濡羽さんは部活を作りたい。1
高校一年の俺は、いつも通りの学校生活を送っていた。学校へ行き、授業を受け帰宅する。そんな日々を送っていた。そんな何の変哲もない日々でも楽しみがあった・・・・・・。
それは綺麗な景色を撮影することだ。景色を撮影して自分の住んでいる地域、県、国を知る。そんなことを毎日のようにしている。
そんな感じの日々の中でまだ暑さの残る九月の初め頃、二学期が始まって少し憂鬱な気持ちになってしまう始業式の日の放課後、俺は帰宅のために玄関へ向かっている途中の渡り廊下で絵に描いたような入道雲を見かけそのままスマホで撮影をした。うん、悪くないな。
そのとき、突然後ろから女性に声を掛けられた。
♡「ねぇ、烏羽君も景色の写真を撮るのが好きなが?」
振り返るとそこには同じクラスの女子、濡羽 冬乃が立っていた。彼女は綺麗な艶のある長めの黒髪を後ろでキュッと束ねた元気な女子で男子人気も高い。教室ではあいさつする程度の関係である。
☆「おお~、濡羽さん。そうやね、景色の写真を撮るの好きやね。特に綺麗な空を撮るのとかが。」
♡「やっぱそうながや!実はね、私も景色の写真撮るの好きながやき~。」
彼女は、そう言ってスマホの画面に表示された写真を見せてきた。そこに映っていたのは一級河川の「仁淀川」とその途中に架かる「名越屋沈下橋」の写真だった。
☆「名越屋沈下橋か。綺麗やね。」
♡「やろ~?夏休み中に撮ったこれ結構気に入っちゅうがやき~。」
それはそうと、なぜこの子は俺に声を掛けてきたんだ?
☆「そういや、俺に何か用があるが?」
♡「あっ、そうやった。ねぇ、烏羽君。私と一緒に写真部作らん?」
そんなことをいきなり言われ、俺はまた驚いてしまった。
☆「えっ?部ってそんな簡単に作れるもんなが?」
♡「まだ分からんけど、まず部員集めるところかららしくて部員集め中ながよね~。今入部してくれるなら副部長の座を烏羽君に与えよう。」
そう言う濡羽さんの提案は、部活動に所属していない俺にとって「写真部」というそれはとても魅力的に見えた。しかも副部長だなんて。
☆「俺でよかったら部員になるよ。むしろ部活も何もやってなかったから丁度よかったよ。」
♡「ホンマに!?ありがとう!」
もちろん断る訳もなく承諾した。
♡「なら連絡先交換しよ、色々連絡取れた方が便利だから。」
そう言って提示している濡羽さんのスマホに表示されているアカウントのQRコードを俺のスマホで読み取る。すると、「冬乃」という名のアカウントと先ほどの写真のアイコンが表示されていた。追加を選択するとまっさらなトーク画面が表示される。そこに一つのメッセージが送られてくる。
♡”よろしくおねがいします!”
俺はそのメッセージに対して
☆”よろしくお願いします”
と返した。そして俺は写真部副部長(仮)となったのだった。
あれ?俺高校に入って初の女子の連絡先獲得じゃね?
読んでくださりありがとうございました!