表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

2話:依頼主とはいかなる人物か??

依頼を受けた場合、僕たちは喫茶店で依頼主に会うことになっている。


いつも指定する喫茶店は野菜喫茶という名前だった。


そこの野菜コーヒーが僕のお気に入りだ。


依頼主は五十代くらいの女性だった。


長い髪にはつやがあり、とてもきれいだったけれど、つりあがった目はややきつく、我の強い印象があった。


僕は緊張した。


「はじめまして。買わせない屋の恩田です」

僕が言うと、女性はドキリとした様子であたりを見まわした。


これは彼女に限ったことではなくて、

「買わせない屋」の名前を出されると、依頼主はヒヤヒヤしてしまうものらしい。


「佐藤洋子です」


と彼女は名乗り、つづけて言った。


「娘がお金を使いすぎて困ってるんです」


「娘さんの名前と年齢を教えてください」


「佐藤小百合、26歳です」


彼女のいない23歳の僕はヘンテコなスイッチがパチリと入った。


「本当に買わせない屋って、人にものを買わせないようにしてくれるんですか」


「100%の保証はできません。万が一、お金を使わせてしまった場合はそれ相応の対応をさせていただきます」


「……わかりました」


僕は野菜コーヒーを口に含んだ。


「娘さんがお金を使いすぎている原因は何だと思いますか」

「たぶん、彼氏に貢いでるんだと思います」


うらやましい、と強く思った。


「それに……」


「それに?」


「夫がリストラされたんです。だから、小百合にお金を渡せなくなってきて」


「娘さんの職業は?」


「いちおうフリーターです」


「わかりました。まずは娘さんに会わせてください。ところで、いつからいつまで買わせないようにすればいいですか」


これが重要なポイントだ。


「1日だけでけっこうです。


それで本当に買わなければ、もう少し期間を長くしようと。そういうことってできますよね」


「もちろんです」


娘さんと会う日にちは明日の夕方と決まった。


会うと言っても、ターゲットと直接関わりあうわけではない。


ファーストコンタクトの場合は、遠くから観察するにとどめておかなければならない。


かくして、僕は娘の小百合さんを見ることとなった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