3 結婚することになったようです
辺境伯領の首都周辺見学コースはフレイヤ団長にお任せで、城壁の外に出てからは平坦な道を進んでいた。しっかりと道が作られているので揺れは少ない。
窓を開けて外を見ながら。
「カティ、山から煙があがっているわ!」
「火山がありますからね。過去には噴火したこともありますし、毒ガスが充満している恐ろしい場所もあります」
「火山があるのなら温泉もあるのかしら?」
「ありますが、なかなか活用はできていませんね」
「まぁ、どうして?温泉ってとても人気なのでしょう?私も入ってみたいわ」
肩こりに効くと聞いたことがあるので、是非、試したいと思っていたのだ。
窓を開けてゆっくりと走らせているため、辺境伯様が『人手が足りない』と会話に入ってきた。
「『住みたくない領地ベスト10』に入る土地だからな。余剰人員がいないため観光地には手が出せない」
現状、農業も商業もきちんと回っている。貧困層もなくはないが、領地が荒れるほどの貧民街はない。
「仕事にあぶれた者達は高齢であったり、患っていたりで観光地で働けるほどの体力がない」
「観光地としないにしてもお客様を呼ぶ湯所ならば、痩せ細った老人達だけで営業するのは難しいですね」
客商売は印象により売上が左右される。もちろん品質が良ければ売れるが、それでも店員の態度が最悪だと、売れるものも売れない。
温泉を商品とするのならば元気一杯、健康な労働力がほしい。
「領民向けの湯処にするとしても、宿泊施設、お土産店、それに掃除夫、警備員と医者、あとは乗合馬車も必要かしら」
わぁ、単純計算で百人は必要だ。
「温泉は近くでも沸いている場所がある。地元民しか行かない場所だから、行きたいのならカティと護衛を最低でも五人は連れていけ」
「そんなにいりませんよ」
「若く美しい娘が湯に入るのだ。もっと護衛がいても良いくらいだ」
護衛に囲まれて温泉って、全然、休まらない気がする…。
むぅ…としていると。
「あの…、まだ確定情報ではありませんが、人材に関してお耳に入れたいことが」
フレイヤ団長が辺境伯様と私に言う。
「第三騎士団は街道警備ですから、旅行者を見かけた時は声をかけるのですが…」
明らかに平民で乗合馬車のような団体をいくつか見かけた。
乗っている人達は家族連れだったり、夫婦だったり、単身者とバラバラ。犯罪者ではないことは話せばわかる。ごく普通の一般庶民。
そして全員が辺境伯領への移住を希望していた。
「私はまだ会ったことがないのですが…、皆、レンクス子爵領から引っ越してきたと答えているそうです」
驚いた。
正確な人数はわからないが、フレイヤ団長が受けた報告だけでも四、五十人はいる。
そんなにたくさんの人が…、本当に?
「人数が増えてきたのでそろそろ役場からも報告があがるかと思います。その、移住希望の者達が言うには、少なくとも百人以上、二、三百人は来るのではないかと…」
辺境伯領はとても遠い。
私だって一カ月もの長旅で死にそうになってしまった。
なのに…、どうして。
聞かなくてもわかる。他に理由がない。みんな…、私を心配して?
