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5月3日 リコーダーの思い出

今日も暑かったので一日中窓を開けっぱなしにしていた。この辺は子供が多いようで窓を開けているといつも小学生かもっと小さいくらいの子供の声が聞こえる。実家の近所の子たちはもう皆中学生以上だったのでこれくらいの歳の子の声を聞くのは少し新鮮だ。


 外を駆け回っているだろう声に交じって、リコーダーの音が聞こえた。ソプラノリコーダーの音だ。曲はエーデルワイス。たぶん小学3,4生くらいのあんまりリコーダーが得意じゃない子が練習していたのだろう。フレーズが終わるたびに途切れるたどたどしい、お世辞にも上手とは言えないエーデルワイスだった。


 私もリコーダーが苦手だった。音楽のテストは小学校に限らずいつの時代もみんなの前で発表させられた。下手な歌を披露させられた挙句、友達に「大丈夫、上手だったよ」とみえみえのフォローを頼んでもいないのにされるのも顔から火が出るほど恥ずかしかったが、リコーダーのテストはその比ではなかった。


 リコーダーのテストはペアなのだ。歌と違って音程をとるのは簡単だと理由なのか、毎回2人1組でちょっとハモる部分のある曲をやらされた。これが本当にツライ。このペアを組む子が私と同じく下手な子であれば一緒に恥をかくだけだから少しはマシだったのかもしれない。しかし私の友達は大変リコーダーが上手であった。


 仲間はずれが起きるようなクラスではなかったので小学校の時のテストは友達とペアを組む方式だった。故に自然と毎回同じこと組むことになるわけで毎回私はテストが憂鬱だった。その子に非は全くない。むしろ優しく私を気遣ってくれさえした。


 まずメロディーパートはいつも私にしてくれた。そっちの方が簡単だから。ハモリというのは大抵メロディーより難しく、しかも面白くない。加えて、私が曲の途中でズッコケてもうまく私に合わせて軌道修正までしてくれる出来た子であった。ただこれが憂鬱の原因なのだから困った。


 私は運指がすごく苦手だった。初めはこの音は1と3とか裏だけとか考えて吹けるのだが、曲が進むにつれてどんどん混乱してわからなくなってしまう。1回つかえたが最後、もう曲に何てとてもじゃないが戻れない。つっかえなくても、そもそもの指回しがズッコケていて何を吹いても間の抜けた曲に聞こえた。


 しかも私は本番に弱いタイプだった。いざテストになってみんなの顔を見た途端に頭が真っ白になってしまう。そんなだからいつも結局、ズッコケてばかりの私の演奏に友達が横でタイミングを合わせてくれているのに、必ず止まってしまってハモリだけが虚しく聞こえるという散々な演奏になるのがオチだった。


 毎回おわったあとに「ごめんね」と謝ると「全然大丈夫だよ」といって、また次も組んでくれたあの友達は本当にいい子だったと思う。しかしうまい友達の横で下手な演奏を晒すことやせっかく友達が合わせてくれているのにできない自分が情けないやら、本当に嫌だった。


 今日練習していた子はどうなのだろうか。1人でテストに備えて練習していたのだろうか。それとも休校で暇を持て余して吹いていたのだろうか。暇で吹いていたなら良い暇つぶしだと思う。いいね!もし練習ならめっちゃえらい。休校明けのテスト頑張ってね。と言いたい。2人1組のテストだったらなおさら頑張ってと言いたい。近所の小学生に幸多からんことを!

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