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騎士団から弾き出されるモブキャラに転生した俺は、悪魔と共に世界を書き換える  作者: すなぎも
悪魔との契約・追放の制裁編

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第29話 後処理 ―ノエル視点―

 黒鎧が去った後のスラムには熱気が残っていた。

 戦いを見ていた住民が影から視線をこちらに寄こし、騎士達が牽制している。


 私は顔を上げ、黒鎧が立っていた屋根の縁を見上げた。

 そこに彼の姿はないけれど、脳裏に焼き付いた剣の扱いは直ぐにでも思い返せる。

 攻撃を面で受け流すような、芯を外して力を逃がす防御方法。

 踏み替え一歩、肩の入れ方、間合いの取り直し。


「そんなわけ、ないわよね」


 一緒に剣を鍛えた相棒。

 なんで私は黒鎧に彼を重ねてしまったのか。

 雰囲気も、出で立ちも、喋り方も、声もなにもかも違う。

 それなのに、なんでノアのことを。


「大丈夫か? ノエル」


 振り向くと、トウカが駆け寄ってきた。

 肩で息をしながら、目は冷静に全体を見ている。


「大丈夫です。それより、フィリップは」


 ちょうど小屋から騎士が2人、ぐったりしたフィリップを運んで出て来た。

 彼は口元に泡を乾かしかけ、瞳は焦点は合っていない。

 麻薬の毒が完全に回っているのか、。荒い呼吸に合わせ、薄い汗を流している。

 いつも飄々としていた姿とは考えられない、哀れな姿。


「譲る……。ね」


 黒鎧はそう言った。

 彼が本気を出せば、私も、ここにいる騎士達を殺すのも簡単だったはず。

 それほどの実力差は感じた。

 だけど、彼はそれを言うことなく、譲ると言ってこの場を引いた。


 わからない。黒鎧の考えが。


 けど、譲られた以上は確実にフィリップを裁く必要がある。

 取り逃がせば黒鎧が裁きに来る。

 正義の名ではなく、個の意思で。

 

 けど、そんなのとは関係なく。

 フィリップを逃がすのは、私のプライドが許さない。


「ノエル。疲れているように見えるが」

「……いえ、少し考え事を」


 私の視線を追って、トウカさんが察する。


「黒鎧のことか」

「不思議な奴です。奈落の一件で少しは彼のことをわかったかと思ったんですけど、とんだ思い違いだったみたいですね」


 なかなかどうして、彼の思考を読むのは難しいのかも知れない。


「ガイオのこともあった。先に休むか?」

「問題ありません。護送経路は北の詰所経由にしましょう。それが速いはずです」


 屋根に影が揺れた気がして、反射的に目を上げた。

 月と雲。誰もいないのに、黒鎧の事が頭を離れない。


「ノエル」


 トウカの呼びかけに、現実へ戻る。


「休むかと聞いたのは、お前の判断が鈍るのを恐れたからだ。襲われる可能性はまだ残っている。油断は死に直結するぞ」

「……大丈夫ですよ。それに、黒鎧に任せる訳にはいかないんです」

「任せる?」

「取り逃がすようなことがあればオレが裁く。彼はそう言っていました」

「挑発と受け取ってもいいが、宣言とも言えるな」

「ええ。黒鎧は確実にヤルでしょう。だから、今は休む時ではないんです」


 譲られたことを手向けだとは思わない。

 だからこそ、私が最後まで見届ける。


 それを聞いて、トウカさんは力を抜けと、私の肩に手を置いた。


「だったらノエル。指示はわたしが取る。お前は警戒に専念しろ。いいな?」

「……はい。ありがとうございます、トウカさん」

「礼を言われることじゃない。さて、じゃあルートを変えるか。ノエルが言った経路は早いが薄暗い路地を通る必要がある。確実に大通りを行くぞ」


 言いながらトウカさんが騎士たちに近付き指示だしを始める。

 その背から視線を外して屋上へ向ける。


 やはり彼は、もうそこにはいない。


「ノエル、行くぞ!」


 呼びかけに歩き出す。

 彼の視線をどこかで感じながら、私は護送に集中した。

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