表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

1話:買わせない屋とは??

「募金もあるぞと言っただろう」


野村主任は太い眉をひそめて言った。


太い眉をひそめると、柴犬みたいになるけれど、もちろん口にはしない。


いま僕は怒られている。


もう少しで、うまく初仕事を終えられるところだったのに。


入社して半年。ずっと野村主任にくっついていた。それからやっと解放されて、一人で仕事を任せてもらえるようになったのに。


「でも募金は何かを買ったわけじゃないから……」


「お金を使わせたらダメなんだよ」


そう言って、野村主任は長いため息をつく。口臭の問題があるから、僕は二歩さがる。


おかしな話だ。


僕は買わせない屋に勤めている。


文字どおり、人にものを買わせないようにするのだ。


もちろんやみくもにするわけじゃない。ちゃんと依頼主がいて、それ相応のお金をいただいて、指定された人物がお金を使わないように妨害する。


人はとにかくお金を使う。いらないものを何度も買う。


だから、買わせない屋が存在する。


「恩田くんも村上みたいにはなりたくないだろう」


小さなオフィスに野村主任のいやらしい笑い声が響く。


僕は先輩の村上さんのことを思った。


村上さんは業績が悪かったために、とんでもない依頼の担当にされてしまった。


それは自給自足をしている人間がものを買わないよう、一年間妨害しつづけるというもの。


なんでも、疑り深い依頼主が

「あいつは本当に自給自足しているのか」と思いはじめたのがきっかけの依頼らしい。


だから、村上さんはいま新潟県の山奥に住む老人を尾行している。


あと四ヶ月も残っている。


結局、村上さんも山奥なので、自給自足をせざるを得ないらしい。


それだけは絶対にイヤだ。


そこへ電話が鳴る。野村主任が受話器を取る。


しばらくしたのち、野村主任は不適な笑みを浮かべて、僕に言った。


「恩田くん、依頼だ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