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異世界奇想曲  作者: 入栖
第零章 序曲 - プロローグ -
18/44

しんとあまてらすへのみち 3

「ほれ見ろ、拙者の言うとおりじゃったろ?」

「うそ……だろ……」


 俺達の目の前には少し開けた場所に木で出来た一軒の家があった。

 俺がツバメの意見を散々却下して散々歩きまわって何も見つからなかったのに、ツバメに道案内をさせたら一発でこの結果だった。なにそれおかしい。地球が反対に回ってるんじゃないかって、本気で考えるレベル。


「しかし、不可思議じゃのう。他には家は見当たらんぞ?」

 確かに彼女の言うとおりなぜか一軒だけぽつんと家が立っている。周りを見渡しても木々がうっそうと茂っているだけだ。何このボッチ家。

 

「だなぁ、だとするとここは空き家か? それにしては井戸あるし、物干しざおとかあるし、生活感あふれてるんだが……」


「どちらの可能性もありそうでござるな、まぁ人がおれば道を聞けばよいし、空き家なら中で少しやすませてもらおうぞ……ふふっ」


「どうしたんだよ、急に笑い出して」

「なぁに、最近カグヤ殿が拙者に対して気を使わない話し方をしてくれるのでな、それがすごくうれしくての。思わず笑みがこぼれてしまった」


「そういわれれば、そうかもな」

 なんかもう気を使わなくていいようなそんな感じ。まるで身内みたいな……身内?

「ほれ、カグヤ殿、照れてないでさっさと行こうぞ」

「て、照れてないし」


 俺達はそのまま家のドアの前に行く。ドアの前には立て札がかけられていて、それをツバメはしゃがんでじいっと見つめる。


「なんじゃなんじゃ? ほう……『新聞お断り』とな」

「……確実に誰か住んでるな」


 てか新聞屋はこんな森の中に新聞配達するのかよ……サービス良すぎだろ。いやここまでセールス来るぐらい新聞の人は切羽詰まってるのかもしれないな。


「まぁ、とりあえずノックしてみるか、誰か住んでるんなら好都合だ。道聞けるしな」

 俺は軽くドアを叩く。何も起こらない。

 今度は少し強くして。ドアを叩く。何も起こらない。


 今度は結構強めに。もはや騒音だ。

「あのー誰かいませんか?」

 すると少ししてドタドタと足音が聞こえ、勢いよくドアが開き一人の女性エルフが顔を出した。


「ちょ、ちょっと、立て札見たでしょう! 要らないわ……、誰?」

「新聞屋ではないぞ、ちょいと道を聞きたくてな」


 家から出て来たのは青緑色の髪に、これまた青緑色の目をした女性だった。エルさんがカッコいい系の美人、ツバメさんが可愛い系の美人だとしたら、彼女はちょっと恐い系美人だろうか。鋭い目に左右均等な顔。身長は今の俺より少し低い……160数センチか? 胸が少し小さいがまな板ではない。


 量眉の中心に小さな皺を作ったら、俺は懐から財布を差し出しそうなぐらいきついけど、普通に美人だ。と言うより美人だからこそ恐く見えるのかもしれないが。

 つかこの世界イケメンと美人多すぎじゃね?


(それにしても、なんでこの人ドアを少ししか開かないんだろう)

