第27話!!
「お帰りーユウずいぶん遅かったわね。シンの奴先に帰ってきたけどアンタ今まで何してたの?」
部屋に戻ってきたボクを真っ先に迎えてくれたのは真理さんだった。
セナさんはお茶をすすりながら一度だけこちらに目を向けすぐにそらした。
そして敵さんととんでもない約束をしたあの男の姿はここにはなかった。
「ただいまです。あの、シンさんは?」
「なにアンタアイツに用でもあったの?アイツなら仕事が済んだから早々に帰っていったわよ」
なんて奴だ。
ユウはそう思う。
「仕事って何だったんですか?」
「ああ、それわ・・・」
ホレ、と部屋の隅を指さす真理さん、そこにはシンさんが持っていたあの布にまかれた棒状の何かが立てかけられていた。
「なんですか?アレ」
「自分で確認してみれば~。セナもいいでしょ」
ああ、とつぶやくセナさん。
どうやらセナさんの持ち物らしい。
長さにして約七十センチ程、手にするとずしりと重い。
言われるがまま布をはぎ取るとそこには・・・。
「剣?」
「そう、アンタはこの国の生まれじゃないから初めて見るんじゃない?それが日本刀ってやつ」
日本刀、西洋の剣術のように力ではなく技で相手を切ることに特化した刃物。
けど聞きたいのはそんなことじゃなくて。
「なんでこんなものがここに?」
「はぁ?そりゃ決戦に備えてでしょ。セナは私と違って素手で戦うタイプじゃないからシンの奴に頼んで武器を持ってきてもらったってわけ」
「決戦って本当に戦うつもりなんですか!?彼らは人間じゃないんですよ、いくらなんでも・・・」
無茶だと言おうとするユウ、そんなユウに真理は目を細める。
「ユウ、忘れてるみたいだから言うけど私とセナも人間じゃないんだよ。それどころかあんなドールなんかより私たちの方がよっぽど化け物さ。見てくれがアンタたちと同じでもそれだけ、根元的にまったく別種の生命体なんだよ」
冷たく事実だけを告げる真理、こういった時の彼女はひどくクールになる、もしかするとこの冷静な姿こそが彼女の本質なのかましれない。
でも、ユウにも譲れない思いがある。
「だとしても、争うなんて変です。なんで戦いになるんですか、戦わなくたっていいじゃないですか、このまま逃げてしまっても」
「冗談、それこそ死んだ方がましよ。勝利のための逃走ならまだしも、敗北からの逃走なんてありえない、戦う前からなんてなるとなおさらね。アンタこそどうして戦いをそんなに拒否するのよ?まだ、家族の死に縛られているわけ?アンタの家族が争いで死んだから」
「真理」
言い過ぎだと、咎めるセナの言葉を聞かずに真理はそのまま部屋を出て行ってしまった。
後味の悪い空気の中、ユウは口を開く。
「セナさん、ボクの考えはおかしいのでしょうか。争いは避けるべきだというボクの考えは」
「いや、別に私はおかしいとは思わないしお前の考えを否定しようとも私は思わない。そこにはお前なりの思いがあるみたいだからな」
真理のような拒絶ではなく、肯定のセナわずかな光を感じたユウだったが、
「でもユウ、同じように真理の考えも私は否定しない。アレでもアイツなりに考えての行動なんだよ」
「でも!」
「それになユウ、私たちはそもそもここには戦いに来たんだ、それはお前も十分に承知していただろ?何で今更こんなこと言いだしたんだ?」
「今更なんて、そんなこと。戦わなくて済むならその方がいいなんて最初から思ってました。でも、人間のボクがこんなこと言うのも野暮な気がして言えなかった。それに倒すのはどうせ化け物なんだと、浅く考えてました。でも・・・」
「でも、実際会ってみたらその化け物たちは人の姿をしていた。だから腰が引けたと?分からないでもないが別にお前に戦えと言っているわけじゃない戦うのはあくまで私達だお前が気にするようなことは無いだろ?」
ユウの思いを理解できないセナは不思議そうな顔をしそんなセナにユウは怒りを覚える。
どうしてこの人はこんなことも分かってくれないのかと、しかしそれは当然のことであったなぜならセナはユウと違い人ではないのだから。
「なんで、分かってくれないんですか!ボクはセナさんたちが誰かを殺すことが嫌なんです!たとえそれが人でなくても!!」
悲痛な叫びだった。
セナはそんなユウを正面から見てとり、
「それでも戦うことはやめられない」
と宣言した。
「なぜです?仕事だからですか?」
「違う。それは私たちが人外だからだよ」
それはよく分からないセナの告白だった。
「どうゆうことですか?セナさんが人外なのと戦うことにいったいどういった関係が」
