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ボクは、ギルドハウス ★

挿絵(By みてみん)

 この物語は3つの国家が覇権を争うマデフィコンフュ地方のお話……。


挿絵(By みてみん)


 ◆

 

 僕の名前はハウ。ただいま昼過ぎのゆったりとした時間を過ごしています。


 ここは、魔物、獣人、人間が共存するオルアニオン共和国。その西部にある旅の中継地点として作られた町、リアピンス。


 今、僕は、リアピンスの元ゴミ置き場に()()()()()。そう立っているではなく、()()()()()のです。


 いや建っているというのも正確な表現じゃないんだけどね。


 なぜかと言うと、僕の種族が家に擬態をする魔物の[人食い屋敷]だからなのです。だから建物の姿形だけど生き物なので、建っているは正確な表現ではないのです。


 人食い屋敷っていうのは、人を体内に誘い込み、それを食べて成長する魔物()()()んだよね。


 え? なんで自分のことなのに、()()()だって? それは、僕が人を食べないで共存しているからなんだ。どうやら僕は変わり者らしく、初めての友好的な人食い屋敷なんだよね。


 そんな僕は、この町で仕事をしている。


 それは、ギルドハウス!


 今は、2階建てで、エントランス、食堂、トイレ、浴室、そして個室が10部屋ある建物です。


 そう、僕はギルドハウスとして、ギルドメンバーを住まわせたり。依頼に必要な人材を決めて送り出す仕事をしています。


 おっと! ちょうどギルドに依頼が舞い込んできたみたい!


「お~い! ハウちゃん依頼が来たよ!」


 扉をバーンと豪快に開けて、エントランスに走り込んできたのは、オレンジ髪の女性だ。彼女は手にギルド管理事務所からの依頼が書かれた木札を握りしめている。


 僕は、人食い屋敷の能力のうちの1つを使う。それは、体内に生物に擬態をしたアバターを出すことだ。


 エントランスの床がググと持ち上がり彼女とそっくりに擬態をした姿になる。アバターを出すと視点がアバターへと移った。


 僕はギルドメンバーの姿を借りないと話ができない。だから、その人がひと目で僕だと分かるように、呼びかけた人の姿を借りることにしているのです。他の人で出ると本物か僕かわからなくなってしまうからね。


 成長すれば想像した姿に擬態をしたりできるのかな~?


「どんな依頼?」

「ええと、東のウィドニードから来た荷物を西のセポーティーまで運ぶ仕事だよ!」


 僕は木札を受け取り内容を確認する。


-=<依頼書>=-


 依頼内容:ウィドニードから到着する荷物をセポーティーまで輸送する。


 報酬:5,000ラド


 ギルドポイント:+4から-4


 達成証明:セポーティーで受取証をもらい、ギルド管理事務所へ提出してください。


 内容詳細:大木箱4箱、1箱2,500ラド相当、損傷保険付き。


-=<====>=-

 

 内容と報酬を見てみると結構良さそうだ。報酬は低めだけど、損傷保険がついているのが大きい。損傷保険は、荷物が盗賊に奪われたり、魔獣に破壊された場合に弁償額を肩代わりしてくれる制度です。


 今回を例に取る。


 木箱を全部ダメにしたら、10,000ラドの罰金で、報酬は5,000なので5,000ラドの赤字。


 木箱を2箱ダメにしたら、5,000ラドの罰金で、報酬も5,000で収支ゼロ。(経費赤字)


 木箱を1箱だけダメにしたら、2,500ラドの罰金で、報酬は5,00で2,500の黒字。


 このように保険があれば1つダメにしても黒字です。


 保険があるから1つ闇市場で売り払って3個届ければもっと稼げる。などと考える人もいるかもしれませんが、ここで重要なのがギルドポイントです。


 ギルドポイントはそのギルドの信用度と言っても良い。この依頼だと、成功すれば4点もらえますが、少しでも失敗すると0点で、程度によって最大で4点が減ります。


 つまり目先の金につられてわざと失敗すると、ギルドの信用が落ちて結局は損をする制度になっています。しかも、横流しが発覚した場合は、連帯責任としてギルドポイントが0からやり直しです。新規参加の10ポイントのギルドより信用を失い結局は、スラムの住人に仲間入りです。


「この依頼受けましょう」

「了解ですぅ~」

「では、編成が決まったら連絡するよ」

「わかったよ~。じゃまた後でね~」


 オレンジ髪の元気な女性はそう言うと2階の自室へともどっていった。

 

 それを見送ると僕はアバターを床に戻し、自分の部屋で編成を決めることにした。


 僕の自室は、入り口がどこにもなく誰も入れない部屋です。そこに視点を移し、まずはギルドの現在の情報を部屋の壁にギルドボードと名付けた表を浮き上がらせる。


-=<ギルドボード>=-


 依頼内容:大木箱4をセポーティーまで輸送


 待機中ギルドメンバー:ソコネ、コトカ、アシル、ゲオルグ、ファシェ


 遠征中ギルドメンバー:ググン、グム、ボナ


 休養中ギルドメンバー:ジア


-=<====>=-



 採取と違い輸送で失敗すると損失が大きいから少し過剰戦力だけど、今いる全員で行ってもらおう。


 次はメンバーを加えたり外したりすると自動で計算してくれる編成ボードを壁に浮かび上がらせる。



-=<編成ボード>=-


 依頼内容:大木箱4をセポーティーまで輸送


 報酬:5,000ラド


 予想必要戦闘値:300


 予想期間:往復で6日後


-=<編成詳細>=-


 参加メンバー:ソコネ、コトカ、アシル、ゲオルグ、ファシェ


 使用アイテム:荷車


 戦闘値:400


 発動アビリティ:移動速度アップ、奇襲無効、軽傷無効


 最終予想期間:往復で4日後


 報酬:5,000ラド


 参加メンバー配当:800ラド×5人 4000ラド


 予想経費:100ラド×4日 400ラド


 予想ギルド収入:600ラド


=<====>=-


挿絵(By みてみん)


