表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/14

綾瀬 -参-

 あまりに生々しい感触。


 自分の周りが赤く染まっていく。


 目の前では少女がこちらを怯えた目で見ている。

 

 ――どこか覚えのある顔だ。


 頭の隅で何かが引っかかっている。


 気のせいだろう。


 そう思う事にした。そうでなければ折角の空腹を満たすチャンスがなくなってしまう。


 目の前の少女の腕をつかむと、それはいとも簡単に砕けて、自分の視界を赤くする。

手についた赤いものをなめ取ると、それは甘美な潤いをもたらして、体が喜びに打ち震える。


 腕を砕かれた少女が絶叫をあげる。


 しかし、無声映画のようにその声は届いてこない。

逃げようとする少女の腕を、今度は砕かないようにし力を加減してつかむ。


 何事か少女は叫んで逃げようとするが、それもままならない。


 思わず力を入れてしまうと、また砕けてしまう。


 無残にも砕かれてしまった両の手を改めて確認した少女は涙と鼻水、唾液をだらしなく飛び散らせて叫ぶ。


 尻餅をついてなお逃げようと思っても、腰が抜けてしまって後ずさりする事しかできない。


 部屋が赤い。赤く染まっていく。


 腹部めがけて爪を伸ばすと、それが刺さってグチュリと音がする。


 その次に赤いものがそこから噴出して自分の体すら赤く染め上げていく。


 なんともいえない高揚が襲ってくるのがわかる。


 ――心地良い。


 そう、言葉では言い表せない快感と歓喜に震える。


「たす…ケ……イ…ス………」


 ほとんど呟くような、力の無い声。

それを最後に少女は動かなくなった。


「……………」


 動かなくなった少女を見下ろす。何かが引っかかっている。


 気のせいだ。自分はこの少女の事など知らぬ。


 これは餌でしかない。――そうだ。これは餌だ。


 そして、その少女へと手を伸ばした。

続きは土曜日の予定です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