MIB
5話 MIB
「堂島、まさかフランケン見たの? それとも新しい噂でも」
「先に言っときます。そういう話じゃないから。でっかい。縫いキズだらけ。というキーワードで出会った人物のコトで。連休中のことです」
「傷だらけのデカい奴と、会った話? オレはそんなのとしょっちゅう殴りあってるけどなぁ」
「クロガネ君の言うようなのとは違うよ。夕方、家の近くの林道を散歩中見かけたんだ。でっかくて傷痕の沢山ある人」
夕方。傷痕が沢山ある人ってドーテーそれっ。
「買い物帰りだと思うスーパーの袋を両手に持ち歩いてた」
「傷痕だらけの奴が買い物の帰りって、なにかされたのか? 堂島ぁそいつに殴られたか? それならオレが」
「クロガネぇいちいち……。ねえ堂島、その人、外国人で女性でしょ?」
「えっ霧島も会ったの」
「やっぱり。その人、この時期に真夏みたいなカッコで歩いてたんでしょ。だから傷痕が見えた」
「マテラ、この寒い中、真夏のようなカッコってビキニで歩いてたのか?」
「バカクロガネ……。まあ似たようなカッコだったけど」
「スクール水着とか?」
「アンタもバカか、ゴーレム! そんな奴もっといないわ」
「白い水着のブラみたいのに短パン姿だよ。寒くなかったのかなぁと。その人、ウチの方向と別れ道の林道通って診療所の方に」
診療所。やっぱり。
「ドーテー、あんたなんてこと語ってんの」
あっつい言ってしまった。
「堂島って童貞なんだ? なんでマテラ知ってんの?」
「違いますよ。それは……まあ童貞ですけどボクは」
ドーテーは赤くなって言った。
「ゴメン堂島。これは彼の。クラスでのあだ名なんだ」
部内では言わない約束してたんだが。
「まああだ名の話はともかく。デカい、傷痕いっぱいで、あの人を怪物の話で出すのはどうなの。多分あの人は障害者で事故で感覚がマヒして寒さとか感じない体なんじやないかと。可哀想な人よ」
「そういうの映画でありましたよね事故で痛さを感じなくなりヒーローやってるみたいな」
「ゴーレムってば」
「なんだっけ? その映画」
「モモネ!」
「マテラ、その外国人の女って若いの?」
「だからぁクロガネ!」
「若い? ん……二十代かなあ。顔にも傷痕あったけど色白で目の青いスゴい美女でした」
ドーテー。男はこれだから。
「ビキニの美女かぁ逢いてぇなぁ」
「ボク、小学生の時、裸で自転車乗ってたオバさんなら見ました。そのオバさんは近所で有名なあぶない人で」
こらこらゴーレム、なに言いだす。
「あたしはおじさんで見た。変態オジさん。おまわりさんに捕まってたよ」
モモネまで。
「そういゃあ春だからなぁ。頭のおかしい変な奴多いよな」
まったく何いってんだかこいつら。
多いのか? クロガネ。あたしは見たことないぞ。
「あたし、彼女と話したけど変な人じゃなかったわ」
「すみません。UMAネタですけど。こんな話思い出したちゃたな。中国で撮られた野人の動画だと日本のテレビで流しちゃたんだ。それには全裸の男の人か動きまわってた映像が。実はその人は精神障害者の人で。後で、その動画いろいろ問題になったと」
「それ、最近読んだコンビニのUMA本にも出てたわ」
「さすが部長」
帰宅途中。
ボクが見たあの人、気になるなぁ。
霧島に怒られちゃたけど。もう一度会ってみたいな、あの人に。
帰宅途中あの時の林道を歩いていた。
目の前は診療所へ行く分かれ道だ。
あそこに居るんだろうかあの人は。
クルマのクラクションが、高々と鳴り響いた。
え、このせまい林道にクルマ?
振り向くと黒いクルマがノロノロと。
ボクは林の中へよけるとクルマは診療所の方へ曲がって行った。
左ハンドル。外車だ。
ゆっくり走って行ったので中のドライバーと助手席の人が見えた。
僕の頭の中に英字3文字が浮いた。
MIB
つづく