 ふむ、経費を差し引いたらギルドの収入とギルドメンバーの給料はこれぐらいかな。


 このギルドは、僕がギルドハウスだから修繕費や増築費を貯金する必要がない。だから、メンバーへの給料割合がかなり多い。


 ギルドの収入は、主にギルド税に使うぐらいで膨大な金額はいらない。


 僕は、頭の中で決めたことを今回参加するギルドメンバーに、人食い屋敷の能力を使い知らせる。


 それは、体の内部つまり家の中を自由に変更する能力だ。各メンバーの個室にある掲示板に先ほど決めた内容を浮き上がらせた。


 まるで誰かが彫刻をしたように木の板に文字が浮かび上がる。そして任務が来たと知らせるため掲示板の横にあるベルをチリンと鳴らす。


 内容を確認したギルドメンバーは、翌朝に旅立つ準備をするため、次々に町の中心へと買い出しに行く。


「それじゃハウちゃん、準備に行ってくるね~」


 彼女は僕にあいさつをするとオレンジ色の髪をなびかせ、彼女もまた町の中心へ買い出しにでかけていった。


 依頼を割り当てる仕事は終わったので、次の仕事にとりかかる。


 それは、お掃除です!


 みんなの個室や共用スペースなどにあるゴミを回収することです。部屋を舞うホコリ、各部屋のゴミ箱、生ゴミ置き場などギルドハウス内のゴミをすべて吸収(・・)します。


 ゴミを僕の体内に吸収しまた少し大きく成長した。


 ふう、ごちそうさま。これも僕の能力であらゆる物質を吸収することで、成長できる。だからお仕事だけど同時に報酬でもあるんだよね。


 これが共存している秘密! どちらもお得なんだよね。住人を食べちゃう他の人食い屋敷は、すっごく損しているね。


 さて、これから何をしようかなと思っていたら、玄関の扉がまたバーンと開き、ギルドメンバーが帰ってきた。


「もどった! ハウ、報告書みて」


 僕を呼んだのは背が低くて緑の皮膚をしたゴブリンさんだ。彼はググンさんです片耳の先が切れている特徴(とくちょう)があります。彼もこのギルドのメンバーで、ちょうど仕事から帰ってきたみたい。その後にもふたりのゴブリンが遅れて家の中に入ってきた。


「ググンさん、なぜ急に走る?」

「はぁはぁ、ググンさん、走るの早い」


 ググンさんはなんだか慌てていたみたいだね。


 僕は先程と同じように、呼びかけたググンさんの姿を借りてエントランスで出迎えた。


「おかえりなさい」

「ただいま。これ報告書と報酬」


 ゴブリンさんは僕に出迎えると報告書の木札とお金が入った布袋を僕に渡してきた。


 依頼を受けた額より財布が重いのを気にしながら報告書を読む。


-=<報告書>=-


 依頼内容:北の森で薬草採取(さいしゅ)


 報酬:150ラド


 ギルドポイント:+1


 参加メンバー:ググン、グム、ボナ


 内容の詳細:結果S 品質、納品までの時間がとても優秀でした。ボーナス報酬として、50ラド、ギルドポイント+1追加します。


-=<====>=-


 さすが森で暮らしていたゴブリンさんたちだね~。森での採取(さいしゅ)なんて朝飯前って感じ!


「おお! ググンさんすごいです! 結果Sですよ!」

「ナチュラルゴブリン、森が得意、これぐらい楽勝!」


 僕は、ボーナスをゴブリンさん3人の給料にうわのせして計算する。始めの取り分である50ラドとボーナスで60ラド。端数の20ラドをギルド収入として、僕の部屋に送る。


「やった! お給料! ありがとう!」

「ありがとう! オレ、新しい筆、買う」

「ありがとう! ワタシも買い物行く!」


「いえいえ~。こちらこそ、お仕事してくれて、ありがとうございました。次の仕事までゆっくりしてくださいね~」

「わかった。ハウまたね~」


 そう言うとググンさんは2階の自室へと上っていった。


「ジアー! 今帰った!」


 そうそう彼にはジアという奥さんゴブリンがいるのです。彼女もギルドメンバーですが現在は、訳あってお休み中です。


 すごく奥さんに会いたかったみたいだね。一階のエントランスまで声が聞こえてきたよ。


 ふたりのゴブリンも、走り出した理由に納得したようで、お給料を持って町の中心部に買い物にでかけた。


 そういえばこの生活も、ググンさんと出会ったことから始まったんだよね……。


 僕が生まれたときは、小さな鳥の巣箱だったんだよね。


 僕は、生まれたときから、彼らと出会い、ともに暮らし始めるまでの懐かしい過去を思い出し始めた。



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