ぶわっと涙があふれた。
子爵領から出て行けと言われた時も、父と母との別れでも涙は出なかった。
でも、これは駄目だ。
優しくされたら弱くなる。心配されたら頼りたくなる。
わんわんと声をあげて泣きながら、早く皆の顔を見たいと、一日でも早く城を出ようと考えていた。
お金は貯まっていないし行くアテもないが、子爵領の皆がいるのならそこで一緒に生活しつつお金を稼ぐ方法を考えればいい。
お世話になりました。と、出て行く気満々で辺境伯様に挨拶をすると、絶対に許可できないと断られた。
「城を出て行くことは許可できないが、子爵領から来た者達と会うことは許す。私も会ってみたい」
「え、辺境伯様も、ですか?」
「何か不都合でも?」
「いえ、みんなビックリするだろうなと思って。辺境伯様のような美男子って子爵領では見たことがないので。探せばいたのかもしれませんが…、顔が良いだけでなくスタイルと姿勢と、あと雰囲気?貴族特有な高貴な雰囲気というものが滲み出ていますからね。庶民では出せない存在感ですよ」
「それは…、褒めているのか?」
「まさか。見たままの客観的な意見です。ご安心ください、容姿で好きになることはありません」
ぶふっ…と辺境伯様の侍従が肩を震わせている。ちらりと背後を見ればカティも笑いをこらえている。
辺境伯様がコホンッと咳払いをして。
「ともかく、移住希望者からは私も話を聞きたい。移民担当官と協議の上、代表となる者を何人か呼ぶのでおとなしく待っているように」
辺境伯様がそう言うのならお任せしても大丈夫だろう。
お言葉にあまえて私は部屋でのんびりと過ごす。
ご飯も美味しいし、おやつもいただけるし、なんだか衣装も増えている気がするし。衣装だけでなく髪飾りや宝石もあるような…、借金が増えていくようでドキドキだわ。
うぅ、出て行く時に請求されませんように。
子爵領からの移民代表と会う日。
朝からカティとメリルだけでなく、他にも若いメイドが三人もやってきて、隅から隅まで磨き上げられた。夜会で着るような豪奢なドレスではないが、普段着のワンピースとも違う上品なドレスを着ている。ベースは黒だけど銀糸の総刺繍でとても華やか、そしてお値段を考えると眩暈が。
ドレスの上からレースのストール、そして真珠のアクセサリー。ドレスで隠れている靴にも真珠が飾られていた。
お、お値段を考えると眩暈がっ。
ともかくきれいにしてもらい、城の中にある会議室へと向かった。
ところで、何故、隣に辺境伯様がいてエスコートされているのかしら。辺境伯様も黒のお召し物で騎士服のようにも見えるが上着の丈が長い。
ロングコートって背が低いととてもかっこ悪くなってしまうのよねぇ。私はあまり背が高くないため、かっこいい服が似合わない。
「本日、代表として来た者達は三人とのことだ。子爵家で執事をしていた…」
「えっ?」
さすがに驚く。
「執事のエヴァンスが来ているのですか?」
「あぁ、さすがに本物かどうか…、私達にはわからないがハドリー嬢が会えばわかるだろう」
あとは女医のディーナ先生。それから税務官だったティルソン。
「私としては心強い方達が来てくれたけど、子爵領は大丈夫でしょうか」
「すでに大丈夫…とは言い難い状況との報告がある」
報告…、わざわざ調べたのかしら?良くない報告だと、ますます私の結婚が遠のきそう。
今の私には負うべき責任などなく、あったとしても放り出して逃げられるが、父は逃げられない。はず。なのに?
駄目な父親だとわかっていたが、さすがに心配になるひどさだ。
屋敷の要、エヴァンスに逃げられるなんて。
エヴァンスは高齢ではあるが、一人で子爵邸の全てを管理していたと言っても良い人だ。家政婦長はエヴァンスの奥様で三人のお子さん達も子爵家で働き、それぞれの伴侶もまた仕事を受け持っていた。
家族仲が良かったので単身での移住は考えにくい。
ディーナ先生はベテランのお医者さんだし、ティルソン税務官は私が領の管理している間、何かと世話を焼いてくれた清く正しい税務官だ。最初の頃は帳簿の見かたもわからなかったが、ティルソン税務官のおかげで不正を見抜けるところまで成長した。
それにして広いお城ね。会議室まで遠いわぁ。
てこてこ歩いている途中で気がついた。
辺境伯様…、私の歩調に合わせてゆっくり歩いて…いる?
