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龍と達夫と極彩色の異世界  作者: 大平奏
4/5

彼との朝

 その朝はすがすがしいものでした。なんてったってそんなふうにぐっすり寝るのは久しぶりだったからです。


「はふぅー。とてもよくねれた。」


そんなふうに朝のポワポワ状態のわたしでしたが。ここで事件は起こります。なんとなく隣に、何を見るでもなく隣にめを向けたとき、私は


 "耳"


をみたのです。…と、もちろんそれが普通の人間のものらしいただの耳ならばこんな風に書いたりはしません。そこにあったのは…なんといいますか、例えるとすれば…ああ、あれ、スヌーピーです。スヌーピーのような犬みたいなあのだらーんとした耳です。でもあれより大きくて、もはや耳から足がのびてるとも捉えられるのかもしれません。その奇妙さにわたしがぎゃあと叫ぼうとしたその時、その耳はもぞもぞと動き出しました。それによりわたしは


「ぎゃぎゃぎゃんぎゃあ」


と、さけんでしまったのでした。すると、また耳は動き出して、今度は喋り始めたのでした。


「どうしたんだいどうしたんだい。こんな朝から。なにがどうしたというのだね」


その声を聞いてわたしはやっと昨日あったことを思い出せたのでした。なんだ、昨日のあのこはこんなだったのか。んー。耳はあれだがけっこうハンサムだぞ!


「なんだ、きみだったのか。昨日の。…きみはそんなだったのかい?」

「ぼくだよぼくだよ。昨日の僕だよ。どこへも行かないと約束しただろう」


 彼はまずは顔でも洗おうかと、小川までわたしと行きました。彼は起きたら服着ました。なるほど、寝るときは全裸というやつですね。ここにきて服を着てるのはわたしだけでしたから新鮮でした。顔を洗い、その辺の枝で歯をシィーシィーしながら、私たちはまた喋り始めました。


「なにも紹介がなかったものね。ぼくはエルフ。エルフなんだ」

「なるほどきみはエルフ。…あのファンタジーなんかにでてくるやつかい?でも僕の知ってるエルフというやつはそんな耳をしてなかった気がするぞ」

「我々の世界でのエルフはどんな場所でもお昼寝できるように耳がこう進化したんだよ。」

「なんだか…その、頭の悪い進化だね」

「ははは、そういわれればそうかもね。でもね、町へいくとみんなこうだぜ」

「なんだいなんだい、そのいいかたじゃエルフが自治をしているとでもいうのかね?」

「まぁ、すくなくとも、僕たちの町ではね。もしかして僕がエルフでやっぱりだったのでざんねんかい?」

「…。それよりさ、ここにいるいわゆる"にんげん"はどうなってんのさ?」

「きみが見てきた通りだと思うよ。女はあんなふうにふらふらしててまだ大丈夫だけど男がひどいのさ」

「ひどい?」

「そうさ。なんでかしらないけどやつら、交尾のときに血をみることで興奮を覚えるらしく、それがひどくなって血を見ることを生きがいにするようになってしまったのさ」

「…」

「だから僕たちはやつらを駆除するがためケチャップの開発をすすめてるのさ」

「きみは…さ」

「ん、」

「怖くなかったかい、怖くないかい。そんな人間だぜ。僕も。昨日の夜から一緒にいるがおれもそんな人間とかわんねえぜ?」

「大丈夫だよ。きみは異世界から来たのだから。ここのにんげんとはちがうだろ?」

「え?」

「第一、ぼくはきみがまず、「最初にききてぇ!ここはどこなんでぇ!?」みたいなことをいうもんだと思ってて待ってたんだけどそれがないじゃない?だからいわなかったんだがね」

「…うすうす気付いていたがやはりぼくはもとの世界があってこの世界に来たんだね。うん、そうだ。おれには故郷がある…。」

「…ん?どうしたんだい?」


 わたしにはもといた故郷がちゃんとあったはずです。ここをバーチャルか夢か何かの不完全世界だとすると(おそらくそうであり、また、そうであれと願っております)わたしには帰るべき現実があるはずなのです。しかし…


 おもいだせない??


「どうしたんだい、おしのようにだまって」

「いや、なんでもないよ…なんでも」


ここで相談したらなぜかは知らないけど元へは戻れないような…そんな気がしたのでしませんでした。

 それにしても、このせかい、妙です。彼と出会うまでわたしには悪夢の世界でした(思い出せもしなくなってしまった現実世界のことを考えるとなぜかすこしたのしいものでもありましたが)それが彼と出会い、今はなぞの安心感を得てしまってこの世界は謎の現実味をわたしに与えるのでした。

 わたしは彼についてなにも知りませんでしたし、わからないことだらけ。彼の言葉にもいまいちわからないところがあるので彼にいくつかの質問をしました。


「きみはわたしを異世界から来たといったね。でもなぜそんなの、わかったのかね。」

「僕らの町にきみの"前例"がいるからさ。君は血を求めなかったしね」

「では昨日、きみは僕に不安があると当ててみせただろう?あれはなぜだい?」

「あぁあれには種がある。後で教えるよ」

「種って…。あとさあとさ」

「ちょっとまってね…。時間だ。あぁやっぱり時間だ。…んー、ひとまずね。きみは僕らの町に来てもらおう。それできみ、なにかに所属したいんだっよね?それじゃいい人を紹介してやるよUBBってんだけどね。…って細かい話は後で。遅刻しちゃうよ、ついてきてね」

「あぁ、所属のことまで?それはなんのトリックだい。ちょっとまてよぉ」


彼は小走りで走りだし、わたしはそれについて行くのでした。

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