 体の半分はドアに隠されている。まるで怪しい人が来たような対応じゃないか。俺達は怪しくないぞ。


「み、道ぃ? ちょっとまって、どこに行こうとしてるのよ?」

「あの、神都アマテラスまで行こうとしてたんですけど……道に迷ってしまって……」


「神都まで? ちょっとあんた達何処から来たの? ニニギ?」

「ニニギですけど?」


「呆れた……あんた達相当方向音痴? いやそれ以前の問題よ」

 方向音痴と聞いて思わずツバメを見つめる。俺は違うが隣の奴否定できない。

 しかし、ツバメは横に首を振っていた。


「待つのじゃ、拙者は違う。カグヤ殿はもしかしたらそうかも知れんが」

 おい。ツバメさん。あんた何言ってんだ。俺はそろそろツバメを殴っていいと思う。殴らないけどさ。


「まぁどっちでもいいわ。ニニギから北東に道があったでしょう。そこ真っすぐ進めば迷わず行けるはずでしょ?」

「え?」


「え、ってあんた知らなかったの? ……じゃぁどうやってここにきたの? ニニギ出てそのまま足場のない森を歩いて来たわけじゃないわよね?」


 俺は天を仰ぐ。

 あ、お星様見えるわ、綺麗ー☆。


 沈黙を肯定と受け取ったのか、目の前のエルフは大きくため息をついた。

「……とりあえず今日はもう遅いし、明日行った方がいいわ。夜は結界が強まってるせいで森から神都に向かうのは無理よ」


「わかりました。……あと出来れば、彼女だけでも今日泊めてほしいんですけど……」

 と、俺は隣に立つツバメを指さす。

「はぁ、なんで?」


「外じゃ危険じゃないですか。若い女の子をこんな外に放置するんですか? 心が痛まないですか?」

 俺がそう言うと、彼女はうっと小さくうなった。

「い、痛まないわ!」


「そ、そうか……残念じゃのう……今日はここで野宿でござるか……。何が出るかもわからない森の中で、冷たい風に身を縮めて堪え……」


「す、ストップ。ストップよ! ……ま、まあ、今日はあたしの機嫌もいいし、べ、別に泊めてあげなくもないわよ。良かったわね。た、たまたまあたしの機嫌が良くて!」


「おお、左様か! いや何素晴らしいお方じゃのう。そうじゃ、自己紹介がまだじゃったな。拙者ツバメと申す」

「え、ええ。あたしはエリーゼ」


「あ、私はカグヤです。それと私は庭を貸してください」

 彼女は目を細めじっと見つめてくる。はい、彼女から冷たいジト目頂きました。


「ちょっと、なんでよ……あんたも入りなさい」

「いや、さすがにまずいので」


「はぁ? 何がまずいのよ?」

 俺はギルドカードを取り出すとエリーゼさんに渡す。初めははてな顔だったがある地点まで内容を読むと、勢いよく顔を上げた。彼女は呆然と言った様子で、俺の顔をじっと見つめる。


「う、うそ。あ、あんた……男だったの!?」

「よく間違われるんです」


 魂が抜けたように俺を見ていたエリーゼさんだったが、急に電流が走ったようにぴくんと体を痙攣させると、まるでロボットのようにぎこちない動きで俺の体を触る。

 おい、いくら俺が男だからって○っぱい触るな、俺に膨らみはない。そんな必死に探したところで見つからないんだよ。STA○細胞みたいに。

 

 つうか分っているのか? 今の状況ヤバいぞ? 銀髪美女エルフ♀(実は男)×青緑髪美女エルフ♀だぞ。ついでに言うと俺は○っぱいが敏感なんだ。


「ウソ……」

「嘘ついてどうするんですか。じゃぁ庭借りますよ?」


 俺は彼女の手から逃れるとアイテムボックスからテントを取り出す。そして設置の準備を始めた。まずは杭をとり出してと……。


「しかも……アイテムボックスぅ?」

「のう、エリーゼ殿。状況を知ってもらった上でのお願いなんじゃが、カグヤ殿も家に入れてくださらぬか?」

 

 ツバメの心遣いはとても嬉しい。しかし今回は相手に悪いと思う。

「ツバメ、気にしなくていいよ?」

 さすがに見ず知らずの男を家に入れたいと思わないだろう。俺はテントでいい。


「強がりおって……一人じゃさびしかろう? それに森の中じゃからか、夜は冷える。それにのうカグヤ殿は肝心なところでヘタレじゃから何も起きまい」


(強がってないから、あとヘタレ呼ばわりするな。……それは否定できないんだよ)