廊下に侍従の一人と護衛騎士二人が立っていて、重そうな扉を開けてくれた。
「お嬢、元気そうだね」
真っ先に駆け寄ってひょいと抱き上げてくれたのはディーナ先生だ。
「先生もお元気そうですね。長旅は大変ではなかったですか?」
「ははは、あたしはこの通り、頑丈な造りをしているからね」
そうなの。年齢性別不詳であるディーナ先生は体格がとても立派で、拳で岩を砕くという噂もあるのだ。お顔も男性っぽいけど、心は女性とのこと。
床に降ろしてもらってからエヴァンスとティルソン税務官にもご挨拶をする。
「よく来てくださいました。とても嬉しいです。あまりにも嬉しくて、聞いた時は子供のように泣いてしまいました」
「ハドリーお嬢様、ご無沙汰しております。また何かお嬢様のお手伝いができることがあればとはせ参じました」
「私はエヴァンスに誘われましてね。面白くもない子爵領でくすぶり続けるくらいならばお嬢様のお側で余生を過ごしたいなとやって来ましたよ」
すっかり舞い上がっていたが、辺境伯様に『座ったらどうか?』と促されて気がついた。
「申し訳ございません。ご紹介もせずに…」
「かまわない。話すのならばあちらのソファ席のほうが良いだろう」
会議室なのだが、観葉植物の仕切りの奥にゆったり座れるソファ席もあった。促されて座ると、隣に辺境伯様が座った。
「今日、この場を設けた理由はハドリー嬢との面会だけでなく、移住についてだ」
五人、十人の移住ならば問題ないが、百人単位では受け入れる側もそれなりに準備が必要だ。
「予定では三百人前後が来る予定です。そこでご相談なのですが、首都の近くに小さな村を作る許可をいただければ後は我々で何とかしようかと」
「エヴァンスはもともと宿屋でも経営するって言ってたんだけどね。誘ってない奴らまで移住したいって言いだして、既に百人近くが到着しているんだ。先に居場所を作ってやんなきゃ、あぶれる者も出ちまう」
それは、なんというか…、ちょうど良い案件が。
辺境伯様を見ると頷いた。
「実は住んでもらいたい場所がある。現時点ではほとんど整備されていないが、人手があればなんとかしたいと思っていた場所だ」
温泉地に宿屋や休憩所を作り、観光客や湯治客を呼ぶ。宿屋、食事処、お土産店…などなど、働き手はいくらでも必要となる。
「なるほど。温泉街の管理を私が、財務面をティルソンが見れば良いのですね」
「そうなの。それに温泉地は保養施設でもあるでしょう?お医者様にも居てほしいし」
「いいね、あたしも温泉には興味があるよ。実際、腰痛や膝痛が楽になったと聞いた事もあるしね」
やっぱり、効くのね。私の肩コリにも効くと嬉しいわ。
「移住民の中には『虎猫邸』の女将や『焼き肉天国』の親父もいるからすぐに温泉地の名物料理を考えてくれるさ」
「まぁ、ではまた虎猫邸のチーズケーキを食べられるの?焼肉天国のシチューも美味しいのよねぇ」
焼肉メインのはずだが、何故か一番人気は煮込み料理なのだ。
「今後の町造りに関しては役所と連携をとりつつ進めたい。それまでの住まいや仕事は辺境伯領のほうで用意するので、移住民から犯罪者が出ないことだけ気をつけてくれ。ハドリー嬢の知り合いでも、犯罪者は町に置いておけない」
「もちろんよぉ。そんな子がいたら、辺境伯領の衛兵に突き出す前にあたしがボコボコのボコにしてたたき出すわ♪」
ディーナ先生が言うと冗談に聞こえないのよね。
今後の方針をおおまかに確認して、近況を聞く。私を心配して来てくれたことはわかるが、それにしても生活の全てが変わると言っても良い移住だ。
あまりにも思い切りが良すぎる。
「実はお嬢様が子爵領を継がなかった時の事は以前から考えておりました」
私の辺境伯領行きが決まってから慌てて決めたことではなく、四、五年前から計画していたことだという。
