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第四話 冒険者組合

創達はギルドへ向かった。

(すれ違う人皆んな洋装って感じだな。一昔前のヨーロッパの服みたい。見てて面白いな。)

街の風景を見ながらそうこうしているうちにギルドに到着した。目の前にあるのは白い漆喰を壁にした四階建ての建物だった。

(三階建ての建物、ここがギルドか。入ろう。)

中はバーカウンターと複数の丸型テーブルとイスが並べられており、カウンターの隣に紙が複数枚溜められている掲示板のようなものがあった。

「うぉ...酒屋みたい...」

「依頼人様ですか?」

背後から女性に声をかけられた創達。

「えっと、依頼人、ではなくて。見学に来ました!」

「もしや冒険者の登録にいらっしゃったのですか?」

「いえ、本当にただの見学です。僕これから露天商的な、行商人的な移動販売をする予定でして主要なターゲット層が冒険者なんです。なので実地調査も兼ねて来ました。」

「承知いたしました。失礼を承知で伺いますが、身分証のご提示をお願いできますでしょうか?」

「はい。これですよね?」

創達は胸ポケットからアリナから貰った身分証を出した。

「拝見いたしました。ごゆっくりお過ごしくださいませ。何かご不明な点はございますか?」

「えっと、このギルドって主に何をしているんですか?」

「このギルドは一階が冒険者同士の憩いの場兼依頼書掲示の場所。二階は討伐部門、三階は採取部門となっております。一階では主に依頼(クライアント)の紹介と冒険者のコミュニティー形成。二階と三階で依頼の申請をしております。」

「申請って必要なんですね。」

依頼(クライアント)達成報酬の横取りが過去にあったのでこうなりました。以来、横取りは起こることがなくなったのでとても助かっています。」

(確かに仕事ができても誰がやったか証拠がなければ横取りし放題だもんな...リーマン時代も大きな商談を成功させた時に手柄上司に横取りされたし。公正に報酬を与えるためには必要な工程だな。)

日本にいた頃のことを思い出していた創達だった。

「申し遅れました。(わたくし)当ギルドの案内人、ロティス・アルファーンでございます。」

ロティスは腰を前に折って創達に一礼した。

「え、あ、八城創達(ソウタ ヤシロ)です。こちらこそよろしくお願いいたします。」

「少々注意点がございます。討伐部門の方々は一部気が短いことがあります。お気をつけください。ではごゆっくり。」

カウンターの奥へ戻っていったロティス。

(血の気が多いってことだよな、多分。変に触れるのは辞めておこう。)

「こんなド真ん中に突っ立ってるんじゃねぇよ、邪魔だ。」

1人の冒険者が創達の肩を小突いた。

「あ、すみません。」

壁際に移動した創達。

(なんか早速目付けられてる気がする...冒険者相手に商売するのって難しいのかな。)

移動販売をするか否か悩み始めた。

「どうしよう...」

「本当に売ってねえのか?嬢ちゃんよ。」

ある冒険者が案内人に不機嫌そうに問いただしていた。

「は、はい...回復薬(ポーション)などは販売していますが刀剣(ソード)は鍛冶屋さんにしか販売していないんです...当ギルドには販売していません...申し訳ありませんが他を、」

案内人の言葉を遮って冒険者は言った。

「今欲しいんだよ。次の依頼は大きいヤツでないと困るんだ。何とかならねえのか?」

遠くから見たら威圧しているようにしか見えない。

(もしかして、チャンスかも!)

「あ、あの!」

冒険者は創達を睨んだ。

「あ?こっちはお取り込み中なんだ。他をあたりな。」

刀剣(ソード)、僕持ってますよ。」

「本当か?!」

「はい。ちょっと待ってください。」

(言っちゃったー。さっき刀剣(ソード)作っとけば良かった。今手元に刀剣(ソード)なんてないよ...何でもいいから作っちゃえ!)

創達はスキルを使って刀身部分が太く、柄が持ち主によって変化する刀剣(ソード)を作り出した。

(うぉ...意外と何とかなった。)

「あの、これでよければ使ってください。」

創達は冒険者に差し出した。

「手に馴染みやすい刀剣(ソード)だな。コレ、アンタが作ったのか?」

「まぁ、はい。」

創達は冒険者に勢いよく肩を叩かれた。

「言い値で買わせてくれ!こんな手に馴染みやすい刀剣(ソード)なんて鍛冶屋でも手に入らねえぞ!」

「言い値って...うーん。」

(この国、いやこの世界の通貨知らないから値段の付けようがないんだよな。気に入ってもらえるなんて思ってなかったし。どうしよう。)