 エリーゼさんはプイと俺から視線を外し、家のドアを少し閉める。


「男はいやよ。それに彼は別にテントで良いって言ってるんだし、なら庭に寝かせとけばいいじゃない」

「そこを何とか。こんなに寒いとカグヤ殿が風邪引いてしまうかもしれないんじゃよ?」

 

 ツバメがそう言うと、エリーゼさんの眉がピクリと動く。なんかこれさっきも見たような気がする。

「ま、まあ確かに……寒いからちょっと体調崩す事もありえるかもしれないけど……」


 ツバメはさびしそうな表情を浮かべて天を仰ぐ。

「ああ明日、頭痛に悩まされながら、鼻をすすっているカグヤ殿が目に浮かぶのう。テントと言う極寒に一人取り残されて、震えて過ごし……」

「……ま、まぁLV3だし、襲われても逆にやってしまえばいいだけだしね。い、家に入れたあげなくもないわ」


 エリーゼさんがそう言うとツバメの顔がぱぁっと花咲く。その笑顔はいつ見ても可愛い。しかもさっきまでは非常に寂しそうだったからか、いつもよりかわいく見える。

「おお、まことか! いやあエリーゼ殿は心やさしいお方じゃ!」


「い、いえ勘違いしないで! あたしの気分が良かったから入れたのよ。で、カグヤだっけ? 入って」

 俺は打ち込もうとしていた杭を持ったまま、エリーゼさんを見つめる。あの、この人はいろんな意味で大丈夫でしょうか……?


「え、いいんですか?」

「さっさと入りなさい。あたしの気が変わらないうちに。い、一応言っとくけど別にあんたが風邪ひくのを心配したわけじゃないんだからね!」


 え、なんかネタじゃなくてリアルにそれ使われると逆に困るんだけど……。

 ドアに手をかけたエリーゼさんは足をバンバンと踏み鳴らす。


「だから! さっさと入りなさい!」

「あ、はい」

 俺は急いでテントをアイテムボックスにしまうと、エリーゼさんの家に入った。


----


 エリーゼさんの家は広かった。何でも昔はある一家が暮らしていたそうだが、ここから引っ越したためその場所をエリーゼさんが購入し、一人で暮らしているらしい。


(てか一人で広い家とかめちゃくちゃ孤独になるのに、よく住むな……)


「じゃぁカグヤは二階の部屋ね……で、ツバメ、あんたは一階のこっち。一応、あたしはそこの部屋だから。荷物置いたらリビングに来なさい」


 俺とツバメさんはローブ、上着を脱いでリビングへ向かう。キッチンにはエリーゼさんが立っていて、冷蔵魔道具のドアを開け中を物色しているようだった。

 

