆が深まったでしょう?」

「あの場をごまかすのに俺がどれだけ苦労したか知ってるだろ……」

「口だけ謝ったじゃない」


 こいつに何か言っても無駄な気がする。それは気のせいではないはずだ。

「まぁ、それはもういいや。じゃ、俺あと2、3日で神都アマテラスから出てくから。玉藻前ってゲームと同じ場所……カグツチにいるんだよな?」

「ええ、そうよ。あ、お土産期待してるわよ。ついでにカンナの分もね」

 カンナさんの分は別にいいが、こいつの分か……。俺は目を細めてアマテラスを見る。

 笑っている彼女を見るに、沈黙と視線の抗議はこれっぽっちも効果がないようだ。


「まぁまぁそんな顔しないで、ほうら、スナック菓子あげるから。この世界じゃ貴重でしょう?」

 ピクリと俺の体が反応する。俺は伸ばしかけた右手を、反対の手でつかんだ。

 危なかった。

 

 確かに貴重ではある。ジャンクフードも好きな俺にはスナック菓子とか垂涎ものである。しばらく全く食べてないからな。

 だが、それにつられる俺ではない。


 ただでさえ面倒なこと頼まれてるのに、更に面倒を増やしてどうするんだ。しかも内容がお土産だと? 世話になってる人ならもちろん良いけど、お前には嫌な思い出しかわいてこない。買ってやる必要性も感じないしお断り択一だ。

 

「ちょっとお前な、俺がそんなのにつられる訳ないだろう。ことわ……」

「コーンポタージュ味もあるわよ?」

「……急に買いたくなった、よし買ってこよう」


 ムカつくけど背に腹は代えられない。俺はアマテラスから目をそらしながら、コンポタの袋を受け取る。それをアマテラスはニヤニヤしながら俺を見つめていた。

「ふふふっ美味しいわよね」


 コーンポタージュを出されたらそうするしかないじゃないか。

 それとエリーゼの作るコンポタも絶品なんだよな。明日コンポタねだろうか。


「そうそう。ちなみにカグツチダンジョンには魔王のタマゴないから。あそこ玉藻前が管理してるし」

 そう言うと彼女は空色の液体が入ったクラスを傾ける。

 

「へぇ、じゃぁ近くのダンジョンで魔王のタマゴがある可能性があるのは、帝都テラスのダンジョンかヤマトのダンジョン、あとはミカヅチダンジョンだな」


 帝都テラスはエルが詳しいだろう。あそこの貴族らしいし。ヤマトはツバメがいるから大丈夫……とは言えないな。うん、道案内させたら違う町につきそうだ。ミカヅチは一度行った事があるから俺が分かる。


 ミカヅチからここまで来たのにまた戻るのも少し面倒ではある。どうせだったら船経由でテラス行くかヤマト行った方が楽だし。楽だし。


「どのダンジョンに行くかは貴方に任せるわ。一応テラス帝国の全てのダンジョンはあたしの配下が管理しているから、可能性は低いけどね」

「そうなのか?」

「ええ、でも裏切りが有るかもしれないし。絶対にないと言えるのはヤガミダンジョンね」

「ヤガミダンジョン? 聞いたことがないんだが……」


 一応ゲーム内の全てのダンジョンに入ったことが有る筈なんだが、ヤガミダンジョンなんてのは聞いたことがない。新しくできたダンジョンなのだろうか?

「あー。ゲームには確かにないわね。あそこはあたしが一番信頼してる奴が運営してんのよ。一風変わったダンジョンだから遊びに行くのは良いかもしんない。ダンジョンマスターに話は通しとくから」


 話を通すって言われてもな。話を通してどうにかなるものなのだろうか。

「まぁ多分直近はヤマトかテラスのどっちかにいくよ。ゲームではよく潜ったし、何より武器が欲しいし」

 種族と職業を考えれば、ヤマトやテラスダンジョンで入手できる武器が、俺達パーティに今一番欲しいものだろう。

 

「がんばってね。……じゃぁせっかく来たんだし、もう少しゆっくりしていく?」

 そう言うとアマテラスは飛んでいる虫を払うように手を振った。すると彼女の横にリクライニングチェアとテーブルが召喚される。

「あー、カンナさん待たせてるんだよな……」


 そう俺が言うと彼女は一瞬、眉根を下げたような気がした。それはただの気のせいだったかも知れない。

「ふぅん、じゃぁ今送り……」

「まぁでも、少しくらいゆっくりしてっても良いだろ。隣お邪魔するぜ」


 彼女が言い終わる前に俺は自分の言葉をかぶせる。気のせいかもしれないけれど、まぁせっかくイスまで出して誘ってくれたんだ。それなら少し話をしよう。


 アマテラスはにっこり笑うと腕を振るう。テーブルの上に彼女が飲んでいる物と同じ、空色の液体が入ったグラスが召喚された。

 

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