『共通通貨は白銀幣(プラチナ)紅貨(ルビー)蒼貨(サファイア)碧貨(エメラルド) 1番安価なのは碧貨(エメラルド)で逆に1番高価なのが白銀幣(プラチナ)

(面倒だな。推測だと白銀幣(プラチナ)が10,000円、紅貨(ルビー)が5,000円、蒼貨(サファイア)が1,000円、碧貨(エメラルド)が500円なのか?500円が1番安価って終わってる気がするけど、まぁそこは仕方がないのかな。今はとりあえずの値段を言っておこう。)

「1 ルビーでお譲りします。」

「え、マジかよ!アンタ良いやつだな!俺の名前はガーダン・ファイラ。なんか困ったことがあったら言ってくれ!」

ガーダンは創達の手のひらに1ルビーを置いた。

「え、あ、はい。八城創達(ソウタ ヤシロ)です。近々移動販売を始める者です。よろしくお願いします。」

「移動販売って何を売るんだ?」

「説明が難しいんですけど、主にサバイバルナイフ・料理用板(まな板)簡易住居(テント)・釘・外用敷物(レジャーシート)・イス・テーブル・簡易ベッド《寝袋》・魔物除けですかね。買う人のニーズに合わせて売る物を決めるつもりです。」

「ニーズが何か分からんが、アレか?野宿用の物品を売るってことでいいのか?」

「はい。そういうことになります。」

周りにいる冒険者がどっと創達の周りに集まった。

「なぁソレ迷宮(ダンジョン)でも使えるのか?」

「野宿するのなんか当たり前だから助かるぜ!実際に見せてくれよ!」

「他にも刀剣(ソード)売ってんのか?」

(き、筋肉の暴力、密着してないだけマシだ...)

「アンタら、群がるのは辞めろ。ソウタさんが困ってるだろ。」

「呼び捨てで大丈夫ですよ?」

ギルドの扉の鈴が鳴った。

「アリナさん!」

一同はギルドに入って来たアリナを見た。

「な、何ですか?」

冒険者達は創達を連れてギルドの隅っこへ行った。そして小声で言った。

「おいおいソウタさんよぉ、あの狂猫を名前呼びたぁどんな関係なんだ?」

「狂猫って、そんな呼び方されてるんですか?」

「アリナ・アルバーンは保安署の女性署員の中で1番強いって噂だぞ!ウィルヘンゲンの奴らは名字で呼ぶのに、怒られても知らねえぞ!」

(あ、そっか。ここ日本じゃないから名字と下の名前が逆になるのか。ナランさんが下の名前だったからてっきり良いのかと思ってた...)

アリナは口角だけを上げて創達がいる方に近寄ってきた。

「人のことを狂猫だの何だの。私はただ違法人がいないか調査に来ただけです。勘違いはよしてください。」

目の奥が笑っていない。

「ひぇ...」

「ガーダン・ファイラ。確かBランクの冒険者でしたね。」

「お、おう。」

「私は以前冒険者のランク付けに参加したのですが、何ランクだったと思いますか?」

「え、Aランクとか?」

「Sランクです。そこのところ、よく考えて行動することですね。」

「Sランクってどれくらい強いんですか?」

「世界にいる冒険者は現在約20,000,000人Sランクは上位3%程度。Aランクは10%程度、Bランクは30%程度です。AやBランクの中でも上と下があります。」

「つまりはめちゃ強い、と。」

「そういうことになりますね。」

(アリナさんには逆らわない方が良さそうだ。うん。)

「ガーダンさん、この後依頼があるんでしたよね?」

身を震わせたガーダンは一同から離脱した。

「じゃ、じゃあな!ソウタさん、また会おうな!」

「で、他の方々は、」

一気にギルドから人が消えた。

「鬼だとでも思ってるんでしょうか、ねぇ?ソウタさん。」

「さぁ...」

「いつもあんな感じなんですか?ロティスさん。」

「いつもあんなんですよ。アルバーンさん。」

「2人はお知り合いですか?」

「旧友ですね。ソウタさんはしばらくここにいるんですか?」

「まぁ、そのつもりです。」

「近くに酒屋があるのでいつでもいらしてください。」

「はい!じゃあ僕はここらへんでお暇します。また来ますね。」

創達はギルドを出た。

「人を見る目はある方だけど、アレは凄いわね。」

「あなたから見てもそうってことは、相当か。ありがとう。ロティス。」

「いえいえ。それにしても、何でそんなに肩入れするの?」

「私が一応身元引受人だからよ。保護下にある人間を危険に晒すことはできない。それだけ。」

「ふ〜ん。」

「何よ。」

「別に?早く保安署に戻ったらどう?」

「そうね。...もう帰ります。また何かあれば連絡してください。」

「分かりました。アルバーンさん。」

アリナはギルドを出た。

「大変だねぇ。」

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