第22話!!
「なんだったんですか、アレ・・・」
腰を抜かし地面に座り込んだままそうつぶやいた。
「ドール。鬼神ゼノルが作り上げた人を模した殺人人形だよ」
「ドール、あれが?信じられない。あそこまで忠実に人を再現したドールなんて聞いたこともない」
ユウのその言葉にセナと真理が反応を見せる。
「待て、ユウ。お前ドールがなんなのか分かるのか?」
「え?いや」
「今更否定しても遅いって。大体前々から変だとは思ってたのよねアンタのこと。私たちが人じゃない知っても反応が薄かったり。こんな異常な状況に立たされても恐怖こそしてもアンタ理解はできてたよね。話もすぐに呑み込んでくれたし。それが変に引っかかってたけど、今ので合点がいったわ。アンタ、人外のものが存在することを私たちと会う以前から知ってたんでしょ。そうでしょ?知ってたからこそこんな事態に巻き込まれても今までそれなりに対処できたんでしょ?」
まあ、それも今回までだったみたいだけど。
「・・・・」
真理の追究にユウは苦々しく顔をゆがめる。
「別に無理して答えなくてもいいけど」
助け船なのだろうセナのその逃げ道をユウは首を振り自ら閉ざした。
「いえ、ここまでばれてしまったなら仕方がありません。お話しします、全て」
そこにいたのは今までのあどけない少年ではなくすべての感情が抜け落ちたかのような顔で見据える一人の人間がいた。
「お二人は、スレンダルト家を知っていますか?」
「スレンダルト、何それ?セナは知ってる?」
「確か、どこぞの国の名家だろどんな仕事してたか知らないけど、かつては世界的にも名の知れた一流貴族だったとか」
「かつては?」
「ああ、なんでも二年ほど前、強盗の襲撃を受け一家は皆殺しそのまま没落してしまったらしい」
ここでセナの説明にユウが割って入ってきた。
「一般にはそう知られていますね。たぶん今後もその認識が改まることはないでしょう。ですが真実は別にあります。あの日僕の家族を殺したのは強盗なんかじゃない、エクソシストです」
「なに?」
家族・・・」
エクソシスト、ユウからの思はぬ言葉に真理は驚き、家族ユウのその予想できた言葉をセナは呟いた。
「僕の本当の名は、ユリウス・スレンダルト。スレンダルト家当主、クライブ・スレンダルトの息子にして、スレンダルト唯一の生き残りユリウス・スレンダルトです。すみません。身元が割れないために偽名を使ってました」
申し訳なさそうに目を伏せるユウ、しかし真理はそれを軽く流す。
「そんなことはどうでもいい、アンタがスレンダルトの人間であることも含めてね。そもそも私にはどれも関係のないことだしね。けど、アンタの家を滅ぼしたのがエクソシスト
っていうのはどうゆうこと?この件は詳しく話してもらえる」
自分が望むのはあくまでエクソシストの情報だけと視聴する真理は正直正しい。
エクソシスト、それは人が治める世界がこの世の最も正しいあり方だと信じ、故に人という種を超える人外の者たちとは古くから敵対してきた者たちの総称である。
人類を絶対視するがゆえに構成員はすべてが人間であり神器と呼ばれる神秘の武器を手に人外根絶という目的の元これまで多くの人ならざる者たちを葬ってきた。
ここで勘違いしてはいけないのは彼らはあくまで人類の絶対性を守るために活動しているのであってそれは決して人を守るためではないというところだ。
その手段を選ばない戦い方は多くの一般人を巻き添えにしてしまうこともこれまで多々あった。
そのため人外はもちろんのことその存在を知る人間たちからも疎まれる者。
世はそれをエクソシストと呼んだ。
そんな連中がユウの家を襲った。
いくらエクソシストが狂信的だといっても意味なく人を襲うことなどありはしない。
つまり、ユウの家族スレンダルト家には襲われるだけの理由があり、そんなユウを居候させておりかつ人外である真理たちは無論標的にされてしまうわけである。
