第23話!!
「少しは落ち着いたか?」
ポンと手渡される缶コーヒー、持ってきたのはセナさんだ。
「ええ、ありがとうございます。あの、コレは?」
缶コーヒーを受け取りながら聞いてみる。
「差し入れ。さっき近くの自販機で買ってきた。どうやらまだ電気は通っているみたいだな」
見るとセナさんの手にもコーヒーが握られていた。
「わざわざすみません」
僕がそう謝るとセナさんは缶を開けながら
「気にするな」
と、微笑んでくれた。
その時のセナさんはなんだか心から綺麗に見えたんだ。
「セナさんは強いですね。いつも凛としていて。僕なんかと全然違う。僕はいつも逃げてばかりで」
「何言ってるんだお前?お前と私が違うのは当たり前のことだろうが、そんなことでいちいちへこむなよ。それに私は別に逃げることが悪いことだとは思わないしな」
瓦礫の上に腰を下ろすセナさん、サラサラと吹く風がその漆黒の髪を撫でた。
時刻は気づけば夕刻になっており涼しい空気が辺りを包み込む。
セナさんは風になびく髪を耳にかけている。
そんな仕草を見ているとふと、
「私にも似たような経験があったからな」
そんな告白をされた。
「似たような経験って、家族を犠牲にしてしまったことが?」
「・・・・ああ」
「でも、セレナさんとは今も一緒に暮らしているじゃないですか」
その考えなしの一言に大きくため息をつくセナ。
「あのな、ユウ。いくら私たちでも初めっから二人っきりだったわけないだろ。育ての親位いたさ」
「じゃあ、その人が?」
これはさすがに無神経すぎるかとも思ったが、セナさんは何事もないように、
「まあな」
と言ってくれた。
「状況は違うけどさ、親しいものが死ぬ気持ちは私も知っているから、こうゆうのは人も私たちも関係ないだろ。だから私はお前が逃げてるなんて思はない。大事なのはそれと自分なりに折り合いをつけていくことだと私は思うけどな」
「セナさん・・・」
「まあ、今は真理が言ったように今後の対策を練ることに専念すべきだろ」
「はい」
多分この時の空気は自分でいうのもなんだがとてもシリアスなものだったと思う。
多分誰もが分かるくらいの、けど僕らは理解していなかったのだあの人のKYさを。
「な~に~、シリアスな空気かもしだてやりますか!!」
まるで暴走特急のようにこちらへと突っ込んでくる真理さん、あんなのまともに喰らったら全身骨折で死んでしまいそうだけど寸前のところでセナさんが僕を抱き上げて助けてくれた。
「真理何のつもりだ?」
キッっと真理を睨み付けるセナ、別に怒っているわけではないのだが心理のこういった行動にうんざりしているのも確かなことであった。
「べつに~ただアンタたちがいつまでも昔のことでウジウジしているのがウザかっただけよ。ねぇ、それより温泉に行かない?」
「「はぁ?」」
セナとユウの声がはもりまたあたりの空気が変わった。
「なんで?」
「なんでって、そんなのさっきの爆発で体が汚れたからに決まってんじゃん。ユウ、アンタだって汗流したいでしょ?」
チラリとこちらを見る真理さん。
確かにこの炎天下の中を走ってきたせいで僕は汗臭いし、セナさん真理さんも体中がススだらけであった。
「それにさ、温泉に入れば嫌のことも少しは晴れるんじゃない?」
そっぽを向きながら小さくつぶやく真理、その姿を見てセナは少し微笑む。
「なんだ、お前なりにユウ気を使ってくれてたのか」
「は、ハァ!?ただ私は服の汚れが気になって!!」
あたふたと赤面をしながら否定を始めだす真理、どうやら図星だったらしい。
そんな真理の姿を見てユウとセナは笑う。
それは慌てる真理が面白かったからではなく、彼女も彼女なりに気を使っていることが分かったからであった。