「わからないかユウ、じゃあもし怪獣がここに現れるとするそいつは普段はおとなしく害はないけど怪獣であるお前どうする?」
「わかんないですけど害がないなら何もしないと思います」
ユウの答えにセナはそうだなっとうなずく。
「確かにお前ならそうするだろうな、なら人類全体で考えたらどうだ。みんなもその怪獣をほっとくと思うか?」
それはとユウは顔を背ける。
「そう、人間にとって私たち人外は怪獣と同じさ分かり合うなど不可能、どちらかは潰さなくてはならない事実お前の両親は私たちを殺す兵器を作ってたわけだしな」
それに関しては何も反論はできない、けれど。
でも今戦おうとしているゼノルとは同じ人外のはず同族同士でなぜ争うんですか?」
「これはまた変なことをゆうなユウ。むしろ世の中同族同士の争いの方が多いじゃないか。お前たち人間だって戦争などでどれだけの同族を殺してきたか分かったもんじゃないだろ」
「うっ」
痛いほどの正論、これまたユウは押し黙るしかない。
「それにユウ同族じゃない。確かに同じ人外だが同族じゃないんだ。いや。そもそも人外に同族なんていない人外のモノは皆同じに見えてもただ一つの生命体なんだ。私と真理も双子だとされているセレナもみんなまったく違う生命体なんだ」
それはあまりにも衝撃的な事実だった。
「だから私たちは戦うんだ。自分と同じようでまったく違う生命体、それが認められず殺しあう。そうして自らが頂点の存在だと証明しようとする。そう本能に刻まれている生まれたときから人外のモノは皆他の人外を殺すよう出来ている。だから戦うこともやめられないそういった生き物なんだよ私たちは」
ユウは何も言えないかける言葉が見つからない。
可哀想とは思えない、人外がそういった生物ならそれはもうしょうがないことだ。
肉食獣が草食獣を食べることくらいしょうがないこと。
どうすることもできない生命体としての本能。
それは抗うことのできない現実それを見せつけられユウは泣いた。
それはセナたちを憐れんだからではない、ただこの現実をどうにもできない自分が悔しくてユウは泣いたのだった。
そんなユウの涙をセナは細い指で拭い、頭を撫でる。
「ボクは何もできない。また争いを見ていることしか・・・止めることもできない」
「そうだな、私たちの争いは誰にも止められない。止まるとしたらそれは死んだときだけ、それはたぶんどうしようもないこと。だけど、お前がそんな風に思ってくれてたなんてな・・・生命体として孤独な私にとってはお前みたいなやつがいてくれるだけでありがたいんだよ。心配してくれて、ありがとう」
「っ!!」
それはあまりにも不意打ち過ぎた、目の前で見せられたセナさんの満面の笑顔はあまりにも強烈でボクはもう高鳴る自身の胸の鼓動を抑えることは出来ないでいた。
セナが部屋に入ると同時に真理は視線をこちらに向けた。
「なんだ、こんなところにいたのか」
「ふん、分かって来たくせに」
そう、口を尖らせる真理にセナは笑いながら横に腰かけた。
崩壊した天井からは月明かりだけが差し込みまるでライトのように二人を照らし、辺りでは鈴虫たちが軽やかな声で歌っていた。
「ユウ、アイツはお前や私が他者の命を摘み取るそれが嫌みたいだった」
セナはこの静寂を乱さぬようにぽつりと語る。
「・・・・」
「アイツはたぶん私たちに死んだ家族を重ねているんだろうな。いや違うか、私たちのことを家族だと思ってくれているみたいだった」
「血もつながってない、生物としてもまったく異なるのに家族?ありえない」
鼻で笑う真理をセナは困った風に見つめる。
二人の心情を理解できる身としてはどちらかが間違っているとも思えなかった。
「そうか?私は家族というのは血ではなく絆で結ばれた集団だと思っていたんだけどな。真理、それはお前だって思ってただろ?だってお前は昔・・・」
「セナ、この際だからハッキリ言っとく。私はアンタたちのことを同志だと思っても家族だとは思ってない、私の家族は今も昔も一人だけよ。アンタもそうでしょ?アンタだって過去のことを吹っ切れていない、そのアンタにとやかく言われる筋合いはない」
向き合う真理の瞳は強さの裏に悲しみを帯びた色をしていた。
「そうだな、確かに人の意見でどうこう変わることじゃなかった。けど真理、ユウの気持ちも少しは分かってやれ」
ぽんと肩をたたきセナは再び部屋を出ていく、真理はその背中を見つめ、
「ガキのくせに大人ぶって。分かるわよ私だってそのくらい、それでも・・・」
『それでも私の家族はあの子だけだ』と真理は月を見ながら思うのだった。