エヴァンスの耳には父に愛人と隠し子がいることは早い時点から伝わっていて、おそらく私が追い出されることも予想できた。
「お嬢様のご結婚相手もあらゆるパターンを想定しておりました。今回は辺境伯様との急なご婚約だったため、一旦、見送ってから追いかけることになりました」
もっとひどい相手だった場合は、夜逃げ同然で私を逃がすつもりでいた。
「レンクス子爵が私達には出立日を隠していたせいで不安な旅をさせることになってしまいました。申し訳ございません」
「謝らないで。結果的に今はとても元気に過ごしているのだから。辺境伯家の皆様のおかげよ」
それにしても…、本当に、もう、繰り返しになるが。父は基本、めんどうなことから逃げる癖がある。
おそらくティルソンや他の者達から文句を言われたくなくて、急いで私を追い出したのだろう。結果、領民の怒りが倍増するかも…とは思い至らない人なのだ。
怒ってはいてもなんとかしてくれる。事実、今まではなんとかしてきたが…。
子爵家に縛られていた私は追い出され、自由に動ける領民達が逃げ出した。辺境伯領は遠すぎるため、近場の他領に逃げている者もいるとのこと。
最終的に移住者が千人を超えるかもしれない。
「国の法律で領民の移住は認められている。例えば辺境伯領が子爵領の領民に金品を配って呼び寄せたならば罪に問われる可能性もあるが、領民達が『好きな場所で生活したい』と出てきたのならば止められない」
そうなの。国の法律では領の移動が許されている。出て行くのは自由、ただし受け入れ側の領地が『断る』こともあるので、その場合はまた別の領へと移動するしかない。
辺境伯領は寒さのあまり不人気領地なので、移住は大歓迎、とのこと。
「人数が揃えば温泉街を作れるな。執事がいるのならば富裕層向けの高級スパで利益率をあげられる」
「子爵邸で働いていた家政婦長、各種メイド、料理人、庭師も来ておりますので、子爵邸程度のおもてなしは可能ですね」
「温泉は自然の恵みですからね。建物などの初期投資は必要ですが、一度、作ってしまえばあとは改修、維持費のみ。うまく宣伝できれば五年で黒字にできるでしょう」
「宣伝か…。ならば完成した温泉地を新婚旅行の場にしよう。婚約の届け出、婚姻の届け出は先に出せるが、結婚式の準備はそれなりにかかる。新婚旅行に行くとすれば早くても一年半後か…、温泉地ならば冬が良いだろう」
ふむふむ…と頷いているが、ちょっと引っかかった。
「辺境伯様、念のため伺いたいのですが」
「なんだ?」
「あの、とっても自意識過剰な発言をしますね」
結婚相手は、私でしょうか?
わりと勇気をもって聞いた言葉に憮然と頷いた。
「他に誰がいる」
「誰がいる…かどうか、私にはわかりませんよ?つい最近まで、絶対に結婚などしないとおっしゃっていたではないですか」
「気にするな」
「気にしますよ、どういった心境の変化ですか?お飾りの妻とするのなら、家柄で選んだほうが良い気がします」
「飾りではないし、側室を迎える気もない」
「そう、ですか」
「結婚式までの予定に関しては後で説明をする。先に温泉街について、だ」
確かに。既に人が集まってきている。早急に、都市計画を立てて予算組をして大工を手配しなければ。
子爵領から押しかけてきた人達を受け入れるための町だが、辺境伯領の人達は意外と歓迎ムードだった。
いくつかの役場に行き意見をいろいろと聞いて回ってみたが、反対している人はほとんどいない。
「そりゃ、毎年、人気がない領地ベスト10に入っていますからね。新しく来た人達が温泉街を作るってことなら、この領地にはない流行りが生まれるかもしれない」
「ここは遊びに行くような場所もまったくないので」
町の中に多少の娯楽施設はあるが、一泊か二泊で行く観光地はない。新婚旅行は生まれ故郷の村への里帰りが多く、新婚旅行っぽさがまるでない。
