3話 はじめての共存
イノシシさんに完敗した僕はいろいろと考えていた。
これは非常に時間がかかりそう。考えなしに動くと逆に減ってしまう。
なにかヒントはないかと、鳥さんやネズミさんの記憶を思い返してみる。すると、ネズミさんが餌をため込んでいる記憶が出てきた。
そうか、僕の中になにかを運んでもらえば良いんだ! 僕は早速、ネズミさんから得た知識で土にほった巣穴へと擬態をした。
仰向けで転がっていた巣箱は、ウネウネと形を変えた。ウネウネが収まると、僕はこんもりとした土の山に穴が空いた姿にかわった。
あれ? 僕がイメージしていたのは、地面に潜って巣穴ができるイメージだったんだ。だけどなんか土の山になっちゃった……。
中を見てみると、読み取った記憶と同じように土に穴が空いている。どうやら地面に潜ることはできなくて、なんとか再現しようとしたみたいだ。土山を作って、その中に穴を開けたみたいだね。
接地面の感触を確かめてみる。どうやら、地面と一体化していないみたい。なので、強い力で押されたら土山ごと転がってしまうね。
擬態はできたから、次は巣穴の一番奥に芋虫を出しておいた。
さてさて! 何が来るか、楽しみだね。
何も変化なく夜を迎えた。相変わらず辺りは真っ暗で、ちょっと怖い。暗くなってからしばらくすると、ついにネズミさんが僕の中に入ってきた。
ネズミさんは芋虫を食べ終わると、穴の中を見回り始めた。このネズミさんがここを気に入ってくれれば、餌をためてくれるかもしれない!
おなかがいっぱいになったネズミさんは、僕のことを気に入ってくれたみたい。しばらくすると、巣穴の奥でスヤスヤと眠り始めた。僕はネズミさんが、餌をため込んでくれるのを期待して、じっと待ち続けた。
それからネズミさんとの生活が続いた。夜になると、どこかへでかけ、日が昇る前に戻ってくる。そして少しの食料を持ち帰ってくる。
自分の頭ぐらいあるドングリを一生懸命運んでいるネズミさんを眺めていた。そうしているうちに、それを取ってしまうのは、何だかかわいそうになった。だから僕は食べカスや、食べられない部分などを主に吸収した。そして汚いけど、ネズミさんのアレも取り込むことにした。
すると予想と違って、初めに食べられた芋虫さんの分は2日で回収できた。
これは良いぞ! 食べるより住んでもらったほうが良い! 僕は家なんだ! それが正しい姿なんだね!
――僕とネズミさんの平穏な生活はずっと続くと思われた。しかし、自然はそんなに甘いものじゃなかった。
何だ!? 巣の中になにか入ってきたよ! ネズミさん起きて! 僕はそう強く思ったけど、伝えるすべはなかった。巣の中に入り込んできたソイツは寝ているネズミさんへと迫る!
長くてうねうねした体を滑らせ、どんどん巣穴の奥に入ってくる。
ネズミさんが目を覚まし、侵入者に気がついた!
蛇だ!
蛇はネズミさんを見つけると、体をバネのように縮めた。そして、それを開放し、シャーっという鳴き声とともに素早く突進した。
ネズミさんは、素早い蛇の動きを避けられなかった。そして体に牙が突き立てられ、ピクリとも動かなくなった。
それは一瞬の出来事だった。みるみるうちに蛇に飲み込まれていくネズミさん……。
僕は蛇の記憶を読み取った後に壁から触手を伸ばし、蛇を吸収した。
始めからこうしておけばよかった……。ネズミさんと暮らし始めてから、僕は何処かで、生き物は食べないと決めていた。けれども、そうじゃなかったんだ。家として住んでくれる生き物は守るべきなんだ。だから敵は僕が食べるべきだった。
僕はしばらくボーッとしていたが、大きくならなくちゃダメだ! と思い直し、行動を再開した。
まずは持ち主がいなくなってしまったドングリを吸収した。そして蛇から読み取った記憶を確かめていった。
まずは蛇に変身できるようになった。そして家なんだけど、蛇に家というものはなかった。いろいろな場所で適当に眠るので、擬態ができるものはなかった。僕が食べた蛇もこの後、ここで眠るつもりのようでした。生み出せる餌は、鳥の卵だった。
能力を確認した後に、僕はこの先のことを考える。
僕は蛇を食べたときに増えたミップを思い出す。ネズミさんが出したゴミを吸収するよりかなり多い量だ。やはり住んでもらうより食べると成長が早いんだよね……。
僕は悩んでいる。どうするのが良いんだろ……。
とりあえず僕は蛇が嫌いになったので、蛇は食べることにした。鳥の巣箱に擬態をして餌として卵を生み出した。
地面に転がっている卵入り鳥の巣箱は蛇に大人気だった。それから僕は入ってきた蛇を全部食べ、どんどん成長していった。
ミップも増え、鳥の巣箱もかなり大きくできるようになった。けれども大きな巣箱はとても不自然だった。だから大きくてもおかしくない土の巣穴へと変身した。
圧縮せずに擬態をしたら、結構大きい土の山になった。やはり穴もネズミさんが住むには大きすぎる穴になった。僕はこれをなんとか使えないか、と一生懸命に考えた……。
そうだ! 僕が蛇になって蛇を食べる大きな動物をこの大きくなった巣に誘い込めば良いんだ!
さすが僕! 頭がいいね! 大きな生物を捕まえられれば大きくなるのも、きっと早いね!
僕は蛇に擬態をして外から見える位置でじっと待った。