第18話!!
鼻をつく硫黄の臭い。
その臭いについつい鼻を塞ぎたくなる気持ちを抑えつつ、僕らは目的の宿屋へと向かっていた。
途中、真理さんが何度も歩きたくないと駄々をこねていたが今はもうそんな気力もないのか死んだように黙って大人しい。
今、僕らが来ているのは電車で三時間ほどかかる場所にあるとある温泉街。
温泉街といっても別段観光で来たわけではなくただの仕事。
そう、事は確か二日前まで遡る。
「えっ、温泉旅行?」
その単語にピンと食い付く真理さん。
「いえ、温泉旅行ではなく温泉街に仕事に行ってもらうだけです」
それを冷静に突っ込むシンさん。
シンさんは、このようにたまに仕事の話を持ってきては僕らの近状を聞いたりしてくる。
ようは監視役といった所だろう。
そういえばこの人はセナさんたちと同じ組織か何かみたいだけど人間なんだろうか?
まあ、たとえ人間だとしてもこんな所に来る時点でまともではないだろうけど、僕みたいに。
「・・・・・」
「それで、仕事って?」
そうそうに要件を聞き出すセナさん。
「はい。まあ、簡単な話。妖怪退治ですよ」
「妖怪退治!?」
その内容に僕らは唖然とした。
「人食い鬼の住む温泉街か」
誰もいない土産屋を眺めながらそう呟く真理さん。
そう、それこそが今回の仕事内容だった。
いわく、この町は呪われている。
初めは小さなことだった。
一人の不良娘が姿を消したのだ。
その子は日常的に家出を繰り返しており、数日間姿を見せないなんてことは日常茶飯事であり誰も気にも留めていなかった。
またしばらくするとひょっこり帰ってくるだろうと・・・・。
しかし彼女は帰ってこなかったいつまでたっても。
いや、彼女だけではない。
その日を境に次々と人がこの町から消え去っていった。
そして町の人々は身の危険を感じ一人一人町を出ていき気づけばその町は死街となっていた。
「そしてその原因が・・・」
「鬼神」
「でもセナ、その情報って確かなワケ?あまり信じられないんだけど」
「シンが持ってきた情報だ。アイツは不確かな言わないからな、信用していいだろ」
「・・・セナってさあ~、シンのことはやけに信用してるよね。なんかあんの?」
「・・・・」
意地悪な笑みを見せながらそんなことを聞く真理さん。
それに対しセナさんは終始無言だ。
本当に何かあるんだろうか?
でも今、そんなことより気になるのは・・・
「あの、鬼神ってなんなんですか?」
さっきでた一つの単語だった。
「・・・・」
僕の言葉に見せる二人の反応はそれぞれ。
真理さんはさもめんどくさそうな顔をし、セナさんはああ知らないんだという反応をする。
そこはやはり人格の違いだろう。
真理はユウへの説明をめんどくさがり先に進もうとするが、セナが律儀に説明を始めたため身動きができない状態になりさらにイライラを増してしまっている。
「ユウ、鬼神っていうのは私たち人外の一種だよ。生き物の生肉を喰らい自らの力にしている鬼のこと。見た目は様々だが人を食うやつはたいがい外人の姿をしている。見た目が人に近くても奴らは人にはない身体能力と特殊な力を持っている。とりあえずお前はこのあたりで人を見かけたら近づかないようにするんだな」
「人を食べるって、どうして?」
「生きるためだよ。奴らは生きるために生肉を食べなくちゃならない。そうしないと体を保つことができないんだよ」
「セナさんたちは?」
恐る恐る聞いてみる。
「・・・私は違うよ、セレナも真理もね。人外ではあるけど鬼神じゃない。人肉を食べた事はないよ」
それを聞いて安堵する。
少なくともセナさん達はそこまでの化け物じゃないということに。
「もう、いいか?」
「最後に一つだけ。なぜ今回この仕事に僕を連れてきたんですか?僕はただの人間ですよ。人外退治なんてとても」
「別にお前には何も期待していない。ただ、私たちの仕事が終わるまで大人しくしてればそれでいい」
「じゃあ、なんで連れてきたんです?たいきなら別に家でもできるじゃないですか」
「それは・・・」
「セレナちゃんがいるからよ」
セナさんの声に真理さんの声がかぶる。
いったいいつの間に戻ってきたのだろうか?
「セレナさん?」
確かにセレナさんは今回の仕事にはメンドクサイとの理由で参加せず現在家に待機しているが、それがいったいなんなんだろうか?
関係ないと思うのだが。
「何かあるんですか?」
「別に、アンタが知ることじゃない。それよりサッサッと行くよ。目的の場所ってあそこでしょ」
真理の指差す方向にあるのは一軒の宿。
ガラスは所々割れており、よく見れば柱なども腐ってしまっている。
とても人がいるようには見えない。
ユウはその外観と真理の先ほどの冷たい一言に気分を沈めてしまったが、今は一刻も早く歩き続けたその足を休めさせたいがためにフラフラと真理たちに続くようにその宿へと入っていった。
宿についてから三十分後、宿から少し離れた場所にある川にかかる赤い橋、そこにユウの姿はあった。
彼がこんなところにいる理由は簡単、宿に一つだけある露天風呂を今、真理とセナが使っているためやることのない彼は一人こんな場所で時間を潰していた。
「それにしても、唯一ある温泉が混浴だなんて、まったくどうかしている。僕だってゆっくりしたいんだぞ」
川を眺めながらつい愚痴ってしまう。
ピク
ふと、誰かに見られているような気がして辺りを見回した。
するといた、橋の向こう側に一人の女の子が。
赤い着物を着た、黒髪の女が。