「あ、エリーゼさん。今日は私が夕食奢りますよ?」

「は? あなた何言ってるの?」


 彼女は眉根を潜め、訝しげに俺を覗き込む。

 俺はアイテムボックスから買いだめしていた料理を取り出す。数品取り出したころには、彼女の訝しげだった目は驚きに変わっていた。


「おお、カグヤ殿、今日はどこの料理でござるか?」

 タイミング良く現れたツバメに俺は言う。


「ああ、今日はアマウズメの渡り鳥亭の料理だ、エリーゼさんもどうぞ」

「アイテムボックスが便利とは聞いていたけど、ここまでだなんて……」

「ああ、そうだエリーゼさんはお酒どうですか? 沢山アイテムボックスに入れてるので」


 そこでエリーゼさんの目が変わる。どうやら彼女はお酒好きらしい。

「へぇ、何があるの?」

「ええ、いろいろありますよ。葡萄、リンゴと言った果実酒だったり、エールだったり、蒸留酒だったり……エリーゼさんのお好きなもので結構ですよ」


「じゃぁ……あたしは果実酒がいいわ」


 俺はアイテムボックスからリンゴ酒と葡萄酒の瓶を取り出すと卓の上に置く。そしてエリーゼの目線がリンゴ酒へ向かったのでそちらの瓶を開けて、彼女のグラスに注いだ。


「いっぱいあるので、沢山飲んでくださいね。あ、ツバメには『花鳥風月』」

「さすがカグヤ殿! 拙者の好みをわかっておる!」


 ツバメは嬉しそうに花鳥風月の瓶を受け取ると自分のコップに注ぐ。俺は自分用に葡萄酒を注ぐと三人で乾杯した。


+----+----+----+----+----+----+----+----+----+


「そうなのよ。だから男って馬鹿で面倒でカスなのよ。でもあんた、男なのにけっこうわかるヤツじゃない、うぃっ」

「そうですか?」


(エリーゼさん酒弱いな……比較的アルコール度数の低い果実酒数杯しか飲んでないのに)


「だから……、ちょっと聞いてる? だからぁあたしはぁ男が苦手っていうか、嫌いなのよぉ」

 要約すると、どうやら彼女は美人なためじろじろ見られたり、体に触れられたり、事あるごとに声掛けられたりして、男が嫌になったらしい。一言で済む事を1時間近く聞かされた。


「でも、カグヤは、そんなこと無いぃ。気が使えるしぃ、なんかそばにいても私拒否反応起きないし」

 俺が大丈夫なのは、見た目だけは完全に美少女だからだと思う。


「いいわ、カグヤ、あんたをあたしのそばにいる事を許してあげるわぁ」

 さっきから上から目線で色々言われている。それも酔ってるせいか同じような事を何度も言う。これを聞くのは何度目だろうか。


「わぁすごくうれしーちょーうれしいなー」

 俺は完全な棒読みで返答する。しかし酔いが完全に回ってしまったエリーゼさんには、何ら意味は無かった。


「ふふっそんなに喜ばれるとあたしとしてもその、嬉しいわ。いい、私の召使いとしてきりきり働くのよ。ま、まぁ貴方が、しっかり働くなら……ほ褒美をあげてもいいわ」

「ほ、褒美ですか?」


 何それ、ちょっと欲しい。

 酒の所為か赤くなっていた顔を更に赤くして彼女は言う。

「そ、そのぉ、ほっぺにチュウとか……」


 もはや茹でダコだ。お前は純粋無垢な乙女か。エルフ族だから見た目美少女で年齢くそ高い、なんて事も普通にあり得るのだが……。


「……カグヤ殿はモテモテでござるのう。拙者妬けてしまうわ」


「そう言えばぁ、ツバメって左手薬指に指輪してるけどぉ……それどうしたの?」

「これか、これは拙者がカグヤ殿から貰ったのだ」

「合う指がなかったんですよ。うん」


 俺はすかさずフォローを入れる。意味があるかはわからないが。


「それ結構な魔道具よね……」

 エリーゼさんはとろんとした眼でその魔道具を見つめると、そう呟いた。

「私にはあまり効果ないですし、いいんですよ」


「……ぬ、これはそんなに高価なものじゃったのか?」

「もぉぉツバメったら何言ってるのよ? 最低でもダンジョン60層以上、LV100越えのモンスターでじゃないとドロップもしないでしょう高価な指輪よ? そんなのを貰えるなんて凄く信頼されているのね。……うらやましいわ」


「そ、そうじゃったのか……! まさかずっと助けてくれるばかりじゃなく、こんな指輪まで……カグヤ殿ぉぉぉおおぉぉ。一生ついていきますぅぅぅううう!」


 指輪と言ってもベースはミスリルだから凄く性能いい、ってわけじゃないと思うんだがな。てかおいツバメは土下座するな、つか笑いながらやってるってことはお前もわざとやってる、ってか結構酔ってるだろ!



 その後も3人で飲んでいたが、日付が変わる頃に俺達は宴会を打ち切った。これ以上は明日へ響くだろうし頃合いだろう。ちなみにエリーゼさんは完全に潰れたので俺がおぶって彼女の部屋に連れて行くことになった。

「じゃぁカグヤ殿、頼んだぞ」


 そう言ってツバメは割り当てられた部屋に行く。ちなみにツバメの部屋には何も荷物がなくて、ベッドも無いようだったから、俺がアイテムボックスから布団を出してしいておいた。四畳半で使ったアレである。


 俺はかがんでエリーゼさんを背中に乗せる。そして2回ほど彼女の位置を上にずらすため、体を持ち直す。

「ぅぅん」


 エリーゼさんから声が漏れる。落ちるなよ?

