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第三話 商売準備中

(アリナさんにここを紹介してもらったし、僕もできることをしよう。とはいっても何をすれば良いか分からないな。)

目が覚めたらいきなり知らない場所にいて戸籍が作られていた。全てがあまりにも早すぎて思考が半分追いついていない創達だった。

「どうしようなぁ。」

(やりたいこと、なぁ。今までは商社で働いててたから何か商いに関することがやりたい、ってそもそも会社なんて全部商いに関係あるから...どうしよう。そういえば、)

創造者(クリエイター)って記憶の中にある物を作ることってできるのかな。」

創達は試しにランタンを想像した。

(こっちに電気は無さそうだから魔力?で明るくする仕組みにして、持ち運び可能で使用方法が楽になる感じ。...待てよ、想像したところでどうやって具現化すればいいんだ?)

視界に文字が浮かんだ。

“ランタンを作成しますか?”

「え、はい。」

すると手元にランタンが出てきた。

「え、すげぇ。魔法って、すげえ。これ量産できるな。しないけど。」

(想像したものが実際に具現化できるのはかなり強い。キャンピングカーは今格納?してるから移動手段には困らない。各地を旅しながらキャンプ用品を売るとかいうのはどうだろう。この世界のことは何も知らないしちょうどいいかもな。ついでに日用品も売るか、よし。)

創達の部屋のドアが叩かれた。

「どうぞ!」

入ってきたのは一見アリナと同い年に見える男性だった。

八城創達(ソウタ ヤシロ)だな。俺はナラン。ナラン・リーシャ。この宿の主だ。アリナから話は聞いている。なんでも転移者らしいな。」

「はい。右も左も分からない若輩者ですがどうかお手柔らかに。」

「おう。聞いた話によると厄介な能力(スキル)を持っているらしいな。変なことするなよ?」

「変なことするなよって、言われてもですね...」

「...既にしてるじゃねぇか。お前。」

ナランはランタンを指差した。創達は先程作ったランタンを目の前に出した。

小型灯篭(ランタン)か?」

「はい。」

ナランは創達が持っているランタンを手に取った。

「燃料がいるタイプじゃなくて使用者の魔力で光るのか。魔力制御にも使えそうだな。これは、冒険者にでも売ったらかなり稼げるぞ。」

「冒険者って何ですか?」

「本当に何も知らないんだな。冒険者っていうのは文字通り冒険する人間のこと。魔物退治や調査とかを冒険者組合(ギルド)から依頼を受けて代わりに報酬をもらうんだ。まぁ、命の危険が少なからずあるからあまりお勧めできる職業じゃないのは確かだな。」

「そうですか。僕はそもそも運動できないのでそこは心配する必要はなさそうです。いざとなれば逃げるので。」

「ここは実力主義だから、自分で何とかしろよ。」

(何とかしろとは?)

「この世界で生きるには戸籍が必要になるが、それは大丈夫だよな?」

「先程作ってもらいました!」

「戸籍が作り終わったらカードにしていつでも掲示できるようにするんだがカードは持っているのか?」

(カードなんて、もらってない!)

「その反応、貰ってないな。アリナに請求しておくか。」

ナランは部屋から出ていった。創達はベッドに寝転んだ。

(父さんと母さんと兄さんと姉さん、大丈夫かな...いきなり僕こっちに来ちゃったけど。って、あの人たちが心配するわけないか。良くも悪くも放任主義だったからな。心配するだけ時間の無駄かも。あわよくば帰れるって考えた方が気が楽だな。)

深く考えることをやめた創達だった。

しばらく考え込んだ後創達は部屋の窓を開けた。

「空気が綺麗。あの山みたい。」

自分がこの世界に来る前に来た、あの老人にあった山。

(あのお爺さんが言ってた良いことって、こういうことだったのかな...確かに仕事は辞められて良かったし元の世界に未練なんてないけど身寄りはないし早々に追い出されそうだし何だかんだ大変だなぁ。)

