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その名はマリリン

6話 その名はマリリン


 診療所の方へ行ったクルマの乗員。

 アレはなんだ? 黒いスーツ。 

 診療所で不幸でもあったのかな? と思ったが、喪服で病院に普通行かないだろう。 


 UFOにMIBの出現。

 大田和じゃなくても知ってる。

 でもアレ本物?


 なんだかいろいろ気になったので家に帰るなり、かあさんに。


「町中で、裸の女の人? なにそれ? 見たのあんた?」

「なんだソレ? 裸の女が見たいのかサダヒコ」

 

 オヤジが帰っていた。


「かあちゃんのおっぱい欲しいって泣いていたサダヒコが色気づいたか。ああ、俺も歳くうわけだ」


 おっぱいって、いつの話だオヤジ。

 相変わらず口がわるい。


「おっぱいでっかくて、脚出して歩ってる女かい。知ってるよ」


 コタツで寝ていたと思ったばあちゃん。

 聞いてたの? でもばあちゃん、おっぱいデカいって言ってない。


「何処の誰だか知んねえけど最近見たなあ」

「ばあちゃんそれ、そこの林道?」

「ああ、佐藤医者の近くで見たよ。ありゃ外人さんかな?」

「ボインの外人の女。俺も見てなぁ」


 クロガネみたいなことを言ってる。


「サダヒコ。そりゃ多分『ノッポのマリー』じゃねーの。最近よく見かけるって。仲間うちで勝手にそー言ってる」


 ノッポのマリー。スゴい情報だ。マテラに話してやろう。

「ばあちゃん、その人は診療所に居る人?」

「さて。わしは知らんな。でもあそこの先生は昔は外人さんだった」

「あそこにはもう入院施設はないからなぁ。居るってことはねーだろ」


 じゃ通院患者かな。

 たいした情報じゃないがボク以外にもあの人を見ている。

 UMAではないのは確かだ。って失礼か。



 翌日の夕方。


 部活終わりにドーテーと帰るのは初めてだ。というか高校に入ってもだ。

 同じ町内に家があるのだから一緒になってもおかしくはない。部活が一緒になったからだ。


「あの大きな外人女性のことなんだけど」

「また会った?」

「いや、ボクの家族が知ってたんだ。オヤジが、父が、父の仲間内であの人をノッポのマリーって」

「ノッポのマリー。なんか聞いたことあるなぁソレ……唄のタイトル?」

「祖母は診療所の近くで見たって」


 あっ今のは。


「ドーテー今の見た?」

「霧島ぁ町中でドーテーは」

「そこの角曲がったの」


 あたしは、まがり角まで走って確かめた。


「どうしたの急に?」

「ドーテー。アレ」


 前方を歩いている。あの人だ。

 しかも、あの人に。


「マリリンおネーちゃん。バイバーイ」


 幼稚園帰りの親子があの人に、お母さんは会釈をした。

 親子の自転車があたしたちの横を通り過ぎた。 と、ここまであたしらは唖然としてた。 


 ウォーキングのジャージ姿のおじさんが。


「こんにちはマリリン」

「コンニチハ」


「見た。ドーテー」

「見た。普通に挨拶していた。しかもマリリンって」


 まだ衣替え前で寒い。ウォーキングのおじさんだってブルゾン着ている。

 相変わらずあの真夏の太陽の下にいるようなかっこうのあの人を誰も変に思わないのか?


 あたしは前を歩くあの人に近づき声をかけた。


「こんにちは~。お久しぶりです。あたしのこと覚えてます?」


 一瞬目を見開きあたしを見て上を見てから。


「覚えてる。落とし物したパンツ」

「霧島ぁパンツ落としたの?」

「違うわよ。落とし物はしたけど」

「こんにちは。ボクも二度目ですけど、覚えてます? 林道で連休中に」

「リンドー? レンキュー?」


 今度もドーテーを見て。


「わからない」

「ボク、堂島といいます。林道の近くに住んでます」

「あたしはキリシマ・マテラです」

「ドーチマとマテラ……。マリリン」

 

 と自分を指して言った。マリーじゃないぞドーテー。

 と、ここで突然「ノッポのサリー」という唄のタイトルを思い出した。


「あのぉ佐藤診療所知ってます?」

「サトーシンリョージョ……ハカセの家」


「ハカセ……。マリリンさんフランケン大乱闘事件知ってます」


 何聞いてんのいきなりバカか天然なのドーテー。


「ラントージケンなに? フランケン知ってる……ハカセ」

 

 知ってるって、小説のフランケンシュタイン博士のことを言ってるのかしら?


「ハカセって診療所の佐藤先生ですか?」


 佐藤先生ってどういうことよドーテー?


「そうハカセ。サトー・フランシタイ……」


「佐藤腐乱死体? なによそれ?」

「霧島、佐藤フランケンシュタインじやないですか。詳しくは知りませんが。診療所の佐藤先生は昔日本に帰化した外国人の子孫らしいと聞いたことがあります」


 さすがあたしよりココに長く住んでるドーテー。


「フランケンシュタイン博士って架空の人だよね。あの物語とは関係ないんじゃ」

「ですよねアレは小説ですから」

「フランケンシュタインって名字はメジャーなのかしら?」


 とか話していたら、マリリンはさっさと行ってしまった。

 この先はスーパーだ。買い物ね。


「佐藤診療所、行ってみようか。何かわかるかも」

「面白そうですね」


 この町の診療所にフランケン先生がいる。



 ひび割れたコンクリートの駐車場。倒れかかった古い看板に消えかかった太い文字で佐藤診療所と書かれている。

 そこへ一台の黒いベンツが停まった。

ベンツを降りたのは黒い帽子、黒いサングラス、黒いスーツ姿の二人。

 痩せて背が高い男と太めの小男だ。


 男たちはドアの「休診」と書いた札を無視して中に入った。

「こんにちはドクター佐藤」


              つづく

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