「しっかりつかまっててくださいよ?」


 そう言うと俺の首周りに腕が回される……って抱きつき過ぎじゃないですかねぇ。小さなつぼみが俺の背中に当たってるんですけど。


 俺はそのまま歩いて彼女の部屋に向かう。また背中の彼女からは小さく寝息が聞こえ始めた。

(寝ちまったか、10分前位から落ちそうだったしな。……さっきから気になってたけど彼女からはいい匂いするな……何かの花の香りかな? なんとなくだけど安らぐ)


 俺が部屋のドアを開けて真っ先に感じたのは、花の香りだった。それも彼女自身から香るものとは違った匂いの。

(ん、なんだろう? この匂い……あれかな?)

 俺は机の上に置かれた幾つもの小瓶へと近づく。よく見れば一つの蓋が開いていて、そこからこの香りが漂っていた。

(アロマグッツかな? きっつい香水とかは苦手だけど、これくらいなら全然気にならないな)


 俺はベットにまで歩くと、彼女を下ろすために体を傾ける。しかし彼女はがっちり俺をつかんでいたせいか、彼女は降りることは無かった。


 仕方なくベッドに座ると優しく彼女の手を剥がし、彼女を布団の中にいれる。

 そして彼女の為に布団をかけていると、今度は彼女は俺の手をぎゅっとつかんで来た。それも少しだけ眉根を狭めて。


 その姿は親に甘えている子供のようにも見えた。

(朝まで手を握っててもいいんだが、さすがにここにいるのはまずいな……)


 俺は優しくエリーゼの手を解き布団の中に入れると、ほんの少しだけ彼女のほほが緩んだ気がした。


 俺は彼女に背を向けると部屋を出て、優しくドアを閉めた。

 そして今度は階段を上り俺は与えられた部屋に行く。

(そういえば俺、エリーゼさんに何かを伝えとかなきゃいけないような気がするんだが……なんだっけ、どうも思い出せない)


「まあいいや寝よう。思い出せないのなら多分どうでもいい事だよな」


 俺は何もない部屋に入ってアイテムボックスから予備の布団を取り出すとそこに敷く。そして布団の中に入って目を閉じた。


+----+----+----+----+----+----+----+----+----+


(……なんだ? まぶしい)

 俺はゆっくりと瞼を持ち上げると、体を起こす。


 そして体を捻って光の元を探す。どうやらカーテンのない窓から日が差し込み、俺の顔を照らしていたようだった。


(そういや、エリーゼさんちに泊めてもらったんだっけ、今日はツバメ居ないな……)

(ツバメ、寝ぼけ方が異次元だからなぁ……何も起こってなければいいが)

 そこで俺はふと気が付いた。


「あ、やべ……、俺が昨日エリーゼさんに伝えたかったこと、これだわ」


(いや、でもさすがにツバメと言えど、部屋を間違えた挙句、エリーゼに抱きつくだろうか? うん、ツバメならありえるな……むしろあいつは期待を裏切らない。九割九分九厘やるだろう)


 今からでも遅くない。鍵かけた方がいいよと言っておくか。アイツ逃れきれないくらいの力で抱きしめてくるし。初見は絶対ビビるだろうから。

 

 俺は立ちあがってぐーっと伸びをする。そして一歩足を踏み出した瞬間。

「きゃぁあぁぁぁあああああなになになに!? ってつばめぇぇぇええええ? ちょ苦しい……なにしてんのよ、さっさとおきなさーーい!」


 下の階から叫び声が聞こえた。


 ……遅かったか。

 

まな板の貧乳キャラは出ないんですか? → ちょっと何言ってるんですかぁ。主人公がいるじゃないですか(遠い目)


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