黄昏た創達。

(何を売ろうかなぁ...ランタンの他にサバイバルナイフ、まな板。テント、釘、レジャーシート、イスにテーブル、寝袋。虫除け、じゃなくてこの世界は魔物除け?くらいかな。サバイバルナイフは短刀でいけるかもしれないけど一応入れておこう。)

視界の中に文字が浮かんだ。

(“サバイバルナイフ・料理用板(まな板)簡易住居(テント)・釘・外用敷物(レジャーシート)・イス・テーブル・簡易ベッド《寝袋》・魔物除けを作成”っと。作成したらキャンピングカーと同じく“格納”。多分これで大丈夫だな。)

商売の準備ができた。

「魔法が当たり前の世界、ね。」

改めて考えても不思議な世界。

「ただ空想上のものだと思ってたのになぁ。あれ、もしかして僕って死んだ?ここって天国?」

自分の頬をつねってみた。

「痛い...現実か。」

部屋の扉が叩かれた。

「どうぞ。」

「アリナです。カードを持ってきました。」

アリナは懐からカードを取り出して創達に渡した。

「ありがとうございます!これで商売ができます!」

「もう決まったんですか。さっき来たばかりですよね?」

「そうですね...いろいろ手続きをしてもらったので早く出たいな〜、と。迷惑をかけるわけにはいかないので。いきなり来た身ですし。」

「そんなに気にしなくていいのに...」

「気にするんですよねぇ。僕は。」

人に迷惑をかけることを極端に嫌っているのだ。

(友達の家に遊びに行ってそれ以降入り浸ってウザがられるような人間にはなりたくないし、そういう人は後で自然と周りから嫌われるからな。)

「あなたがそう判断したのなら止めません。ウィルヘンゲン以外に魅力的な街は沢山あるのでまわると良いですよ。」

「はい!そうします。」

創達は散策をするために宿を出た。


「ナラン。あなた彼に何か変なことでも吹き込んだ?」

仕事中のナランに声をかけたアリナ。書類仕事中だったためイラついたナラン。

「あ?何だよいきなり。事実を言ったまでだ。」


宿の外の空気は綺麗だった。自然豊かで鳥が鳴いている。

(昔ドイツとかフランスとか行ったことあるけどこっちの方が空気が綺麗だな...なんか、空気に何も含まれていない。)

道路は辛うじて舗装されている程度で科学が発展している様子もない。空気が汚れる原因は科学であることが多いためウィルヘンゲンは空気が綺麗と見受けられた。

(とはいえ、魔法が蔓延ってる世界だからなぁ。首都とかに行けば多少変わるかもな。色々整ったら行ってみるのもありか。って、もう物品は払ってるから外には行けるんだよな。暫くはウェルヘンゲンの中をキャンピングカーで回ろう。)

創達は宿へ戻っていった。


宿のカウンターにはナランがいた。

「リーシャさん!」

ナランはカウンター上にある書類に目を通しながら言った。

「ナランで良い。何の用だ?」

「ウィルヘンゲンのギルドってどこにあるんですか?」

「保安署の隣にある3階建ての建物がギルドだ。...もしかして冒険者をやるつもりなのか?」

ナランは一度手を止めて創達を見た。

「いえ、滅相もないです。攻撃魔法とか何も知らないので。これから僕のスキルで露天商的なものをやりたいんですけど、多分主なターゲットが冒険者の方々になると思うので実地調査に行きたいんです。」

「実地調査、ねぇ。」

「もしかして、ナランさんって冒険者嫌いなんですか?」

創達はナランが冒険者に対して良い印象を持っているようには見えなかった。

「嫌いとまではいかないがあまり良いところが思いつかない。命懸けで金稼ぎをするのが理解できないだけだ。命を落としたら元も子もないからな。」

「た、確かに...」

ナランは再び書類に目を落とした。

「行くなら勝手にすれば良い。ただし責任は取れんぞ。」

「分かりました。じゃあ今から行ってきます!」

創達は宿を出た。

「まったく、あんな奴らのどこが良いんだか。」

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