2008年 11月5日 1:08 永眠 神威 渚氏
これを読む頃には、私はもういません。
私の死因について、誰かが話していたら信じないでください。
事故でも、自殺でもありません。
私は、音に見つかりました。
最初は、小さな音でした。
……コツ。
時計の音だと思いました。
次の日も。
……コツ。
三日目。
コツ。コツ。
四日目には、音は部屋の中を歩き始めました。
廊下。
コツ。
扉の前。
コツ。
ベッドの横。
コツ。
私は怖くなって叫びました。
「誰だ!」
返事はありませんでした。
代わりに、音だけが止みました。
安心したのも束の間でした。
耳元で、誰かが泣くような声で言いました。
「愛されたかった。」
その一言だけでした。
それから毎晩、音が鳴るたびに、その声は少しずつ近づきました。
コツ。
「愛されたかった。」
コツ。
「見つけてほしかった。」
コツ。
「返事をしてほしかった。」
私は返事をしませんでした。
返事をしたら終わると分かっていたからです。
でも、一度だけ耐えられなくなって、
「ごめん。」
と言ってしまいました。
その瞬間。
音は消えました。
静寂でした。
もう終わった。
そう思って目を閉じました。
すると、私の口が勝手に開いて、
私の声ではない声が言いました。
「今度は、私が愛される番。」
もし、この遺言を読み終えたあと。
部屋のどこかで、
コツ。
と一度だけ聞こえたら。
何も言わないでください。
かわいそうだと思わないでください。
慰めようとしないでください。
あれは助けを求めているのではありません。
「愛されたかった。」
その言葉は願いではなく、
次の誰かに、自分を愛させるための合図です。




