町は大騒ぎさ
2話 町は大騒ぎさ
廊下に出てみると、大勢が窓を開け上を見ていた。
「部長、屋上!」
一番走れなそうなゴーレムがドタドタと屋上に走った。そのあとに山本ちゃんとモモネが。
あたしとドーテーは前の窓を開けて空を見た。
「アレは?」
「UFOですね。未確認飛行物体」
そいつは雲一つない夕暮れ前の青空にふわふわと浮いていた。なんだかクラゲみたいなやつだ。
校庭には部活していた生徒たちがみんな上を向いている。まだ、学校にこんなに人がいたんだというくらいの数だ。
あーっ!
大勢の声があがった。
クラゲみたいのが細くなって東の方に飛んで行った。その姿は空飛ぶイカだ。東は海の方だ。
〘午後3時頃大海田町上空にUFOが出現したと騒ぎになりました〙
千葉テレビで今日の話題みたいなので放送されてた。誰かが撮ったスマホの動画が映されている。
十何年生きてきて始めて見た生UFOだった。まさか学校で見るとは。
屋上から降りて来た連中は細くなる瞬間を見れなかったと残念がってた。特にゴーレムだが。彼はUFOマニアでもあった。
「オレの撮った動画、チバテレで流れちゃたよ」
翌日学校では昨日の騒ぎがもっと大きくなっていた。クラスで話題にしないヤツがいないくらい。
あのチバテレのUFO動画はクラスの奴のだったのか。そういえば聞き覚えのある声が入ってた。
「部長、ボク悔しいです。興奮して撮影出来なかった。朝のニュースでも別の動画やってましたよね」
放課後の部室でゴーレムがなげいていた。
「みんなアレ、UFOと騒いでるけど、アレは妖怪の類いではないかと」
山本が。彼女らしい。
「アレは妖怪だと『一反もめん』とか『のびあがり』じゃないかと」
「一反もめんはくるしいかな、はじめはクラゲみたいだったし。クラゲ型は海外で目撃があって日本じや珍しいタイプです」
「生物的なのは妖怪に近いんじゃないの」
「ボクはアレはUMAスカイフィッシュじゃないかと」
このまま続けるとまたはじまりそうだ妖怪UMA論争。
「UFOのニュース見てジイちゃんが言ってたけど役場に隕石があるって知ってる?」
モモネ今度は隕石か、どんどんあたしのモンスター研究部が。
「その話し知ってます。昔あった『大海田ロズウェル事件』ですね」
そんなの地元のあたしも知らないのに隣街のゴーレムが。
「ロズウェル事件は聞いたことあるけど、なんなのソレ?」
「部長は大海田ですよね。役場に昔この辺に落ちた隕石が飾られているんです。ボク、見たことないんですけど。アレはUFOの破片という噂が」
「それって落ちたのは隕石じゃなかったってこと?」
「さすが部長。当時『空飛ぶ円盤』が落ちたと騒がれたとマニアックなUFO書籍に載ってます」
「へえー。モモネのジイちゃん、その話詳しいの?」
「さあ詳しいかどうかは」
朝の全国区で流れたニュースのせいか、この前の大勢の目撃前よりの個人的目撃が多くあったのがわかった。
コレに飛びついたかたちになって部活としてゴーレムが町中でUFO目撃の取材をはじめた。
「大田和はりきってますね。ウチはUFO研じやないですよね」
「そうね、いっそうムー研とかに変えようかしら」
「それなら、なんでもありでイイんじゃ」
「ジョーダンよ。あたしのモン研は……」
ピンポロパラロン
「なにその音? モモネ」
「LINEです。墓石の上にまたUFOが出たって」
「墓石?」
「あの畑の真ん中のマンションです」
それはなぜだか使われない畑のあった土地に建てられた15階建てのマンション。見た目が巨大な墓石に見えるのでそう言われてる。一部では大海田町のランドマークとも。
「ああ町長が住んでる。でも学校から見えるの?」
「私の友人からも、屋上から見えてるって。わたし見てきます」
山本が部室を出た。
この目撃も翌朝のワイドショーで報道された。
「オレ、今朝インタビューされちゃた。UFO見ましたか? 今、見てない人、この町にいないんじゃねーの」
テレビで動画が流れたという浅田が騒いでいる。
「なんかスゴいね、町中UFOの話題だらけだ。テレビ局の撮影隊とか来てるらしい」
「なんでまた急にUFO出始めたのかしら?」
「だよね。なんなんだろう」
「ドーテーに聞いてもわからないよね」
「だから、ソレ」
放課後ゴーレムが外からモドッてた。それに久々にって、珍しい奴が。黒いジャージ姿のクロガネが居た。山本沙織の隣に。
「ホントですか先輩?」
「ああ、何度か見た」
「え、何度も!」
どうやらクロガネはカッパを見たと山本に話している。
「渋井トンネル知ってる?」
「いえ、わたし大海田じゃないんで」
「そのトンネルの先に玉々の池ってのがあってそこに出る」
「クロガネ、知らないの玉々池のカッパは鳥居さんとこの爺さんだったて」
「はぁ知らねーよ。オレち海田地区だから」
「こっちの地区じや有名よ。モデルちゃんからかわないで」
「モデルちゃん……部長、わたしが読者モデルしてたの知ってるんですか?」
えっそうだったの知らなかった。あんたの愛称のつもりで。
「あっそうだ。大海田の人に聞いて見たかったんですけど。『フランケン大乱闘事件』知ってます?」
つづく