「温泉施設だけでなく若い人達が遊べるような場所もあったほうが良さそうですね」
「それならお洒落なカフェもお願いしますよ。恋人とデートするような店も少ないので」
人口の多い町に行けばカフェも高級レストランもあるが何十年も同じスタイルの店が多く、新鮮味に欠ける。そして高い確率で知り合いと会ってしまう。
「なるほど。新婚旅行、家族旅行、デート…と、友達と遊ぶケースもありそうですね。湯治客とは分けて考えなくてはいけません」
訪れた役所の若い方々に話を聞き、メモをとっていく。
「もしかして、そのノート…、すべて聞き取り調査の内容ですか?」
「そうですよ。たくさんの方からお話を聞かなければ偏ってしまいますから。今は役場を中心に回っていますが、町の方達にも聞く予定です」
子爵領では常に人手不足で誰かに頼むよりも自分で聞いて回ったほうが早かった。第三者が入らないため良い意見も悪い意見も聞ける。
役場の人間は時々、自分達にとって都合の悪い事を隠そうとするから困る。
ただ役場を通さずに領民とだけで話を進めようとすると心証が悪くなり、後の公的事業の妨げになるかもしれない。面倒でもまず役場。役場で大体の流れを作ってから、一般領民と話を詰めていく。
今回は辺境伯領の役場の協力なしでは事業が成立しないため、興味がありそうな何人かを計画に引っ張り込みたい。
「あの~、それなら私も意見を言っても良いですか?」
私とそう年が変わらない女性に声をかけられ、もちろんだと頷く。
「私達女性はやはり大浴場はちょっと恥ずかしいというか…、個人風呂や貸し切りでないと抵抗があるというか」
「そうですね。私も大浴場はちょっと…、なんというか周囲を知り合いで固めたいです」
皆が自分を見ているのでは…とは思っていないが、そういったこと抜きで恥ずかしいのだ。
世のご令嬢達はメイドに入浴を手伝ってもらっていると知った時は衝撃だった。
「他国の話ですが、足湯というものがあるそうです」
椅子に座って膝から下だけを温める。
「それなら男性に見られても…、恋人とも一緒に入れますよね」
「そうですね。私も…、まぁ、膝から下なら見せても…」
「駄目だ」
ぬっと辺境伯様が現れた。私も驚いたけど、役場で働いている方達のほうが…、なんだかものすごい顔をしているわ。それはそうよね。
何しにきたのかしら?辺境伯様がいると無駄な威圧感で意見を聞きにくいのだけど。
「夜会のドレスは仕方ないにしても、男に肌を見せるなんて…、許可できない」
「膝から下ですよ?」
「ハドリー嬢が入る温泉は部屋風呂か貸し切りのみだ。そこは譲れない」
「私もみんなと温泉を楽しみたいです」
「それならば女性しか使えない日を作れば良い」
「そんな面倒な…」
みんなで気楽に楽しめばいいのに…と思っていたら。
辺境伯様が難しい顔で考え込んで。
「では女性のみの日には冷たい果実水とお菓子のサービスでどうだ?」
私だけでなく足湯の話を持ち出した女性の目もきらーんと光った。
「それは、とってもお得感がありますね」
「餌につられるようで悔しいですが、果実水とお菓子…と言われれば、嫌だとは言えません」
「酔った男性客が入り込めないようにいっそ女性しか泊まれない宿を作れば?」
「良い案かもしれません。辺境伯様も男性限定の宿があったほうが落ち着けますか?」
辺境伯様がものすごく嫌そうな顔をして、役場の皆様も微妙な顔で笑った。
集まった中で年上に見える方が、言いにくそうに…、しかし教えてくれる。
「辺境伯様の場合、性別関係なく…、その、大変好かれるので、作るのならば完全貸し切りのほうがよろしいかと」
うわぁ、大変だ。
「で、では辺境伯様には貸し切り宿をご用意いたしましょう」
「そうだな。ハドリー嬢も一緒に泊まることになる。自分好みの内装にしておけばよい」
私と一緒に泊まることは決定なのね。