「なんだよ~なに笑ってんの!」
う~とうなりながらこちらを睨む真理さんをセナさんがなだめる。
「いや、気にするな、些細なことだ。それより温泉だろ、あの辺りは街灯もなかったしな、日が暮れる前に向かうとしよう」
「そうですね。じゃあ、セナさんたちから先にどうぞ。僕はそのあとで良いので」
レディーファースト、自分なりに気を利かせての言葉だったのだが二人はあきれ顔でこちらを見る。
「アンタ何言ってんの?アンタも一緒に決まってんじゃん」
さも、当たり前のようにとんでもないことを言い出す真理さん。
まったくこの人の冗談もここまでは付き合いきれないぞ。
「セナさん、真理さんがまたわけのわからないことを・・・」
今度はこちらが呆れつつセナさんに助け舟を出してもらおうとしたところで腕をつかまれそのまま引っ張られ始める。
「ほら、行くぞ」
「へっ!?」
ズンズンと温泉へと向かい始めるセナさんと真理さん。
「ちょ、ちょっと!セナさんまでなにふざけてるんですか!」
予想外のことにパニックになる、まさかセナさんまでこんなたわごとに付き合うなんて。
「アンタ本当に何言ってんの?誰もふざけてなんかいないけど」
真剣なまなざしでこちらを見る真理さん、その真意はつかめないが、
「ぼ、僕と温泉に入ることのどこがふざけてないんですか!」
と、抗議の声を上げ腕を払おうとする。
が、やはり力でかなうはずもなくそのまま引きられつづけられ続ける。
「アンタ、さっきの話聞いてた?ヤツラはもう私たちに宣戦布告してきたのよ。そんな中アンタ一人にして襲われでもしたらアンタ戦える?」
「そ、それは」
そんなの答えるまでもなく無理に決まってる。
「だから今後この戦いにけりがつくまでは常に私らと行動を共にしないといけないわけ。はい、わかった!」
ビシッと指をさしてくる真理さん。
だめだこの人にとってこれは決定事項らしい。
すがる思いでセナさんを見るも、
「まあ、そうゆうことだ」
なんて言ってるし。
「じゃあ、行きますか!!」
「い、いや。ちょ、ちょっとまって!ねぇー!!」
叫びはこだまとなりむなしく響き渡り、僕はなすすべなく温泉まで引きずられていきました。
「では、我らが領地に忍び込んだ三人だと?しかもそのうちの一人は人間の子供。ふん、ずいぶんとなめられたものだな」
町の奥、とある名家の広間に陣取る一人の男、全身を黒い衣で覆い顔は見えないでいる。
彼の周りには何十体ものドールが跪きこうべを垂れている。
その中には真理たちに宣戦布告をしてきた日鶴の姿もある。
「はい。ですがそのうちの二名はあの朝岡真理とセナです」
「ほう、解読に虚像か若いなりに力のあるものが来たな。とゆうことは人間の少年というのは」
「はい、スレンダルト当主が子、ユリウス・スレンダルトです」
「さすがの情報収取能力だな日鶴ほめて遣わす。なるほどスレンダルトか、アヤツラはやたら神器に詳しいからな我らの計画のためにもいただきたいところだが、相手がヤツラとなるとここは引くのが得策・・・いやまて、今三名と言ったな。まさか異端者は来ていないのか?」
「はい、どうやらそのようで。異端者の姿はありません」
その瞬間あたりを不気味な笑い声が包み込む。
「フッ、フフフフフフクックヒハハハハハハハハハ!!!なるほど、なるほどそうか奴は来ていないか。どうやら本当に甘く見られているようだな、しかしそれはこちらとしても幸運。日鶴よ今すぐ夜鶴と共に兵をまとめ出ろ」
「よろしいので?」
「今でなくてはならぬのだ。異端者のいぬ今が好機。ただちに進撃だ」
「わかりました」
その掛け声とともにドールたちが一斉に立ち上がる。
「クック。さて狩りの始まりだ。スレンダルトは我らが貰い受ける」




