第21話!!
走る、走る、とにかく走る!
息を切らせながら、汗を流しながら、足がもつれそうになりながらも走る。
目指すのは先程の宿、いや正確には先程まで宿だった瓦礫の残骸だ。
何が起きたかなんてわからない。
ただ、僕が宿を出てすぐソレは起きた。
まるで何百ものフラッシュをたいたかのような眩しい閃光、そしてすべての音を消し去るかのような爆発音。
僕がそれらに気づいた時には宿はその面影を残すことなく崩壊していた。
「ハァーハァーハァー・・・っ」
目的地に着いた僕の目の前に広がるのは今だ土煙を上げている無数の木片たち、あまりの光景とひどい息切れのためか軽い眩暈を覚える。
「これは・・・」
真理さん達はあの後も宿に残っていたはず僕は偶然離れにある温泉に行っていたため事なきえたけど、真理さん達は・・・。
頭にわく最悪のイメージ、けれどそれは一秒後にも綺麗に払拭された。
ガラっという瓦礫の崩れる音とともに木片の隙間から飛び出す白く細い腕、それはまるで廃屋に咲く一輪の花を思わせ、そしてその腕の持ち主は・・・。
「イター、まさか自爆するとはね。てか、ここ煙いし最悪!」
「横で騒ぐな真理、耳障りだ」
「ひど!!」
まるで何事もなかったかのように、これ位のことなんなんだというように、そんなアッケラカンとした態度。
数分前との違いといえばせっかく温泉に入った体がススなどで汚れてしまっているくらいのものか。
そんな二人はようやく僕の存在に気づきこちらを見る。
「なんだユウ、またそんなところに立って。ボーっとするの好きなのか?」
「違うわよ。今度こそ私の美しさに見惚れてたのよね、ユウ」
あいも変わらず間抜けなことを漏らす二人。
そんな姿があまりも当たり前すぎたせいだろうか、気づけば僕は不覚にも二人に抱き着いてしまっていた。
「ふぇ!?」
「はぁ!?」
あまりに当然の行動だったからだろう真理さんとセナさんは目を丸くしてしまっている。
けどそんなの体が勝手に動いてしまったんだから仕方がないだろ。
そうさ、二人が無事で良かった、そう思うと抱きしめられずにはいられなかったんだ。
「・・・あのさぁ、ユウ。アンタがこういった行動に走った理由、まあ何となくだけど想像できるし、そんな風にアンタが私たちのことを思ってくれるのは別に嫌ではないけどさぁー・・・」
真理さんは顔を少しひきつらせている。
なぜだろう?
僕が抱きついたのがそんなに不愉快なのだろうか?
いや、これは少し違うような。
「だぁー、いい加減離れんかー!!ユウ!アンタ汗でベタベタじゃない!気持ち悪いなー!!!」
ドンと、真理さんに体を押しのけられてしまう僕。
ああ、そういえばここまで息切れするくらい全速力で来たんだっけ?
そりゃ汗ぐらいかくか。
おっと、見れば横にいるセナさんもなんか微妙な顔をしているもしかして本当に嫌がっている?
僕は慌てて二人から体を離した。
と同時に若く、少し機械的な男の声が流れる。
「ああ、せっかくの感動の再会なんだからもう少しやさしくしてあげればいいのに。その子が可哀想ですよ」
「なんだ、今の爆発でみんな壊れたかと思っていたけど、まだ残っていたヤツがいたのか人形!!」
凄味を利かす真理さん、しかし相手はそれがなんだという風だ。
とゆうか、こんな真理さん初めて見る。
「はは、怖いな。しかし良く分かりましたねボクが人形だと。先ほど貴方方が倒した人形とは大分違うと思うのですが」
「確かに、アンタからはあんなヤツラとは比べ物にならないほどの力を感じる。けれど所詮魂無きただの人形。他のヤツの目はごまかしても私の目はごまかせないわよ!!」
ビシッと指をさし、ふふんという表情を見せる真理さん。
だけど確かにこの人を人形だと思うのは難しい。
確かに生物とは思えない白い肌をしているがそれ以外は普通、いやそれ以上?
んー一言でいうなら王子様?
その髪、まるで太陽のごとく見事な金髪は一切のクセがなく風になびき、青い瞳は青空のように澄み切っている。
何とも日本に合わない人だ。
「ほう、実にいい目をお持ちのようだ実に厄介。朝岡真理さん、それにセナさん。えっと君は・・・」
ふと青眼が僕を捉える。
そのあまりにも澄んだ瞳に息をのんだ。
「ぼ、僕は・・・」
「ああ、存じておりますよ。現在彼女達と同居している人間の少年ですね。初めましてボクの名は日鶴、ゼノル様に使えるドールが一人日鶴です。以後お見知りおきを。今日はあいさつにお伺いになりました。」
ニコリとほほ笑む日鶴。
「あいさつ?あの人形もあいさつ代わりか?」
「あんなもの。あの程度で死んでしまうようではわざわざボクが出向くまでもない。あれはただ貴女方の力量をはからせもらっただけのこと。そして貴女方は見事その試練を乗り越えられた。オメデトウゴザイマス。晴れて貴女方はゼノル様の敵となりました」
「敵になりましたか、ずいぶんと上からものを言うじゃない。壊すわよ」
真理は笑う、しかしその笑みはいつものような暖かなものではなくまさに氷のように冷ややかなもの。
「おっと、それは勘弁願いたいですね。ボクまだゼノル様から戦闘の許可もらってないんですよ」
「知ったことかそんなこと!!」
日鶴へと疾走する真理、しかし敵は攻撃が繰り出されるよりも早く近場の木々へ次々に飛び移り姿をくらませる。
「チッ、なんて跳躍力」
攻撃をかわされた真理は苦々しいげに歯噛みをする。
「随分とせっかちなのですね、朝岡真理。しかし先ほど申し上げたように今回は挨拶だけ。そういきり立たなくとも近い内また会いますよ。その時は全力でお相手させていただきます」
木々のざわめきにまぎれながら聞こえる宣戦布告、こうしてゼノルとの戦いの幕はきって落とされた。




