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4話「仲良くしてほしい」

「ヴィクトリア様、おはようございます!」

「おはよう、ノア」


 ノアを専属のメイドにしてから5日が経過した。


 彼女は私が読書をしていると、温かい紅茶を用意してくれる。

その瞬間は私にとって何より落ち着く時間だ。

 

「ノアの淹れてくれる紅茶、美味しいから大好きよ」

「ヴィクトリア様はいつも美味しいっておっしゃってくださるから、私も嬉しいです!」

「ノアって話しやすいしお姉さんみたい……」

「私にそんな勿体無いお言葉を……ありがとうございます!」


 姉妹がいたらと軽く考えながら、数日前のことを思い出す。


 ノアを専属メイドにすると決めた日、驚いた顔をしている使用人は大勢見えた。


今まで自分の意思を表に出さなかったヴィクトリアが自ら希望した。

その反応は想定内だ。


「あの新入り、良家の娘だったらしいわ」

「私たちのこと、見下してそう」


 廊下を歩いていると、ある部屋からメイド達の会話が聞こえてきた。本人達は聞こえないと考えているのだろうが、残念なことに筒抜け。


 でも、ノアは良家の娘だったのか。

彼女は元気がよくハキハキしているけれど、言われてみれば所作は完璧だ。それに教養もある。

 

「ヴィクトリア様も見る目ないのね」

「そもそもあのお飾り王女に取り入ろうとしてる時点で、頭悪いわよ」

「落ちぶれたお嬢様と、落ちこぼれ王女は相性が良いのかしら?」


 数日前、メイドの中には面白くなさそうな顔をしている者が数人確認できた。今話をしている彼女達は、先日ノアに水を浴びせた連中だろう。


「ちょっと、声抑えましょう? 誰かに聞かれたら……」

「聞かれたって構わないでしょ。ヴィクトリア様なんて怖くないし」

「でも最近、何処となく様子おかしいじゃない?」

「空気みたいな存在だったのに、急に堂々としてて……何か取り憑いたのかしら?」

 

 ドアの向こうから焦ったような声と、全く気にしていない声が聞こえる。

私がヴィクトリアである今、中身は別人なのだ。


 あながち間違いとも言い切れないのだが、流石に取り憑いたという表現には笑ってしまう。

使用人からでさえ、何かが取り憑いたと思われているのだ。


 きっと家族は更に違和感を感じているのではないだろうか。


「ヴィクトリアを見ていなかった家族から、別に気にしていないか」

 

 父親のフェランは、そもそも国を統治できているかも危うい。


全てに興味を示さないため、母親のミーナが裏で色々と手を回している。

 そんな母親は、息子を大切にしている反面、ヴィクトリアは嫁がせて利用しようと企んでいるだけ。

弟のアルビーは論外と言えるだろう。


 家族でさえも、みんな自分のことで手一杯。自分のことしか見ていないだろう。


 使用人は常日頃から誰に付くのが最も利口なのか、それを考えながら仕事をしているようだ。だからこそ、優先順位がつく。


 ヴィクトリアは、誰からも期待されていない。彼女に興味を示している人物の方が少ない。


「そろそろ仕事に戻りましょ。叱られるわ」

「メイドなんてやってられないわよね」

「またノアに仕事押し付けてあげましょうよ」

「そうね――あ、の! ヴィ、ヴィクトリア様!?」


 メイド達が複数人ゾロゾロと部屋から出てくる。あの中で一番大口を叩いていたメイドは、明らかに青ざめた顔をしながら私を見る。


 そりゃあ真っ青にもなるでしょうよ。全部聞かれていたかもしれないんだから。


「ご機嫌よう。皆さん休憩は終わったの?」

「は、はい……今から取り掛かります!」

「メイドの仕事なんてやってられないわよね。お疲れ様」


 そんなことは……と苦笑いを浮かべている。

もじもじと手を動かしている動作からも、彼女が動揺していることが伝わってくる。


 他のメイド達も、私とは全く目を合わせようとしない。


「安心してね。私はやめたいと思ってる人を引き留め、仕事をさせることはしないの。でも仕事に支障をきたす人を続けされるお人好しでもない……私は弟より優しいはずよ。やめたいなら辞めさせてあげるもの」

「いえ、そんなことは! どうかそれだけは!」

「何を焦っているの? 誰もあなたのことだなんて言っていないじゃない」


 先ほどまで大口を叩いていたメイドはあたふたしている。それが可哀想に感じてしまう。


 これではパワハラ上司と大差はない。ただ、使用人内でのトラブルも避けるようにしてほしい。


「あなた達には普段から感謝してるの。本当にありがとう。ただ、同じ働く者同士、仲良くしてほしいわ」

「はい……」

「も、申し訳ありません!」


 とりあえず、これでノアへの嫌がらせが止んでくれると良いな。


 時刻は丁度おやつ時。ノアには、私の部屋でお茶を淹れてくれるように頼んでいた。

 早く飲みたくなって、少し急ぎ気味に部屋へと戻った。

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