「だからさ、話してくれない?アンタの家が狙われた以上、ヤツラは生き残りであるアンタをまた狙ってくる可能性が高いし、そうなればもちろん私たちも狙われるわけだし。今後の対策のためにも何でアンタがヤツラに狙われてるのかを知らなきゃ」
「そうですね。すみません僕のせいで」
申し訳なさそうにするユウを真理はまた軽く流す。
「うん?いいのよ、エクソシストとはもともと敵対してたんだし。それより話し」
「あっはい。えっと、それを話すにはまずスレンダルト家の家柄からお話しする必要があります」
ここで、一呼吸整えた後ユウは静かに語りだした。
「率直な話、僕たちスレンダルトは神器の大量生産を行っていました」
「「はぁ?」」
驚き目を見開く二人。
まあ、これは当然の反応だろう。
「えっ?神器って量産とかできるわけ?」
「いえ。実際に作っていたのは神器そのものではなくてその模造品。ですから能力自体も本来のものより大きく制限されてしまいます。ですが模造品といえど神器、力の弱い人外なら倒せますし、なにより誰でも扱えるという利点がありました」
「なるほどな、神器は本来その強力な神秘性ゆえに扱えるものはごく少数に限られてしまう。けどその劣化版は神秘性は低くなっているがその分一般人でも扱えるというわけか」
「ええ」
「それでその神器をエクソシストに売っていたのかお前たちは」
セナの問いにユウは小さくはいとだけ答えた。
「でもそれって変じゃない?だってエクソシストからしてみればアンタらの家は兵力を増やすためにも必要不可欠な存在だったわけでしょ。ヤツラがアンタの家を襲う理由がどこにあるのよ?」
確かに真理の言うとおりだ。
スレンダルトはエクソシストに武力提供をしていた。
人外の絶滅を目的とするエクソシストにとってその供給を絶つということは自分たちにとってもマイナスでしかない。
けど彼らはそれを実行した。
そこにはそれだけの背景があるということだ。
「・・・理由は簡単ですよ。僕の父、クライブ・スレンダルトがその武力を一般の軍にも支給しようとしたからです」
ユウは自らの袖口をつかみそう言い放った。
「・・・馬鹿なことを」
セナはそう本当に残念そうにつぶやき、真理はなるほどねとうなずいて見せた。
「人間が一番だと考えるヤツラだ、人外の存在一般人に知らせようとするはずがない。神器なんてものが軍なんかに渡ってしまったらそれこそ何時秘密がバレルか分かったもんじゃない。だからそうなる前にアンタらスレンダルトを潰したわけね」
「はい。たぶんスパイでもいたんでしょ、父が神器の軍事転用を思い立ってからのヤツラの行動はあっというまで、僕の家はその日のうちに炎に包まれました。一面火の海で母も妹も死に絶えていたそんな中瀕死の父が家にあった唯一本物の神器、空間転移の神器を使い僕を逃がしてくれました。・・・僕が、僕だけが生き残ってしまった!うっ・・く・・ごめん、ごめんなさい」
生き残ってしまったそう泣き叫ぶユウの姿は見ていられないほど痛ましいモノだった。
たぶん彼はずっとそのことを胸に抱え込み苦しんでいたんだろう。
たぶんそれは、生き残してしまった罪悪感、家族を失ってしまった悲しみからくる嘆き。
そんなユウをセナはそっと抱きしめた。
「少し黙ってろ。真理ももういいだろ」
あえて真理のほうには振り向かずそう聞く。
「まあね。大体の話の流れはつかんだし、もういいわよ」
真理はそういうとそばにあった切り株に腰を下ろした。
そして先ほどまで家族のことを思い出し混乱していたユウは今違う理由で混乱をしていた。
「あ、あの。セナさん!?」
顔を真っ赤にさせながら必死でセナから離れようとするユウ、しかしセナの腕はこれを逃さない。
「いいから、落ち着くまでしばらくこうしてろ。それまでそばにいてやるから」
優しい、女神のように美しい声で語りかけてくるセナ、その声が肌のぬくもりが心地よく先ほどまでの羞恥心はどこに行ったのか、ユウはもうしばらくだけセナの腕に身を預けることにしたのだった。




